【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
合同勉強合宿、初めての土曜日。
土曜日は午前授業となり、昼食を終えれば自由時間となる。一週間の勉強範囲のおさらいをするも良し、希望者は個性伸ばし訓練の為にグラウンド等も解放された。
雄英高校組は、仮免持ちである為ここから日曜日含めて休み……とは流石にならない者も居る。先の組手で危機感を覚えた者、範囲の予習に時間割く者……とりあえず一週目だからと休む者と様々だ。
「よーしやろっか!藤見くん!」
そして、他校生と切磋琢磨をしようとする者も。
緑谷出久は、昨晩の約束通りに来た藤見露召呂と対面して元気よくそう言った。対して藤見は……ちょいと警戒している気があった。
「一つ聞いていいか?」
早速個性伸ばし訓練を始めようと意気込む緑谷に藤見が尋ねた。
「何さ?」
「何で俺を訓練に誘った?負けた哀れみからか?」
藤見が尋ねたのは、この自由訓練に自分を誘った理由だった。爆豪に負けた哀れみからかと、卑屈な理由を吐く藤見に対して、緑谷は苦笑しながら答えた。
「そんな物は無い……と言ったら嘘になる、だから多少は確かにあると言っておくよ、後は……同じ傾向の個性だからかな?」
「と言うと……」
「お互いヒーローらしからぬ個性でしょ?キミはゾンビウイルス、僕は脊髄ぶっこ抜き……類似性バイアスってやつだろうね」
爆豪に負けたのが哀れで仕方なかった、そんな事は無い。とは、緑谷は嘘を吐けなかった。確かにそれも多少感じた事実はあるが、緑谷は藤見と同じ『ヒーローらしからぬ個性』であったから、お節介を焼きたくなったのだと正直に語った。
片や、吸えば無差別に生物をゾンビ化する個性。片や、脊髄をぶっこ抜き殺傷できる個性。こんな個性ヴィラン側だろうと言われても、それでもヒーローを目指すと決めた。
茨の道を歩んでいる、少しだけ前に進んだ自分から、50m先までの道を示すくらいしてもいいじゃないかと緑谷は思ったのだ。
緑谷の真正面から正直に語る理由に、藤見は小言の一つ返してやる気も起きず、ただ黙った。
「でさ、僕も同じ傾向に訓練したんだけどね……藤見くんは"強化"より"理解"と"深化"に訓練した方が強くなれると思うんだ」
「理解と深化……」
これから行う訓練の目標は、強くなるのはそうだが、ただ個性を強くする、それに耐えうる肉体を作るではないと、緑谷の語りに藤見は目を細めた。
「そ、より自分の個性を理解して、多彩な事をできる様にする、僕の場合は……」
緑谷は、藤見の足元の小石を人差し指で指差し、くいと動かせばその小石はまるで糸につられた様に浮き上がり、移動して緑谷の指先手前で停止して、そして落ちた。
「"ぶっこ抜く"と言う個性から"引き寄せる"部分だけを副次的に、扱える様になった……まぁこれは、母さんの個性がそうだったからその個性因子のお陰もある」
「つまり……解釈を変えてイメージして、できる様になったのか?」
「そう、理解が早くて助かる、流石同じ仮免持ち」
この一年、緑谷の『脊髄ぶっこ抜き』は、母から受け継いだ個性『引き寄せ』をルーツとして持っている事から『引き抜く』と言うイメージによって、解釈を広げあらゆるものを引き寄せれるようになった。
これは元々、緑谷出久の個性自体が『AFO因子』により変質したのもあるが、それでも緑谷は個性伸ばしと潜り抜けた修羅場、インターンの果てに、この『脊髄ぶっこ抜き』を、新たな形に作り上げる事ができた。
藤見からしても、それは荒唐無稽な話とはならなかった。これでも仮免を一年生で合格した身、何よりオールマイトに憧れてヒーローを目指す1人……個性伸ばしの訓練や授業の中でいくらか、話にも聞いた事がある。
本来の個性が成長や訓練の果て、実は『ただの一部分でしかなかった』だとか『全く違うことができる様になった』事があり、それで市役所に個性変更届の手続きまであるのだから。
「でさ、藤見くんのゾンビウイルスって大まかに三つの効果があるよね?一つ目は意思を奪う、二つ目は個性強化、三つ目は痛覚の鈍化……あってる?間違いはないかな?」
「お、おう……確かにそれであってる」
緑谷は指を3本立てて、藤見のゾンビウイルスの効果を並べ立てた。
「今のキミの個性は、この三つをひっくるめて"ゾンビウイルス"と呼称するならば……考えてみなよ……」
「な、何をだ……?」
