【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「文化祭でもありましたが……食べ物の屋台が多いですね……お二人は祭りの屋台ではよく何を食べられるのですか?」
祭りの会場は、雄英近くにある神社で地元の自治会が執り行っているらしい。3人が屋台の通りを歩き、色々あるなぁと八百万が新鮮な反応を見せる。
そんな八百万からの質問は、祭りの屋台で食べる屋台の食べ物は何か?であった。
「そうやなぁ、うちはやっぱり甘いものかなぁ、チョコバナナにいちご飴、綿飴にかき氷やろ?」
麗日が提示する夏祭りらしい食べ物達……それに対して緑谷はと言うと。
「フランクフルト」
ズバッ!と即答した。フランクフルトと、それを聞いた二人は目を見開いた。
「フランクフルトって……あのよくある?」
「文化祭でもありましたけど、何か違うのですか?」
そこまで言い切る緑谷に、麗日もちょっと首を傾げた。焼きそばにたこ焼き、少し変わり種なら箸巻きなんてあるだろうなかで、サービスエリアやコンビニにもあるフランクフルトと言うチョイスに、八百万は何故?と緑谷に尋ねた。
「僕の好きなヒーローが食べてたから、見かけたら一本は必ず食べるかな……正直に言えば二十本くらい食べたくなる」
「二十本!?それだけでお祭り終わらん!?」
まだたこ焼きとか焼きそばあるのに、フランクフルトで祭りのグルメ終わらせる気なのかと、麗日は流石にツッコミを入れた。
「あぁでも、大戦の時にひたすら食べて創造してましたから、それくらい普通にお腹に入りそうかもしれません」
「八百万さん、普段から個性もあって食べるもんね?」
「個性伸ばしの時も食べながら創造して……私食べてばかりですわ」
だが八百万は、それくらい平らげれるかなと緑谷に同感したのだった。彼女の個性『創造』は自らの脂質が必要となり、エネルギー消費が激しく、AFOとの戦いでは天空の城の内部で補強資材やパーツを、ランチラッシュの料理を食べながらひたすら作り上げていたのだ。
ひたすら食べてばかりだったような……と、それど個性が伸びているので仕方ないが思い返すとシュールだったので、八百万は苦笑した。
「お、お二人とも早速定番があるよ」
そんな談笑をしながら歩けば、祭りの屋台の定番の一つを見かけ指差した。丸いくぼみに生地が流されて焼き音が鳴り響く。屋台にはタコのマークとなれば、ここで売っているのはたこ焼きであった。
「たこ焼き……確か切島さんがインターンに行かれていたファットガムさんがよく食べてる物ですよね?」
「八百万さん、たこ焼きも食べた事は……」
「無いですね」
八百万はたこ焼きを知らない、寮の時も確か鍋を食べるとなって『なんでも入れていい』となって紅茶を入れようとした事があったが、本当に屋台の食事を知らないのを、緑谷も麗日も実感させられた。
「じゃあせっかくだから一つ買おうか……ってこれはまた、味が色々あるな」
なら今日食べて味を知ってもらおうと、緑谷は財布を取り出して屋台の前に陣取り、ふとメニューに悩んだ。最近のたこ焼きはバリエーション豊富だ、それこそオーソドックスなソースのみ、マヨネーズありから、明太マヨにネギポン酢なんてこの屋台は出していた。
「二人とも気になるのある?」
「そうやね、ネギポン酢食べたことないなぁ」
「初めてですし普通のを食べてみたいですわ」
二人のリクエストを聞いてから、緑谷はその二つを注文して紙幣を渡した。タイミングが良かったらしい焼き立てをそのまま舟に入れて、ソースとネギポン酢のたこ焼き二つを店員は緑谷に渡す。
「熱いから気をつけてー」
「ありがとう出久くん」
「では、失礼して……」
それぞれのたこ焼きを緑谷は渡し、二人は割り箸で掴み息を吹きかけ冷ましながら、八百万は早速口に入れた。
「あふっ!ほふっ!?」
「あ!?一気に食べた!」
「出来立ては少しずつ噛まなそうなるよ!」
一玉一気に口に入れてしまったのを見て、先に言うべきだったと緑谷は焦り、麗日も大丈夫かと様子を見た。しかし戻すのは淑女としてまずいと、必死に噛んで涙目になりながら飲み込んだ八百万は……。
「す、少し慌ててしまいました……けど美味しいですわ、外はサクリとして中はトロトロで、ソースの甘辛さも食べた事ない味でした」
どうやら好評は得れたらしい、次は同じ轍を踏まないようにと冷ましながらたこ焼きを食べる八百万に、緑谷も麗日も笑顔が自然に浮かんだ。
「好評で良かったよ……しかし、今聞いた感じ余程美味しいのかな?もう一つ買っとこうか」
八百万のレポからして、美味しいたこ焼きの条件を満たしているようだ。祭りの屋台はピンキリで、少々よろしくない屋台もあるが、このたこ焼き屋は当たりかなと、緑谷はもう一つ買おうかと並び直そうとした。
「出久くん、ほら」
「え?」
が、ここに来て麗日、箸で摘んだネギポン酢たこ焼きを緑谷の口元に差し出した……。
これは、これは!!
で、伝説の!?『あーん』か!!
