【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
湧水のヘッドマウントカメラの端子がPCに繋がれて、映像ファイルがプロジェクターより映し出された。
「これ……脳無ですの?」
捜索隊として参加し、この招集に呼ばれた加礼燈が、映像に記録された物が、確かに脳無と酷似しているが幾つか離れた部分があると疑問を口にした。
「確かにそれっぽくはあるが……」
「何か……微妙に違くね?」
轟、そして同じく捜索隊だった上鳴も、自身の知る脳無と違うなと、捜索隊の生徒から引率の先生団も、かつてヴィラン連合及び超常解放戦線が解き放ったそれらから、類似こそあるが所々違うと声が上がった。
「殻木が作った別個体の脳無……か?」
「あり得ますね、それが一番考え得るかと」
AFOの腹心にして、脳無開発者である殻木球大が遺棄した個体なのではなかろうか、それが一番思い立つと教師陣が語る中で、招集された生徒の一人が呟いた。
「いやまさか……でも、似てるな」
呟きの元は常闇からだった、それを聞いたらしい相澤先生が指摘する。
「常闇、何か知っているのか?些細なことでも、気付いたことなら何でもいいから言ってくれ」
何かに気付いたなら発言を頼む、催促された常闇は立ち上がり……少々言い辛い雰囲気を纏いながらも答えた。
「その、何を言っているのかとか、何を馬鹿なと言われるかもしれませんが……似ているんです」
「似ている?」
「俺の知っている、地球外生命体に……ミ=ゴと呼称されているんですが」
催促された果て、常闇が答えたのは……脳無らしき化け物の正体が『地球外生命体』に酷似しているというものだった。張り詰めた雰囲気がゆっくり冷めていく様に常闇は、だから言いたくなかったんだと後悔の表情を浮かべた。
「その……あーー……常闇くん、ミゴなる物は何という生き物なんだね?」
そこに、フォローのつもりらしい姫鷹先生が質問した。もうやめてやってくれよと、招集された生徒達一同が思う中、常闇は羞恥に耐えながら姫鷹の質問に答えた。
「それは、創作神話体系の、クトゥルフ神話の小説に出てくる地球外生命体で……」
ミ=ゴなる宇宙生物の説明をさせられる常闇、だが……その最中緑谷は、彼の説明から知った単語が出てきて、思わず確認した。
「常闇くん、クトゥルフ神話って……ガタノゾーアとかゾイガーの?」
「知ってるのか!?同胞よ!!」
まさか知っているのかと、この場に同じ知識を持つ相手がまさか同胞とはと、常闇の羞恥心は一気に歓喜へ変わった。
「知っているというか、昔のヒーロー特撮の怪獣が、その神話の邪神モチーフって聞いたから齧った程度ではあるけど」
「それでも助かる!」
齧った程度、それでも今の常闇には救いだった。
ミ=ゴとは……コズミックSFホラー作家である、H・P・ラヴクラフト氏が創り出した神話体系『クトゥルフ神話』に登場する、地球外生命体である。
人類誕生以前より地球に来訪しており、その姿は甲殻類を思わせ、3対の鉤爪や鋏が付いた手足を持った化け物であり、ユゴス……冥王星から来た生命体であるが、詳細は割愛する。
が、あくまでそれは一作者が築いた『空想の神話』の設定であり『実在』するわけではない。
「これが、そのミ=ゴのイラストではあるんですが……」
そう、実在する筈がないのだが……。
「うっわ!マジに似てんじゃん!?えぇ!?」
「こんな事があり得るんですか……」
常闇がスマホから検索した、ネットのミ=ゴのイラストをプロジェクターから表示すれば、一同は愕然とした。上鳴は思わず声を上げて、花霞桜も目を見開き言葉が漏れた。
酷似どころでは無い、イラストから本当に出てきたとしか思えない!今になって緑谷は背筋が凍りついた。
待ってくれ…….僕、地球外生命体の脊髄ぶっこ抜いたのか!?下手したら宇宙戦争おっぱじまる!?と。
「おい、んな地球外生命体から、何で出久がもう引き出せねぇ因子血晶が出てきてんだ?」
