【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
夜が明けたーー。
かつてのホウガンをなぞった、各地の寺院仏閣への放火、襲撃を企てた鴉天狗衆は、ヒーロー、自衛隊、警察の混成部隊により鎮圧し、被害は無かった。
その首魁であり、自らをホウガンの血統と嘯いたHO-GUN G・Cこと、黒丸砲鉄は、本物のホウガンの孫息子であり、狂奔に駆られた鞍馬天翔こと、二代目ホウガンにより殺害された。
二代目ホウガンは、清水寺の舞台でイズク、そしてジュウモンジとの戦いで敗北し、逮捕された。
遅れていた京都復興作業は、これにより一気に加速し始め、京都に平和が訪れつつあった。緑谷達雄英仮免ヒーロー派遣隊も、日程通り一週間で雄英へ帰還する事が決まった。
「すまんかったな、ジュウモンジ……そして雄英の生徒達よ……ワシの引退が……このような形で被害を出そうとは……」
桂駐屯地内の病室で、ヨロイムシャはベッドに座りながら此度の騒動に関わった雄英派遣組、そして因縁を代わりに終わらせたジュウモンジを労った。しかし、その顔は覇気もなく、また呆けそうな力無い物だった。
「ホウガンが子をこさえて、その孫がワシに憧れていたなど……憧れがこうも、人を狂わせるとは、思いもしなかった……」
自身が投げ捨てた地位と名誉、それは最早簡単に捨てて無くなる物ではなかった。あまりにも無責任な引退撃の果てに生まれた悲劇に、ヨロイムシャは打ちひしがれていた。
「お気持ちをお察しします……しかし、血や憧れは関係無い……結局は、鞍馬がただ間違えただけです、ヨロイムシャさん」
緑谷なりの、今できるヨロイムシャへの言葉がそれだった。血も、因縁も、憧れも関係無い……ただ1人の青年が狂奔に駆られただけで、気にしてはならないと語る緑谷に、ヨロイムシャは首を振る。
「そう、割り切れないのよ、こうして歳を取ると……後悔ばかりが今になってのしかかるよ……」
最早割り切れるほど若さと、頭の柔さは無くしてしまったと、皺枯れた手を拳に変えて震えるヨロイムシャ。
「ジュウモンジや……ワシは、まだ……立つ必要があるみたいじゃの……」
何やら決心をしたらしいヨロイムシャに、壁に寄りかかっていたジュウモンジは、鼻息を一つしながら、ヨロイムシャに語る。
「いいんだぞジジイ……もう休んでよ?因縁は俺と雄英の生徒とで砕いた……後は四剣士だって居る……あんな事言った手前、手のひら返しになっちまうけどよ……もうジジイが立つ必要ねぇよ、俺ら頑張るからさ……ヨロイムシャが居ない京都、頑張って守るからさ……」
優しい眼差しだった、しかし哀れみは無く……ただ、本当に任せてくれとジュウモンジは、ヨロイムシャに言うのだ。
「……すまんなジュウモンジ……老い先短いジジイの頼みを……聞いてはくれまいか」
だが、ヨロイムシャは折れなかった。
先の引退で折れたから、その穴埋めをしたいと言う意思が彼を煽るのか、二代目ホウガンが現れた事による罪悪感から立たねばならぬと駆り立てているのか……弱くなった眼差しの奥にまだ、意思の光を宿してジュウモンジを見つめるのだ。
ジュウモンジは、ため息を吐きながら答える。
「頑固ジジイめ、わぁったよ……なら、死ぬまで俺が杖になってやるよ」
言って聞かぬなら、死んで黙るまで付き合ってやると、ジュウモンジは呆れながらにヨロイムシャの頼みに応えるのであった。
その後、ヨロイムシャはヒーローとしての復帰では無く、京都を中心としたヒーロー達のサポート役として活動を再開した。
その風当たりは酷いもので、AFOとの大戦を避けながら、さらに現役ヒーローの後ろで仕事をする様に『天下り』とまで批判が起きた。
しかし……ジュウモンジ以下、かつてのヨロイムシャサイドキックであった、ヨロイムシャ四剣士らの活躍により、少しずつそのあり方に理解を得られるのは先の話。
閉鎖されていたヨロイムシャ事務所は、ヨロイムシャの意向と提案により、京都を守るヒーロー達の詰所『京都英雄屯所』として解放され、京都中のヒーローが情報共有と休息、活動の拠点として利用される事になる。
それは、荼毘という自身の罪により、ヒーロー社会崩壊を招いたエンデヴァーの贖罪と同じように、ヨロイムシャもまた、自ら積み上げた名誉と地位、それを捨てた責任を果たすための最後の仕事となった。
京都にて起こったこの沙汰は、ジュウモンジと……雄英仮免ヒーロー達により、こうして一件落着となった。
しかし……。
この事件はまだ、始まりでしかなかった。
あの日空に散った光は、日本に、世界に霧散して。
新たな『脅威』を育てつつあったのだった。