青天の霹靂の中で……緑谷は真顔となりながら、さながらくるみ割り人形の如くキリキリと口を開けた。
「あ、あー……ん」
すぽりと、ネギポン酢たこ焼きが、口の中に入れられて、口を閉じて箸が抜かれる。程よいぬくさと、ネギの繊維を断ちながら生地と凧が混ざり合うと酸味と出汁の塩気が混ざり合うなんとも美味が舌に広がる。
さらにこのあーんだけで、5割は美味さがプルスウルトラしていると、視線の先で恥ずかしそうにする麗日に、緑谷は赤面した。
「あの、出久さん」
と、そうしたら彼女も続いてきた、八百万も恥ずかしそうにソースたこ焼きを口元に近づけてきた。
だったらもう、親鳥から餌を与えられた雛のように、緑谷は八百万のあーんも受け止めてたこ焼きを口の中に収めた。
緑谷出久は理解した……。
僕、今日多分死ぬ日かなと。
峰田くんあたりが目撃してもぎもぎ口に詰めてくるかもしれないが、その時は甘んじてその罰と死を受けようと、緑谷はこの一時の幸せを噛み締めるのだった。
お祭り屋台めぐりはまだまだ始まったばかり、3人は花火の時間まで屋台の通りを歩いて色々見て周り、そして買い食いに勤しんだ。
「あ、大判焼きだ」
「え?今川焼きやないん?」
「三重だとそう呼ぶんだ」
「え?ベイクドモチョチョと聞きましたが?」
「「それ誰から聞いた(の)!?」」
こちらでは『大判焼き』の名前である、円形の記事にあんこやカスタード、チョコレートが入った菓子を、麗日は『今川焼き』と呼称したので地域差かなと考えると、八百万から全く知らない呼称が出てどこから出てきたと驚き。
「オールマイトの人形カステラ!よくできてるなぁ……エンデヴァーにホークスまである!」
「あはは相変わらずやね出久くん」
「色々なヒーローの形……見てるだけでも面白いですわね」
版権とかどうなってるのやら、オールマイトやエンデヴァーのベビーカステラを見つけてはしゃぐ緑谷に、相変わらずヒーロー好きだと二人は笑い。
「い、出久さん大丈夫ですか?」
「……とまぁ、しっかり押さえないと吹き出すから気をつけて、百さん……あの店主振ったやつ渡しやがったな」
夏といったらラムネと買って、開け方講座を八百万に実演したらめちゃくちゃ吹き出して、多分女の子侍らしてたから振ったやつ渡したなと少し腹を立てたり。
「やりましたわ!綺麗にできました!」
「上手いなぁ八百万さん……出久くんは?」
「中々難しいけど、指先の訓練にいいかも……あっ、折れた!?」
見た事あるが3人ともやった事ないのでと、型抜き菓子に挑戦して八百万が見事綺麗に抜いて祭りで使える引換券をもらう中、麗日と緑谷は苦戦して割ってしまったり……緑谷は小学、中学とできなかった『友人や恋人との夏祭り』を取り戻すように楽しむのだった。
そして、あっという間に……花火の時間が始まった。人々が空を見上げて、大輪の火の花が、遠雷のように音を響かせてさいては消えていく。
「綺麗ですわね……」
「そうやねぇ……」
月並みで、ありきたりな感想。だけどそんな花火が上がるのも、少し前の崩壊したままの日本なら有り得ない景色だろう。
はるか昔、江戸時代は1732年の享保の飢饉……飢えに更にはコレラが蔓延し、多くの死者が出た慰霊の為に花火を打ち上げた話も聞く。崩壊により、無惨にも死んでいった魂を慰める為……そして復興の狼煙とばかりに喧しく、盛大に次々と花火は打ち上がる。
どれだけの時間、打ち上がっただろうか……それでも楽しい時間は、運営のお開きのアナウンスにより夏祭りは終わった。
「楽しかったなぁ……こんな事久々だよ」
「そうやね……ほんまに」
「去年は花火を見る余裕もない程多忙でしたから」
帰りの夜道を三人は歩いていた、祭りの後の余韻とでもいうか、帰りの足取りが散り散りになり、屋台も次々撤収を始めて物悲しい。短い夏休みの中の、ささやかな一時は忘れられない一日になったと、緑谷は満足だった。
「夜道だし、家まで着いていくよ」
さて、帰りの夜道はなにがあってもおかしくないのでと、緑谷は2人を送る事にした。今は寮生活から自宅登校も解禁されたから、2人ともどうかは知らないが、送って帰るくらい個性で簡単なので如何様にでも対応できると、緑谷は2人に尋ねた。
緑谷の言葉に……2人は少し赤らみながら、なにやら示し合わせたように、緑谷の左右の手をそれぞれ1人ずつ掴んだ。
「えっ……あ、あの?お二人とも?」
「出久くん、うち……寮から一人暮らしになったんよ」
「私も、今日は麗日さんの家でお泊り会とお伝えしてまして……」
2人から、まるで、この日を前から、決めていたとばかりに……そんな台詞が飛んできた。緑谷の心臓が、一際強く跳ね上がる……。
いいのか、いや……流石に……でも、この台詞は"そういう意味"と捉える他なく……2人の手が、緑谷の指にゆっくり絡まっては握り、話を繰り返す。
僕たちはまだ、学生だし、何を今更お前はと、緑谷の脳内に言葉が飛び交う。そして、待ったの言葉を緑谷は吐こうとした。
「……今日……うち、家に親が居ないんだ……」
待ったの言葉は、欲の言葉に堰き止められた。