【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
憧れのヒーローから……手合わせしないかとグッスマイルで誘われた。ゲームなら時間限定高難度イベントだ、2周目引き継ぎでやっとまともにやり合える、そんな難易度の。
「分かりました……胸をお借りします」
だが、そんな物はこの世界に存在しない。逃げてもいいなんて相澤先生は言ってくれたが、こんな取り返しつかないイベント逃げれるわけないだろう。憧れと……戦えるなんて!緑谷はヒーロースーツのカバンを揺らしてオールマイトに言った。
「では、着替えて来ますので」
「待ってるぞ緑谷少年!」
更衣室に向かう緑谷を見送り、その時を待つオールマイトは、昨日の事を思い出していた。
時間を巻き戻す事、体育祭休日の二日……折寺地区のある家にてーー。
『この裏庭で、緑谷少年が……』
『はい……小学校から今も、ここで出久は欠かさず鍛えてます、ここは一部ですが』
緑谷出久が、診察の為病院へ外出していたのを見計らって、オールマイトが緑谷邸宅に来ていた。緑谷出久の『オリジン』を知る為に……決して広くは無い裏庭に、トレーニング器具が整え置かれていた。
痩せた美しい、と言えば聞こえはよかろうが、心労により痩せているが正しい、のが正しかろう出久の母親『緑谷引子』が、オールマイトの来訪を出迎え、説明していた。
『持ち手に錆がある……ブルーシートがあるし、雨ざらしにしてではない……血が滲んで出来た血錆だ、これを小学生から……』
『ヒーローになるんだと……友達が居なかった出久には、時間だけはあった……というしか無いでしょうね』
いくつかの器具には、血の錆が濃く出来上がっていた。『血の滲む努力』なんて美談で済ませられようが……この『異常さ』に顔を顰める。
『止めても、止まりませんでしたか』
『はい……それに、止めたらこの子からただ一つの、大切な物すら取り上げてしまうと思うともう……』
『……』
母として止めた、そして止まらなかった。無理に止めたら、全てを取り上げる事になるのも知って……止める事は辞めたと引子は弁明する。オールマイトは何も言えなかった、どうして止めなかったんだとか、辛かったですねなんて、自分が言える立場じゃあ無い。息子も、母親も、覚悟が決まりすぎている。
『父は転勤していると聞きましたが……』
『はい、アメリカで……ヒーローになる出久のサポートの為にと、給料がいいからと自ら……』
『連絡は……』
『欠かしてません……』
『そうですか……では、すいませんが、緑谷少年の部屋を見せてもらっても』
彼の父もまた、息子の夢の為に金を稼いで送っていると言う。全ては、息子の幸せ、夢の為にと。彼の始まりが、ゆっくり紐解かれていくーー。
「お待たせしました、着替えて来ましたーー」
緑谷の声を聞いて、オールマイトは昨日の訪問の風景から引き戻された。目の前に現れた緑谷のヒーロースーツ姿……あの日ヴィランの襲撃を打ち払い、血に染まった黒の……重々しい夜を思わせる、ヒーローらしからぬスーツ。
「見れば見るほどヒーローには思えないわ、けど……イーヴル・ヒーローイズクなら、これ程似合うスーツは無いわね、緑谷くん?」
「む、ミッドナイト?イーヴル・ヒーローとは?」
その名前は一体とオールマイトはミッドナイトに尋ねたが、答えたのは担任たる相澤であった。
「彼が決めたヒーロー名、コードネームですよ、悪のヒーロー……悪の力を抱えてもヒーローになってみせるという、決意の名前です」
名前の由来を聞いたオールマイトは、またもその様な覚悟をキミはと、心臓が締め付けられた。だがーー!
「いい名前じゃないか!うん!」
「ありがとうございます、オールマイト」
今はそう、言っておこう!両者が準備を完了したところで、2人が向かい合うちょうど真ん中を、根津校長が入って取り仕切る。
「これはあくまで組み手、実戦ではあるが練習と忘れないように、個性の使用もあくまで範囲の中で行うこと、武器の使用は禁止、ヒーローらしからぬ目潰しや金的、あと膝への踏みつけ、喉への攻撃も無論禁止いいね?」
「はい、校長先生」
「勿論!では……はじめるか緑谷少年!」
その力強い台詞が、戦闘態勢を緑谷に報せる。目が潰れそうな、光の闘気を前にして、組み手であろうと気が抜けないと、帽子を深く被り、スカーフで口元を覆って緑谷が構えを取れば、教師陣も気圧されそうな紫色の殺意が滲み出し、根津校長が腕を上げ、振り下ろし言い放った。
「はじめ!!」
いざ、緑谷出久、憧れとの一戦が幕を開けた。