※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

545 / 697
390話 復活の英雄

「ヨロイムシャの……弟子?それってどういう事ですか?」

 

 話を聞いていた緑谷が、マインハートが接敵し切島達が共に戦ったという、首斬りヒーロー狩りの辻斬りヴィランが『ヨロイムシャの弟子』と聞いて首を傾げた。

 

「まさか……ヨロイムシャに弟子が居たとか?」

 

 ここまでの話、そのヴィランは『ヨロイムシャが認めた者に渡す刀』を持っていた事から、ジュウモンジはそれを持つ『ヨロイムシャ四剣士』を疑った。

 

 しかし、最初の犠牲者であり目撃者のコウシロウはまず違う。2日目に斬られたヨイチも違い、マインハートは戦い、その間ジェリーはジュウモンジと緑谷達のチームでパトロールしていた。

 

 緑谷がここで思いつく事は一つ。

 

『サイドキック』とは別に『弟子』が居た。という事、そうなのかと緑谷の質問に、ジュウモンジは顎に手を当て考え、話し出す。

 

「……広義的に見れば、サイドキックって言うのはそのヒーローの弟子、という事になる。ヨロイムシャのジジイも、事務所にわざわざ道場構えて雇ったサイドキックの俺や四剣士、新入りにも自身の剣技から体術、何まで教えていたよ……言うなれば、俺含めたあの時事務所に居た全員がヨロイムシャの弟子、同門だ」

 

 ジュウモンジが語る、言ってしまえば自分含めた、ヨロイムシャが抱えたサイドキック全員が『ヨロイムシャの弟子』とも呼べると。

 

 ヨロイムシャは『教えたがり』だったと、確かジュウモンジから聞いたなと緑谷は思い出した。そして、自身の剣術や体術をサイドキックに教えていたし、そこから見込みありの者に刀を渡して『ヨロイムシャ四剣士』としていた事も。

 

「じゃあ……四剣士以外のサイドキックが?」

 

 となれば、四剣士以外のヨロイムシャサイドキックがこの辻斬りを?と考えるのは分かる。

 

「「「それは無いな(無いわね)」」」

 

 しかし、その考察はジュウモンジ及び、ジェリー・グルー、マインハートに否定された。

 

「コウシロウにヨイチ含めた、四人より強いのが居たのはあり得ねぇよ、そしたらジジイが即、剣渡してらぁ……」

「渡された以上、事務所道場内の稽古で負ける事は、五人ともありませんでした……私も、滑野さんも、弓弦さんも艶髪さんも……何より月形さんも」

「四剣士同士勝った負けたはあったけど、他のサイドキックには負けなかったよ、その強さに自負も覚悟も持ってる……四剣士が勝てないとなるのは、それこそヨロイムシャか、ジュウモンジさんくらいさ」

 

 口々に、ヨロイムシャ事務所の道場では、刀を渡された自分たちは他のサイドキックに負けなかったと、ジェリーにマインハートと語る……が、ここで緑谷はあれ?と疑問が上がった。

 

「ジュウモンジさんって、四剣士より強いんですか?」

 

 ジェリー・グルーこと滑野久次、マインハートこと橇引心の二人の話から推察すれば『ヨロイムシャ四剣士よりジュウモンジの方が強い』という事になるが、そうだったのかと今更疑問が上がった。

 

「そうですよ、かつての筆頭サイドキックがジュウモンジさんですから」

「刀は突っぱねたんだけどねぇ……事務所も退所したし」

「よせよ、ジジイからも剣術才能ねぇって言われて体術くらいしか褒められてねぇんだ」

「「俺ら(私ら)よりあったでしょ」」

 

……まだジュウモンジが、ヨロイムシャ事務所に居た頃は、こんな風に和気藹々としていたのだろうかと、少し和やかな雰囲気も束の間、ジュウモンジが話に戻る。

 

「しかしいよいよ……その辻斬りの正体が分からなくなって来やがったな、本当にただの鴉天狗衆の別動部隊か?」

「けど、あの鞘の模様は確かに私たちの鞘と同じ柄だった……」

 

 同じ柄の鞘を持った辻斬りヴィラン、四剣士でなければ誰がとなるジュウモンジとジェリーに、マインハートがならばと言い放つ。

 

「ヨロイムシャに、直接尋ねられないかな?」

 

 だったら当の本人に尋ねれば早い、そう語るマインハートに、ジェリーも頷いたが……ジュウモンジは顔を顰めて答えた。

 

「無理だ、そう言やお前ら知らなかったな……ジジイは認知症が来て、俺らが分からねぇ……かろうじて身を寄せて世話してたヨイチしか、わからねぇんだよ」

「そんな……」

 

 その話を聞きたいヨロイムシャ自体が、ボケが来て話もできないんだと語るジュウモンジに、ジェリーが絶句した。

 

