【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
現れた蒼き巨人が、御殿場の街に着地するや凄まじい土煙が立ち上がり、地面が地震の様に揺れた。シンリンカムイも近場のビルの上に着地しながら、その揺れに足を取られかけるも耐えて、着地した巨人を見上げる。
「Mt.レディ!?い、いや違う……何が起こった!!」
理解が追いつかない事態が、シンリンカムイの見上げた先で起こっている。
凍りついて動けなくなったMt.レディの頭部を、緑谷がぶっこ抜いた。そうして、今自らが抱き上げてぐったりしている首無しの遺体とは別に、目の前でMt.レディに似た巨人が、不可視の巨人と相対している姿!
彼女と同じヒーロースーツの姿に似てはいるが、黒いラインが入り、男らしい胸筋のラインも浮かび、なにより顔はさながら大仏を思わせる様に表情は固定されていた。
『シェアア!』
その蒼と銀に黒のラインが入った巨人が、声を張り上げ、不可視の巨人に向け走りだす!それに呼応するかの様に、巨人もまた浮遊しながら迎え撃つ!
素早い左の回し蹴りを放つ蒼銀の巨人、それを防御した不可視の巨人へ、左足が地面に着くやさらに右の回し蹴りを素早く放てば、それが命中し不可視の巨人は建物を巻き込み倒れ伏した。
『デェエアア!!』
雄叫びをあげて、馬乗りになり顔面の紅く妖しく光る三つ目がある場所にマウントパンチをお見舞いする蒼銀の巨人!しかし不可視の巨人が跳ね上げて巴投げをされたかの様に蒼銀の巨人は宙を舞い、背中から地面に叩きつけられた。
即座に立ち上がった蒼銀の巨人は、不可視の巨人に構えを取れば、不可視の巨人は見上げていたシンリンカムイが目視できる程の冷気と雹の風を蒼銀の巨人へ放つ!
蒼銀の巨人は、その冷気の風を側転、さらにバク転で回避していき、周辺の建造物は冷気に晒されて凍結していく中、見事に避けきった!
『ちょっと!?何がどうなってるの!!私こんなアクロバットな動きできないわよ!?ていうか、ここどこなのよ!?』
Mt.レディは目の前で目まぐるしく変わる景色と、意識が混在して自由に動けないどころか、明らかに自分ができない動きで、巨人と戦っている事に驚愕した。そもそも、ここはどこなんだと辺りを見回せば、紫色の禍々しい空間に立っていて気味な悪さに叫んだ。
『すいません、Mt.レディ……いきなりあんな事して』
『うわぁあ!?びっくりした!!って、緑谷くん!?』
そんな禍々しい空間からぬるりと、いつの間にか現れた緑谷にMt.レディは飛び跳ねる。緑谷は、申し訳無さそうな顔でMt.レディに謝ると、とりあえず見知った顔が居て安堵したらしい彼女は、尋ねた。
『ねぇ?ここはどこなの、私たしか氷付けにされかけて……貴方が首をその…‥引っこ抜いたのよね?』
『はい……えーっと、少し短慮でした、その……簡単にいいますと、今僕は貴女の力を使って僕が戦ってるんです』
『私の力って……』
『正しく言ったらAFOの力というか……それでMt.レディの個性を使っているというか……』
緑谷の説明に、Mt.レディも即座に理解した。あのAFOとの戦いで、彼女もまた中心の戦力として戦っていた一人であり、緑谷にAFO因子が流れている事を報されていた一人でもあった。
『成る程……たしか個性の武器化?かしら、まさか私が体験する羽目になるとはね……』
引き抜いた脊髄の持ち主の個性を武器化する力……AFO因子が為せる力をまさか、自分が体験するとは思わなかったと語る彼女に、緑谷は弁明を続ける。
『はい、けど決して……Mt.レディ、貴方を弱く見てこんな事をしたわけではありません……ただ、目の前に居るのは確実にAFOの残した何か、それが相手である以上僕が、どうにかしなければならないんです』
この手を切った理由は、決して貴女を侮っていたからではないと。目の前に居る化け物は、AFOに関する何かである、だから自分が対処しなければと身体が動いた事に、Mt.レディはインナースペースで腕組みしながら口をへの字にして、頭を下げる緑谷に言う。
『まぁ、緑谷くんの気持ちも分かるわ……生い立ちとかもキミが雄英出てから捜索に加わってた時に聞かされたから……けど、また一人で背負おうとしてるわね?』
『それは……』
『とりあえず、ここを切り抜けたらしっかり雄英の先生方々や、場合によっては公安にも話をしなさい?わかった?』
Mt.レディは緑谷の行動や弁明に理解を示した。しかし、また大戦の前の様に一人で何もかも背負う気配を察して、先達の立場で嗜めた。またこの子は、一人で責任を負おうとしているなと……ある程度関わりがあった彼女からしても、緑谷出久の人となりは分かっていた。
『分かりました……』
『よろしい、それで……どうするあの巨人?倒せる?』
現状は理解し、事後の報告もするよう促されて協力を得れた緑谷。そうして共有した眼前の敵を前に、倒せるのかと言われて緑谷は腕を組みながら答えた。
『……倒せはしますけど』
『何かあるの?』
『いや、Mt.レディ的にぶっこ抜きで倒すのは……ダメでしょ?』