緑谷は、悪い笑顔を浮かべて彼に促した。こいつは何を考えているんだ、俺に何をさせる気なんだと生唾を飲む藤見に、緑谷は建てた三本指から人差し指以外を畳み、一本だけにして見せて藤見に言う。
「この効果を、一つずつ自由に使えたら……どう思う?」
「!!?」
まさに、青天の霹靂であった━━。
今の今まで、藤見はゾンビウイルスの散布だけで戦っていた。むしろ、それだけでも仮免試験を合格できるくらいにはポテンシャルを有していたし、真面目に授業にもヒーロー訓練も積み上げてきた自覚がある。
考えなかったわけではない……あまりに自分の個性はその一辺倒である事を。しかし、ここからどう変わる事も出来ないと思っていたのだ。『ゾンビウイルス』はそれだけ、吸えば終わりの恐竜な個性で、完成してしまっているから。
だから、自分には『それ』しかないと。藤見はひたすらに、ただガスの噴射量や範囲、効果時間を伸ばすためにひたすら個性を使い続けた。
「……で、出来るのか?そんな事」
「出来るに決まってるよ、だってウイルスだろ?突然変異なんてお手のものじゃない?むしろ他の個性よりも、変化や変異はイメージしやすくないかな?」
これまた、盲点を突かれた。出来るのかと言う問いかけに、むしろウイルスの『変異』からイメージしやすいだろうと緑谷に言われて、今まで何故気付かなかったのかと閉口する他なかった。
「あと、イメージって大事だよ藤見くん?個性ってさ、自身の一部だからある程度イメージで融通が効くんだ……"やればできる"の精神が意外にも重要だったりする、と言うわけで……早速やろうか、キミのゾンビウイルスから、その一部分だけを取り出すイメージを」
「ああ分かった……!」
緑谷に乗せられ、イメージを藤見は頭の中で練る……ヒーロースーツの頸部から、両腕の袖の排出口までのチューブを……ピンク色の光が通っていく、ゾンビウイルスガスの生成から排出口へ辿り着いた。
「!!」
その最中……この問答だけで、変化は訪れた!チューブの中のウィルスガスが、ぴんくいろから色が薄まり桜色にまで変化したのだ!藤見はそれを━━緑谷向けて構わず噴射した!
「あ!?そうか被検体が必要━━ぶふっ」
と、ここで緑谷が痛恨のミス!!被検体を務める役が居ないし、何ならゾンビウイルスに感染した後の事を考えてなかった!!
「おい!?その後の事考えとけよ!?大丈夫か!!」
協力はありがたいが事後処理考えてなかったのかよと、もう俺にぶつけて試せと言う流れなのかと思い込んでいた藤見も、流石に焦った。自らのゾンビウイルスガスを浴びた緑谷が、桜色の煙の中からその姿をゆっくり表して……藤見は目を見開いた。
いつものゾンビ化を、緑谷はしなかったのだ。煙の中に立つ緑谷は、藤見を見ているのか、はたまた彼方を見ているのか、視線が定まらない様子に藤見はゆっくり近づく。
「お、おい?どうなんだ?吸わずに息止めてたのか?」
ギリギリ吸わなかったのかと、藤見は恐る恐る近づいて……右手を緑谷の目の前、視界に入れる様に振ってみた。瞳が動かず目で追っていない、呆然と立ち尽くす緑谷が……しばらくしてはっ!と意識を取り戻した様に身体をビクンと跳ねさせ目も動いて、藤見は後ずさった。
「……いま、感染してた?どうだった?藤見くん?」
緑谷からすれば、この数十秒間は感染してゾンビ化していたと思っていたらしい。即ち意識を奪われていた事、効果があった事が判明して、藤見は答える。
「いや、感染した様子は無い、ただ呆然と立ち尽くしてた……」
「と言う事はつまり……」
即ち、一度目で『ゾンビウイルス』の一要素だけを取り出せた事になるのかと、緑谷は口端を吊り上げた。
「いや、待った、もしかしたら……ただゾンビウイルスが全体的に弱まっただけかもしれねぇ、視覚的にはただガスの色も薄くなっただけだった」
しかし藤見は待ったをかけた、視覚的には上手くいった様に見えたが、ガスの色も濃淡しか変わってなかった。全く意識してなかった事をいきなりやってそう上手くは行かないと、喜ぶにはまだ早いと顎に手を当てた。
「思えば今まで強くなろうと個性を使ってきたからな……弱めて効果を下げたり選別して使うなんて考え無かったし……参ったな」
「けど変化しているよ、つまりできるんだ……操作が」
緑谷からしても藤見は少々卑屈な気が見えた。恐らくは大きな変化を、完璧を求めすぎている気があるなと。やる気を奪わない為にポジティブに考えなければと緑谷は藤見に促した。
初めての午前授業からの自主練、緑谷は藤見の為に全ての時間を使ったのであった。