「……会いに行ってみるか?何なら今、屋敷襲撃されたから、この基地の医務室にVIP待遇で運び込まれてんぞ」

 

 そして、そのヨロイムシャ本人は邸宅襲撃もあり、この桂駐屯地に運ばれたらしい。確かに館に入り込まれて刃傷沙汰、しかもかつてのプロヒーローで、現場に居た参考人ともなればある意味破格の扱いだなと、緑谷もそれは知らなかったと驚いた。

 

「……会えば、声をかけたら、思い出すかもしれない」

 

 先に無理だと言ったジュウモンジに、マインは諦め切れるかと立ち上がりジュウモンジに案内を頼むのであった。

 

 

 

 桂駐屯地内、医務室にヨロイムシャは運ばれていた。市内病院に運ばれたコウシロウやヨイチと違い、ここへ運ばれたのは……かつてのヒーローだからでは無い……いや、だからこそなのかもしれない。ヒーローが辞めていくきっかけを期せずして作ってしまった男が、市井の病院に入ったら……マスコミや心無い者達の槍玉に挙げられるかもしれない。

 

 邸宅で会った時と同じ、ただベッドに座して呆けて身体を起こしているヨロイムシャ……その姿にマインも、ジェリーも泣きそうになりながら……声をかけてみる。

 

「ヨロイムシャ先生、お久しぶりです……私です、橇引です」

「同じく滑野が参りました、先生……」

 

 二人が声をかけて、ゆっくり首が動き……ヨロイムシャの双眸が二人を捉える。だが……返された言葉は、何とも無残極まりない者であった。

 

「おまえさんら……誰じゃ……ヨイチは?まだ夕餉を食べておらんのじゃが……」

「そんな……嘘でしょ……」

「こんな事が……あっていいのか……」

 

 二人のことも忘れ去った、その事実にマインハートも、ジェリーグルーも信じられないと心砕けそうになった。

 

 だから言ったのだと顔に手を置き、項垂れるジュウモンジ。それに着いて来ていた緑谷は……溜め息を吐いた。これでは、自身の邸宅が襲撃にあった事自体も気付いていない、移動した事すらも理解していないのかもしれない。

 

 ふと、緑谷は誰かがお見舞いしたのか知らない、フルーツのカゴを見つけた。それから傍に果物ナイフまであったのを見つけ……不用心だなと、それを手に取り弄んだ。

 

 かつてのヨロイムシャも、これでは簡単に寝首をかかれようなと呆れ果てた緑谷は、ちょっとした悪戯心が芽生えた。

 

 だからーー次の瞬間起きた事態に、かつてのヨロイムシャサイドキックも、緑谷自身も驚愕した。

 

「もういいだろ二人とも、ジジイ、夜遅くにすまなーー」

 

 さっさと出て行こうと、二人に声をかけたジュウモンジ。瞬間ーー呆けていた、何をみるかも定まらぬヨロイムシャの曇った目が、一気に光を取り戻した。

 

 ヨロイムシャはおよそ、数ヶ月のブランクすら、そして老体とは思えぬ身のこなしでベッドから真横に飛び出しーー緑谷の喉輪に前腕を食い込ませながら、部屋のスライドドアを突き破り廊下へ共に飛び出した!

 

 埃が舞い散り、突き破られたドアの上に、緑谷はヨロイムシャから肘を首に押し込まれながら押さえ込まれていた。

 

「何してんだジジイ!?ついに狂ったか!!」

 

 唐突に襲いかかったヨロイムシャに、いよいよボケが行き着くとこまで来たかとジュウモンジが声を荒げたが……押さえつけられ息も苦しい緑谷は、笑みをこぼしてヨロイムシャを見上げて笑った。

 

「何だ……身体は……錆ついてないじゃないですか……」

「……お主、わざとか?」

「「「!!」」」

 

 先程までの呆けた言動が消え去り、3人の知る、かつてのヒーローが緑谷へ厳しく、容赦無く、そう問いかける。

 

「肘、退けてくれませんか……息できません」

 

 緑谷の頼みに、ヨロイムシャはむくりと起き上がり、肩を回したり腰を回したりとすれば、身体中から音を鳴らし、はぁと息を吐いた。

 

「あの様な殺気を叩きつけられてしまえば、嫌でも起きるわ、童が……何事かと思うたぞ」

「ジ……ジジイあんた……ボケは?」

 

 病室から出て来たジュウモンジに、声をかけられたヨロイムシャは、ぐるりと身体を向けて、くしゃりとシワクチャの笑顔でジュウモンジに声をかけた。

 

「相変わらずじゃな伐、元気しとったか」

 

 呆けの淵より、ヨロイムシャが……眠っていたかつてのヒーローが、今ここに叩き起こされたのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。