『あー……ダメね!!やめてよ本当に!私そんなスプラッタな勝ち方したら築き上げたイメージ崩れるから!』
そう、倒せるのだ。今目の前の巨人は、何ら障害もなく倒せる!今現在、Mt.レディの個性を使い、融合しつつ巨大化した緑谷は、無論自身の個性『脊髄ぶっこ抜き』は使える。
イーヴルヒーロー『イズク』ならば、この勝ち方で問題は無い。
しかし……今ここにいるのは『新しい形態に変身したMt.レディ』としか、避難民には見えないだろう。先程脊髄ぶっこ抜かれたのも見られてるかもしれないが……まぁそれは仕方ないとして。
ただ勝てばいいわけではない、出来るだけ『Mt.レディらしい勝ち方』で、あの巨人を倒さねばと考える緑谷は……ふと思いつく。
『燃え滓でも残っていれば……』
『何?どうしたの?』
呟く緑谷に、Mt.レディから尋ねられるが、返事をせず緑谷は自らの両手を見た。
AFOとの戦いで……OFAはAFOと共に"消え去った"だから……もうこの身体に個性は残っていない。
だがしかし……此度のAFOとの繋がりが、未だに残っている感覚や現象が自らに起きているならば、あり得ない話ではない。
緑谷は、両手に意識を集中させた。
それに応えるように、左の袖から這い出てきた蠢く触手……それが形作る扇型の装置……。
『ダークイーヴルライザー』
かつて緑谷が使っていた、インナースペース内で顕現する変身アイテムは、まるで霞の様に形は不安定で、握りしめたら霧散するように頼りない虚像となって現れた。
そして……右手にも靄かかったメダルが2枚……描かれた横顔も靄に隠れて分からないが……恐らく爆豪勝己と轟焦凍だった。
緑谷は、そのメダルを三つある挿入口の二つに入れて、ライザーを展開し読み取っていく。電池切れ手前の、力無いアナウンスに歪んだ音が響き渡り、弱々しい光が灯る。
『……まだ少しあって助かったよ』
緑谷は、そう呟いて親指のスイッチを押し込んだ。
スイッチを押し込んだと同時に、蒼銀の巨人の目が輝いた。
「今度は一体何を……」
ビルの屋上より動向を見ていたシンリンカムイは、また何が始まるのかと、頭部を失ったMt.レディの亡骸を横たわらせ身構えた。
蒼銀の巨人は、両手をクロスさせて身体から蒼き光を放つや、そのまま両手をゆっくり広げる。胸元に溜まった光は、そのまま頭上に登り、右手を掲げてその光を腕に纏わせ……。
『デェェアァアアアアーーーー!』
雄叫びをあげて右腕を肘から指先まで立てて、不可視の巨人に向けた瞬間。その腕から帯状の光線が照射された!!
「ビーム撃ったぁああああ!?」
シンリンカムイはあまりのぶっ飛んだ現象に叫んだ。あれが多分、Mt.レディの成り変わりだとして、彼女はそんな個性を持ち得ないのに、ビームを撃ったのだ。
光線が命中した不可視の巨人は、エネルギーに反応したのか姿を現し、そしてもがき苦しみながらも逃げる事叶わず……その肉体はみるみると紅色の結晶に姿を変えて、動きは止まりやがて……崩壊していった。
不可視の巨人は倒れ、蒼銀の巨人がただその姿を見つめていると……やがて光の粒が身体から湧き出て来て、蒼銀の巨人もゆっくり光に包まれて崩壊して行った。
そして、その崩れ行く光の一つが……シンリンカムイの元へ向かってくるや、思わずシンリンカムイは躍び跳ねて回避して、光はMt.レディの亡骸を包み込んだ。
「あててて、酷い目にあったわ」
「岳山!?」
頭部をを失っていた骸から、まるで最初から抜かれていないとばかりに、Mt.レディはむくりと起き上がり首筋をなでながらそう言った。
「お、お前無事なのか?首引っこ抜かれてたろ?」
「ああ、先輩……まぁ何とか無事ですよ、戻せるのは本当だったなんて……」
「そ、そうか……と言うかその緑谷くんはどこだ?」
「え?居ないの?さっきまで私と同化してたからここに居るものかと……」
同化だのなんだの、それは兎も角、当の緑谷出久はどこに行ったと二人は辺りを見回した。しかし、彼の姿はどこにも見当たらなかった。
そんな緑谷出久は、どこに消えたかと言うと……。
「とりあえず……イメ損にはならなかったと思うけど、これでいいかな……」
先程まで、自らが変身していた蒼銀の巨人の立っていた場所、その道路に降り立っていた。シンリンカムイとMt.レディの居るビル屋上からでは、少し見つけるのに難儀する場所より、緑谷は二人が居るビルを見上げながら、スマホを取り出した。
そのまま電話帳アプリを開き、連絡が取れそうな相手に電話をかけてみて、コール音は一つ目で繋がった。
「もしもし、かっちゃん?僕だけど」
『出久か?化け物達なら動きが止まって消え始めた』
電話したのは爆豪だった、そして開口一番で聞きたい情報を即座に答えた彼に、緑谷は安堵の息が漏れる。
「よかった……御殿場で本体らしき化け物を討伐したよ、とりあえずこれで一息つけそうだ」
『さっさと帰って来い、テメェ居ないと説明も話も進まねぇ』
「了解……なんか、どっと疲れたよ」
通話を切り、緑谷はスマホをしまいながら道路を歩き出す。
たった一日で、色々ありすぎたなと緑谷は疲労感ため息を吐きながら、合宿会場へ戻る事にした。