※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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421話 冷夏

「……まさかこれ程までとはね」

 

 セントラル病院は日曜日の休日診療にも対応していた。現在日本の最先端医療を行えるこの病院で、爆豪勝己は死柄木に砕かれた右腕と、心臓の治療を受けており、その経過観察でこの日は両親と落ち合い、手術担当した吉田竜先生と対面した?

 

 レントゲン等、様々な検査を経て……カルテやそれらを眺めながら吉田は呆れと驚きないまぜな声を上げた。

 

「正直に言えば、動かす事すらままならないと思っていた……けど、今キミの右手はゆっくりながら、動かす事ができつつあるみたいだね」

 

 死柄木に砕かれた右手は、切断を薦めるくらいには酷い有様だった。形を何とか保ってくっつけただけと、大戦後の治療で彼に言った。それがもう、ゆっくりだが動かせているという執念のリハビリの成果が出ていた事に、吉田は奇跡と言わざるを得なかった。

 

「そっすか、で……心臓の方は?」

 

 爆豪は、まだまだ握るも開くもあまりに遅く弱い右手を見ながら、心臓の傷はどうなのかと尋ねれば、吉田は頷く。

 

「そうだね、もう完治をしている……けど、無理はまだできない、まずは軽い運動で体力を取り戻す事からだね」

「そうですか……」

「よかった……本当に」

 

 合流し、椅子に座る勝己の後ろにて同じく話を聞いていた勝己の母、爆豪光己もひとつ山は超えた事に安堵して胸を撫で下ろし、父爆豪勝も安堵のため息を吐いた。

 

 勝己本人は、ようやく軽度な運動ならと許しが出たかと、左手で胸元を触りながら目を閉じた。あの日、死柄木に砕かれ死んでいたかもしれない心臓を、エッジショットが自らの体を犠牲に蘇生し繋いでくれたから、今自分はここにある……繋いでくれた先輩の為にもこの命を無駄にはできないし、想いに応えなければと使命すら感じていた。

 

「とりあえず右手のリハビリと経過観察もあるので、また二週間後に来院をお願いします、予約は━━」

 

 また二週間後に経過を見たいからと、吉田先生は爆豪夫妻、爆豪勝己と次の診察日を予約するのだった。

 

 

 

 診察を終えて、ロビーで処方箋を待つ事になった爆豪に、待っていた相澤とオールマイトが立ち上がり、夫妻に一礼した。爆豪夫妻も一礼し、経過はどうだったか大事はないかと世間話が始まったのを見て、勝己は長くなりそうだなと4人の姿を見ながら、ロビーのソファに座った。

 

 ソファの近くには、古めの情報誌や新聞、暇つぶしに用意された漫画が置かれ、大画面テレビではニュースが流れている。処方箋が出るまではこれらで暇つぶしするしかないかとなる中、今日の地元新聞が折りたたまれて置かれていたので、まぁこれくらいしか読む物が無いかと左手で取り上げ広げた。

 

「……あ?」

 

 その一面にて、勝己は思わず声が出た。というのも、交流の家を出た際に見た、富士山の記事だった。

 

『夏富士で降雪を数日観測、近隣の気温も全国に比べ低い傾向』

 

 という記事だった。

 

 内容としては、相澤先生とオールマイトが話していた『今年は冷夏』であり、全国的に過ごしやすい涼しい夏となっているらしいが、この富士山周辺はより気温が低くなっているというのだ。

 

 富士山周辺のみで、この低い気温は観測されているらしい。出発時に目にした富士の山頂付近の雪化粧は、見間違いでは無かったのかと、勝己はしばらく文面を追った。

 

「勝己、呼ばれたよ?行こうか」

「ん?お、ああ」

 

 が、よほど読み耽っていたらしい、あっという間に処方箋ができて呼ばれたのを、父である勝に呼ばれ、新聞を折りたたみ立ち上がる。

 

「熱心に読んでたけど、何かあったのかい?」

「何もねぇよ……」

 

 恐らく何も無いはずだと、勝己は両親と相澤先生、オールマイトと共に、処方箋を取りに向かった。その直後……勝己は見ていなかった大画面テレビでニュースが流れていた。

 

『続いてのニュースです……日本各地で、様々な光を空に目撃した情報が相次いでいます、日本だけでなく、世界でも空や、森林、様々な場所で起こっているこの発光現象は何か……当局クルーも調査に乗り出しました』

 

 

 

「へぇ、じゃあカラオケの後は買い物してすぐ帰ったんだ……」

「盲点だったんだよ、この辺ゲーセンとか無くて」

「ゲーム機持っといて正解だったわ……」

 

 休日はあっという間に過ぎ去って、夕食を食堂で取りながら、緑谷は対面に席を取った峰田に何をしていたのか尋ねれば、カラオケの後は遊ぶ場所が見当たらず、結局コンビニやスーパーで菓子類の買い出しをしてから帰ってきた事を知った。