「確かに……緑谷はもう、AFOの力は使えないんだよな?」
「そのあたりはどうなんだ緑谷」
しかし、それがガチの地球外生命体だったとして……その地球外生命体が、何故『因子血晶』となり崩壊したのだと爆豪が矛盾を指摘すれば轟も、そして相澤も、今は緑谷自身、AFOの力は使えない筈だよなと尋ねる。
緑谷は、隠さず今の現状を全て語った。
「……死柄木とAFOを倒してから、あの日から、使えないよ……歴代OFAの個性に変身も、AFOも使えない……使えるのは脊髄ぶっこ抜きと引き寄せだけ」
あの戦いを終えてから、全て消え去った。
OFA自体が、AFOより生まれ、引き継がれ、そして対消滅する様にあの戦いで消えた筈だ。自身に言い聞かせながら、手のひらにあった『穴』は塞がっている事を緑谷は確認した。
「兎も角、この現状での合同合宿は続行はできないと見てぇいいな……だがぁ……ヒーロー達が少なく、こちらに対応が裂けない現状もぉまた事実……」
話は終わった、この富士山が凍結し、脳無らしき化け物が出てきた状態で合同合宿は続行不可だと姫鷹は杖をつきながら立ち上がり、同時にこの異常事態に招集できるヒーローも少ないという現状だと語った。
「各校の先生方々にぃ判断を仰ぎたい、私はこの緊急事態……仮免も関係無く学生を総動員し、この異常事態解決に当たるべきだと考えている……無論、ヒーロー公安委員会にも連絡はするが……」
姫鷹は告げる、この富士山凍結と異常気象に脳無らしき生命体の事案は、今この場にいる教員と学生で対処、解決すべきではなかろうかと。
その提案に『よしやろう』と各校の教師達は流石にならなかった。
「いかに仮免持ちの者達が居るとはいえ、まだ持っていない学生が大半です……彼らは確かにヒーローを目指している子達だが、それ以前に学生だ……生徒の安全の為、合宿を中止し避難すべきでは……」
姫鷹の提案に反対を示したのが、勇学園の引率である科内だった。彼ら、彼女らは確かにプロヒーローを目指す者達である、仮免所持の者も居る。
しかし、その前にまだ『学生』であり、守られるべき存在だと忘れてはならないと語った。
この時……召集された捜索隊の生徒達から、誰一人『俺たちはヒーローだ!やってやるぜ!』という勇敢な意見は上がらなかった。
いや、心中では誰もが『行ってやる』という気持ちに火はついている。だが軽率に、科内先生の意見に対し噛み付く様な事はしなかった。
ヒーローの本懐は『救う事』にあり、科内先生の意見は真っ当であったからだ。仮免許を持つ生徒が、一時の熱気とやる気で声を上げて、まだ持っても居ない生徒に伝播し、そして事に当たった先で取り返しがつかない事になれば、それこそ誰が責任を取るのかとなる。
ヴィラン連合、AFOとの大戦を越えたからこそ……勇敢と蛮勇の違いを理解したのだろう。
「科内先生、貴方の意見も理解できるが……どこの学校であれヒーロー科に属している以上、多少の危険は理解の上だと思います……私は、姫鷹先生に賛成です」
そして、雄英からはA組担任の相澤が、姫鷹の提案に賛成をと立ち上がった。確かに守られる生徒ではあるが、彼らヒーロー科は、プロヒーローを目指し日々訓練してきた者達。命の危険は承知の上で在籍しているならば、この事件もヒーローとして参加するべきだと。
「聖愛も、賛成させていただきます……今はプロヒーローが戻って来たとは言え人手不足は事実……目の前に起こる事態は、我々で解決すべきかと」
聖愛の引率、黒薬先生も姫鷹の提案に賛成の意を示した。これで合宿参加の四校の内、三校がこの事件に当たると賛成多数を取った。
その時であった━━。
ギュイ!!ギュイ!!ギュイ!!ギュイ!!
『広域ヴィラン被害発生、広域ヴィラン被害発生、直ちに最寄りの避難所へ避難してください』
この場に召集された生徒から先生……いや!合宿に参加した者達全てのスマホから『ヴィラン警報』が鳴り響いた。