【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
合同勉強合宿の日々は、一日、また一日と積み重なっていく。
勉強漬けと集団生活の中で、四校の生徒達は勉強の遅れを取り戻しながら、互いにヒーローとして切磋琢磨力を磨き上げていく。
ヒーロー訓練も、様々な物が各校の先生方々から提案された。
交流事業として、御殿場周辺の幼稚園、小学校で大規模災害の避難訓練を行ったり。自衛隊による、救助訓練や様々なケースの対応を学び、富士山のトレッキングコースを歩いたりと体力作りも行われた。
最初は勉強スピードにひいひい言っていた面々も、慣れが出来てくらいつき、この集団生活にも皆が慣れて来た折り返しとなる8月の初週……二回目の日曜日を超えた合宿第三週間目に、事件が起きたのだった。
『……………えっ?』
緑谷出久は、まさかの景色に驚いた。何しろ"もう、この場所に自分が来る事は無い“と思っていたからだ。
『何でまた、ここに?』
ここは、緑谷出久の『夢の中』であり『精神世界』であった。
かつて、緑谷出久の中にオールマイトの個性『OFA』の欠片が分たれてから、度々先代継承者達と会合する時に引き込まれる場所であった。
AFOと死柄木との戦いの果て、OFAは砕け散った……それ以降、この精神世界に来る事は今日まで無かったのだ。
そんな場所へ、緑谷の意識は再び降り立ったのである。
しかし、周囲の景色はかつて継承者達が居座っていた『喫茶どんぶら』ではなかった。それどころか、立っている場所は外であった。
外というのも……現在自分たちが利用して、合宿している『青少年の家』の、正面広場にポツンと立っていたのである。
周囲には霧が立ち込めて、夏らしからぬ寒さを精神世界ながら感じつつ……何故ここにまた自分の意識が飛ばされたのか、最早消えた先代達も居ない世界で……緑谷は兎も角ここから出なければと歩き出す。
そうして、青少年の家正門ゲートまでまず歩いてみると……緑谷は気配を感じ、そのゲートに佇む人影を見て走った。
誰だ、いや……この気配を緑谷は"知っていた!"
決して忘れる事も、間違える事もしない!その気配と、幽鬼の如く正門ゲートに佇む後ろ姿……白髪の髪の毛に猫背の人物に、緑谷は声をかけた。
『死柄木……?』
死柄木弔……緑谷出久が、最も恐れた『敵』であり……同じAFOにより人生を狂わされた『被害者』であると同時に、最後に分かり合えた『友人』が、生気無き幽霊の如く半透明な姿で、背を向けて立っていた。
半透明の死柄木は……そのまま振り返る。表情は真顔のまま、緑谷を見つめて、何も言葉は発さない。
『何だ……何か僕に、伝えたいのか?』
死柄木は、緑谷の言葉を聞いてそのまま首を傾け、ある方向へ向いた。そして……皺枯れた、かさついた指で、見ている方角を指し示す。
『……富士山?』
指し示すは富士山……そちらを見た瞬間━━緑谷は驚愕した。これが精神世界とは言え、冷や汗が湧き出て言葉を失う程に。
赤く染まる富士……その背後に━━巨大な月の代わりと、歯を見せ笑み浮かべるは……打ち倒し滅したはずの、AFOの巨大な顔が浮かんでいた。
「うぁあああああああーーーー!?」
「な、何事!?」
「敵襲かぁ!?」
緑谷の絶叫に、同室の者全員が飛び起きた。緑谷本人も、寝起き眼の瞼の重さが吹き飛ぶ悪夢と、汗でぐっしょりした身体、そして全速力で走ったように息切れをしていた。
それが、合同合宿折り返しとなる日の目覚めであった。