 

 御殿場周辺は、意外にもプレイスポットがなかったらしい。カラオケ屋は見つかったが、他に遊べるような場所は無く意外にも暇つぶしには不便な街だった事を緑谷は、峰田と同じく行動した上鳴からも聞いた。

 

 瀬呂も、同じグループで行動していたのでまぁ失敗したと苦笑する。

 

「総大将は何してたんだ?」

「買い出し、日用品やらの……昼間の便で戻ってゴロゴロしてたよ」

「まぁ流石に日曜まで訓練はなぁ……疲れ残せねぇし」

 

 皆大体買い出しやら休日で休んでいた、となっているのが大半だろう。何しろ合宿初週の日曜日、慣れもないし体力は温存しときたい物だと。

 

「緑谷、隣いいか?」

「轟くん?いいよ、どうぞ」

「悪いな……」

 

 そうして食べながら話をしていると、聞いた声を耳にする。轟くんかと、声だけで判断して座る事を許した。が、対面に居た峰田に上鳴、瀬呂が何やら唖然としていた。

 

 何事だ?何かあったかと3人の固まった表情と共に、瀬呂がまず口を開いた。

 

「轟……お前何してた?顔腫れたりとか、絆創膏とか……」

「えっ?」

 

 見ていなかった緑谷も流石に、瀬呂の言葉で右隣に座った轟を見て、硬直した。何しろあの美男子顔が、腫れやら傷やらで絆創膏が貼られたりと、怪我だらけだったのだ。

 

「ちょっと……轟くん、それどうしたの?」

 

 それは流石に尋ねてしまうと、緑谷が尋ねれば……あっけらかんに轟は答えた。

 

「ああ、朝から誠刃の姫鷹校長に言われて、花霞さんにマンツーマンで柔術拳法をさっきまで教えてもらってた」

 

 轟焦凍は、ストイックにも休日を訓練に費やしていたのだ。だからそんなにと緑谷は、彼の休日返上で訓練していた事実に驚いた。

 

「思えば……一年の時から個性頼りだったなと組手の時に省みて、姫鷹先生が計らってくれたんだ……教えてもらった身の上しっかりものにしてぇ」

「そっか、轟くんも遂に徒手空拳を身につけるんだね……」

 

 轟が、合同訓練時に個性を超えて殴り合いになったB組の鉄哲や、先日の花霞桜との組手でいよいよ危機感を覚えて近接戦闘を学ぶ事を決めた事に、緑谷は少し嬉しくなった。これで組手の相手が増えるなとおかずのコロッケをを口に入れながら上機嫌となる中……この男は決して聞き逃さなかった。

 

「待った轟……誰に教わってたって?」

 

 峰田実である。

 

 峰田は、轟が『誰に』徒手空拳を習っているのか、今一度尋ねるや……轟は何か変な事言ったか?ともう一度峰田に答えた。

 

「花霞さんだが?姉の方の桜さん……姫鷹先生に組手相手として連れられて、さっきまで色々教えて貰って━━」

「さっきまでぇ!?」

「色々と━━!」

「教えて貰っていただぁ!?」

 

 おい待てそりゃどういう事だと、瀬呂と上鳴までもう一度話を聞かせろと乗り出してきた。

 

「あぁ、何も知らない俺に一から、手取り足取り……」

「「「一から手取り足取りぃ!?」」」

「ちょいちょいちょい轟くん、誤解生むって」

 

 自分たちが遊び呆けている間に、轟はあの誠刃の豊かな胸を持った美人姉妹の姉から、手取り足取り一から武道を学んでいたと聞くや、峰田、上鳴、瀬呂は思春期らしい妄想が繰り広げられていた。

 

 優しく微笑む笑顔、組合い衣擦れする道着、汗ばむ身体と漂う芳香……触れ合う布一枚を隔てた柔い感触に、疲労と……夏の暑さからくる火照りと吐息……やがて、道着はズレてまろび出る……。

 

「ち、畜生!やっぱりオイラ達遊びより訓練するべきだったぁ!」

「んな羨まし……いや、ヒーローとしての研鑽を怠ってオレたちはのうのうと……!」

「轟!俺たちもその訓練に参加していいか!?」

 

 思春期高校生の欲望ダダ漏れな、そんな邪な思いを描き3人は徒手空拳訓練に参加をこぎ着けようとした。緑谷も、誠刃柔術拳法なるヒーローアーツは気になったので、参加できるか興味はあった。

 

 女子とお手合わせ、お近づきになるチャンスと見るや、約束を取り付けようと3人が轟にやいのやいのと迫るなかで、緑谷は少し予習はしとこうとさっさと夕食を食べ進めた。

 

 なお、この翌週日曜日に峰田、瀬呂、上鳴は練習に参加するものの……投げられ関節をキメられた結果やましく美味しい経験は一切無かった事をここに記す。

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