※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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392話 ワシはもう疲れたよ

「ワシと天眼は、元々同じ流派の門下生であり、そして……ヒーロー無き時代にヴィジランテとして、京都で活動していた」

 

 ヒーロー、ヨロイムシャこと『鎧装武市』そしてヴィラン、ホウガンこと『鞍馬天眼』は、まだプロヒーローが無い時代『自警団(ヴィジランテ)』として、京都を奔走していたという。黎明期の荒廃した日本で、二人はその剣と個性で京都を守っていたのだと。

 

「やがて、政府からプロヒーロー制度の話が噂に流れ始めた頃、ワシも天眼も師より免許皆伝と刀を賜った……ワシは当時のヴィジランテ組織にそのまま加わった……じゃが、天眼は仲間を募り違う組織を立ち上げ、京都を支配していった……政府がプロヒーロー制度を立ち上げるより先に、自身を中心とした縄張りを築こうとした」

 

 ホウガンこと、鞍馬天眼はプロヒーロー制度の噂を聞くや、政府が制度を統括するより前に、自警団組織を隠れ蓑とした利権を確立しようとしていた。だが、それにより京都の治安は更に悪化したのだとヨロイムシャは語る。

 

「当時のワシは日本政府にこの事を伝え、警察、自衛隊、そしてワシが所属していた自警団と共に、ホウガンの鴉天狗衆と対峙した……政府側の喧伝と警察の協力もあり、ワシは"正義のヒーロー"という看板を得て、正当性を掲げ天眼を追い詰めた……」

 

 利権を築こうとする『悪』のホウガンと『正義』を掲げ民衆を従えたヨロイムシャ、その戦いは熾烈を極めたが、皆が知る『清水の決闘』の果て、ホウガンは舞台から落ちて死んだ。

 

「ワシは確かに斬った、今でもその感触を思い出せる……ホウガンは死んだ、ワシがあの舞台で斬り殺した……しかし、あれは……ヨイチを斬ったのは確かにホウガンじゃった」

「ジジイ!?まさか……見てたのか!?ヨイチが斬られたのを!!テメェ!!」

「抑えてジュウモンジ!」

 

 ジュウモンジがその話を聞いて、怒りの琴線が切れるや着物の襟首を掴んだ。そのまま身体を吊り上げ椅子から立たせたが、即座にマインハートが引き剥がした。

 

「ヨイチを見殺しにしてテメェは突っ立ったままだったんか!!それでも元トップヒーローかよテメェはぁ!!あぁ!?」

「ジュウモンジ!ヨロイムシャはついさっきまで呆けていただろう!!今になって思いだしたのかもしれない!あとヨイチは死んで無い!!」

「んな都合のいい事あるかぁ!!」

 

 マインハートに羽交い締めされて持ち上げられジタバタ暴れ散らすジュウモンジに、ヨロイムシャは襟を正して答えた。

 

「そうじゃろうな、ワシとて先程、出久くんに叩き落とされて……しばらく見ていた事を思い出してきたんじゃ……言い訳もできん、ワシは……庭に倒れたヨイチを、佇むホウガンが空に去る姿を……見るしかできんかった……」

 

 今になって、呆けていた時間に見た事も思い出したのだと、ヨロイムシャは俯いた。言い訳にしかならんが、そうなのだとしか言えないのだと……。

 

「ヨロイムシャ先生……確認しますが……当時のホウガンも、黒い衣装に黒い羽で、鴉の意匠の仮面を付けられていましたか?」

 

 まだ暴れるジュウモンジを吊し上げたマインハートより、自身が戦った辻斬りヴィランと、当時戦った『ホウガン』が同じ姿かを、口頭ではあるが説明して確認を取る。そして、ヨロイムシャはゆっくり首を縦に振るのだった。

 

「それで、間違いない」

「あぁあ!橇曳ぃ!!離せ!!」

「きゃああ!!」

 

 だが、いよいよもってマインハートの膂力から抜け出したジュウモンジ。それを見るや老体に殴りかからない様、緑谷が立ち上がるやジュウモンジとヨロイムシャの間に立った。

 

「ジュウモンジさん!ここは落ち着いて!」

「そうだ!怒っても何もならないじゃねぇかよ!」

 

 流石に危ういと感じた、話を聞いていた切島と鉄哲に両腕をそれぞれ掴まれたジュウモンジ。しかし、マインハートの羽交い締めから抜けるだけに力を使っただけで、二人が掴んだ両手は力が全く入ってなかった。

 

 ジュウモンジは、叫び倒して怒りが鎮まったのか、はたまた臨界点を超えて逆に冷静になったのか……息を切らしてはぁはぁと浅い吐息を吐き、やがてヨロイムシャに言う。

 