「なんて悪夢だ……」
「相当堪えてんなぁ……」
朝の集いを終えての朝食会場、緑谷はあの悪夢にため息を吐いて呟けば、対面に座る爆豪から流石にと同情の台詞が吐かれた。普段なら憎まれ口を叩く爆豪ですら、今朝緑谷が悪夢を見たから揶揄ってやろうと少し思ったが、内容を聞いたら笑えなかった。
「何でまたこんな時にあいつの顔なんて見るのか……ゼ◯ダのムジュ◯の月みたいにAFOの顔があったんだよ」
「おいもう言葉にすんな、想像して食欲無くす」
そんな最悪な悪夢を言語化したら食欲無くすから、もう言うなと爆豪に言われた緑谷も、その通りだと焼き鮭を弄って口に入れた。何だか薄い感じがする……熱は無かったし、だるさはないが悪夢による精神的動揺が余程きてるのかなと、緑谷はそれでもと朝食を詰め込むように食べていく。
何しろ今日は午前中にヒーロー訓練をやると、連絡が来たのだ。朝食抜いて倒れましたなんて許されないぞと、緑谷は味がしない朝食達を完食して、さっさとヒーロースーツに着替えようと立ち上がった。
「先行くよ、かっちゃん」
「おう、まぁ無様晒すなよ」
爆豪に先に行くと伝え、食べ終えた食器を返却にいく緑谷。列をなして次々と返却口に行く他校生もいる中、列に並ぶと後ろから声がかかった。
「おはよう緑谷ちゃん、顔色悪いわね?なにかあった?」
「あ、おはよう蛙吹さん」
蛙吹梅雨も、ちょうど食べ終わったらしい。顔色が悪いと心配させて、大丈夫かと尋ねる彼女に、緑谷は力無く笑いながら挨拶を返す。
「まぁ……聞かない方がいい悪い夢を見たと言うか……」
「余程の悪夢を見たのね、もしかして夏風邪をひいたとか?」
「いや、熱も咳もだるさもないけど、動揺がまだ……」
緑谷が見た夢を気にしている蛙吹、それ程の動揺する夢を見るほどうなされているなら、夏風邪でもひいたのではと聞かれ、風邪の症状はないかなと返す緑谷に蛙吹はよかっったと頷く。
「今年の夏は寒いらしいから、夜の寝冷えは禁物よ緑谷ちゃん、私や羽生子ちゃんもちょっと気を抜けない涼しさみたいだから」
「そんなに……気をつけるよ」
自らと、勇学園の友人万偶数羽生子を引き合いに出して寝冷えには気をつけてと緑谷は労られた。
蛙吹梅雨の個性は『蛙』であり、その特性は彼女の身体にも現れている。通常人間というのは『恒温動物』で自ら体温調節が可能だが……蛙吹は『蛙』の個性故に『変温動物』と同じで、冷気を浴びると冬眠してしまうのだ。彼女の友達、万偶数羽生子も同じ変温動物の体質の為、同様に気をつけているらしい。
そんな彼女達が、気をつけなければならない程に、今年の夏は涼しいらしい。食器を返して、さっさと着替えて訓練に遅れないようにしようと、宿泊施設へ緑谷は戻る為、出口に向かった。
そして、出口に出た瞬間━━。
「!!?」
ぞわりと、緑谷の身体が総毛立った。
この感覚を、忘れる事は決してない。思わず富士山の方角を見て緑谷はしばらく、固まってしまった。
まさか、そんな筈があるわけない。だが……この身体に纏わりつく『悪寒』は……"奴"以外あり得ない。
『AFOの気配が、富士山からする!!』
奴は、皆で倒した。最後に自らの拳と、OFA、そして死柄木の力で滅した筈。だが……その気配が明らかに富士山から感じて緑谷は、首を左右に振った。
「悪夢を見て、変になっているんだ……そうに違いない」
そうだ、少し悪夢を見て引っ張られているだけだ。奴は倒した、もう居ない……筈だと、緑谷は自らに言い聞かせて、ヒーロースーツへ着替えるために宿舎へ戻った。