「あんたが……ヒーロー辞めてから、この京都は大荒れだ……白い目と小言、罵倒に辞めたやつもいる……アンタはその始まりだった……それでも、もうアンタが必要無い様に、余生が過ごせるようにと頑張ったよ……」

「月形……お前……」

 

 ジェリーは、ジュウモンジの言葉に胸が締め付けられた。恐らく弾かれて、尻もちついたマインハートも。

 

 ジジイと罵倒し、サイドキックを事務所から引き抜いてまでジュウモンジは、京都の『ヨロイムシャ一強』を崩そうとした。それは対抗心もあった、だがそれよりも……彼はいつかこんな日が来ると予見していたのだ。

 

 オールマイトが辞めて、ヴィランが活発化したように、やがてヨロイムシャが辞めた時に、この京都は誰が守るのかと。世代交代が必要だと、だから反抗してでも彼はヨロイムシャ事務所を退所した。彼の一番信頼していた、サイドキックでありながら。

 

「街じゃ嫌でも見たアンタの人形も、看板も砕かれバツ印されてる……京都の人間はアンタを過去にしてる、けどな……居るんだわやっぱり、それでもあんなに戻ってきて欲しい人、京都にさ……俺らじゃダメなくらいに、信頼されてたんだよあんた……」

 

 だが、認めるしかなかった。

 

 ヨロイムシャというヒーローが辞めた穴のなんと大きい事か、例え求めらなくなろうと、ヨロイムシャという『象徴』が消えたこの京都に、まだ代わりのヒーローが育ってない事実を突きつけられたのだと、右手で顔を覆いジュウモンジは語る。

 

「アンタが積み上げてきた名声、信頼は強大だ……それと同じ大きさの責任が、アンタにはある……分かるか?会見一つで投げ出せないくらいとこまで、あんた来ちまったんだよ」

 

 それを会見一つで立ち去って、許されると思うなと、ジュウモンジはヨロイムシャ向けて言い放つ。

 

「清算しろヨロイムシャ、今現れた辻斬りヴィランがアンタの過去から来た亡霊ならば、あんたが地獄へ叩き落とせ、そしてこの京都で好きに暴れる、過去にアンタが戦ったヴィラン集団の名前だけ借りた、紛い物達を刑務所に叩き込め……あの日捨てた信頼と責任と期待、それを清算してから兜を降ろせ」

 

 ジュウモンジは言う、今まで積み上げた信頼と責任に応えろ、それらを精算して初めて、あんたは降りれるんだと。それを言われたヨロイムシャは……目を逸らして弱気に言葉を紡ぐ。

 

「今更……この老体に何かができると思うのかジュウモンジ?ワシはもうヒーローを辞めた、誰もワシを求めちゃおらんのよ……勘弁してくれ、ワシはもう……疲れたよ」

 

 帰ってきた言葉は、何とも弱々しいものだった。今更意識が晴れても、もはや自分にどうしろと言うのだとジュウモンジにヨロイムシャは返す。頑張って来た、長く長く……求められたから頑張って来た。

 

 だけど遂に『要らない』と言ったのはファン達だ、今更戻って……また槍玉になれと言うのか、老い先短い老体にそんな事を課すのかと……ヨロイムシャは言葉を返す。

 

 かつての『具足ヒーロー ヨロイムシャ』は、もうここには居ない。今ここに居るのは、ただの老人『鎧装武市』であると。その断りに……ジュウモンジの眼差しは、怒りを失い…‥哀れみと諦めが浮かび上がり、振り返って背中を向けた。

 

「……腹も切れないエセヒーローが、とっととくたばっちまえ、アンタに教えを乞うた事が、一生の間違いだった……!!」

 

 一人、その場を退散したジュウモンジを、マインハートやジェリー、そして緑谷達も止める事ができなかった。

 

 ジュウモンジの思いも、何となくだが分かるのだ。かつて憧れたヒーローが、教えを乞うた師が、弱々しく情けない姿をさらす失望を。

 

 かと言って、ヨロイムシャが全て悪いわけでは無い。

 

 あの日、蛇腔の時からヒーローは篩にかけられた。ヨロイムシャも最早これまでと兜を下ろした。タイミングが最悪だの、始まりだの言われているが……ヒーローが誰しもオールマイトの様に高潔でもなければ、エンデヴァーの様に罪に焼かれなお立てる強靭な心を持っていない。

 

 具足ヒーローヨロイムシャは『プロヒーロー』ではあれど『スーパーヒーロー』ではなかった……それだけだ。

 

「……今日はもう寝よう、明日も早いからさ」

 

 静寂の病室に、ジェリーの声が響いて、全員一先ず解散する事になった。

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