【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
こうして緑谷出久は、この日の約束を境に反撃をしなくなった。今までの罪を償う為にと、黙して勉学に励みただ日常を過ごし受験に備えた。
周囲はその気味悪さに最初は警戒した、やがてやり返しに来るかもしれないと恐怖があったから。しかし……1ヶ月を過ぎた頃にある噂が流れ出す。
『緑谷出久は個性を失った』
『ヒーローたちに封印を条件として釈放された』
と……。
今の今までやられて来た者達にとっては、こんな好都合は無い。やがて、緑谷出久へ、試練のような仕返しが始まったのであった。
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「…………やってくれるねぇ」
ある朝の事……緑谷出久は下駄箱を開けたら、血に染まっていた。見れば鶏の首が詰められて異臭を放っている。よくまぁ用意したなぁと、それを投げ捨てて、血に染まった上履きを履いて教室に向かった。
教室に入れば、ああ視線と笑顔の卑しい事、ようやく積年の恨みが晴らせるとばかりに、机には花瓶と花、さらに遺影まで飾ってくれていた。
まぁ、これくらいされるだろうなと、思いつつ、花瓶も遺影も片付けてから着席する。この程度で動じるかとばかりに、そのまま緑谷は1日を終えた。
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あれだけされてもやり返してこないとなれば、さらに報復はエスカレートしていく。教科書隠しは教科書燃やしに、紙屑投げは軟式野球ボールへ、遺影からやがて席自体を投げ捨てられた。
それでも範疇だと、すでに予備の教科書を用意し、軟式程度でへこたれたりなどせず、なんなら床で授業を受けてやった。担任すら黙認するいじめに……出久はひたすら耐えた。全ては、オールマイトとの約束の為に。
そして五ヶ月が経過した頃……緑谷に最大の試練が訪れるーー。
「ずいぶん前時代的だね……?」
「んな軽口叩けるんだな、ええ?緑谷ぁ!」
クラスメイトの男子全員に、校舎裏に連れられて囲まれた出久は、溜め息混じりにそう呟いた。
「年貢の納めどきだぜデクよぉ、散々俺たちを好きにしてくれたじゃん?」
「先生も誰もお前を庇わねぇ、今までの分好きにやらせて貰うぜぇ!!」
リンチが始まった……しかも、個性で誰がやったか分からない様に、素手で、バットで、出久はクラスメイト男子から気の済むまで殴られ、蹴られた。
それでも、一切出久はやり返さなかった。ひたすらに耐えて耐えて、耐えて……気を失っても立ち上がり、睨みつけて、また殴られては意識を手放し……目覚めた時には夜になっていた。
「はぁ……鍛えといて……よかった……そしてありがとう母さん、煮干しの味噌汁のおかげだよ」
あれだけやられて痛みと熱とで済んでいる、むしろ骨や歯の一つあいつらは折れてないなと笑みをこぼし、血濡れた顔をハンカチで拭いながら空を見上げた。
すると……こちらを見下ろす奴が現れた。
「あれ、かっちゃん……今来たの?」
爆豪勝己が、不機嫌に緑谷を見下ろしていた。そう言えばかっちゃん、リンチの時に居なかったなと思いながら起き上がり、緑谷は笑って言ってやった。
「殴りに来たの?やんなよ、もしかしたら骨の一つくらい折れるかもよ?」
そう言った緑谷に、爆豪は舌打ちして言った。
「傷だらけのテメェ殴って何が楽しいんだよああ?テメェ……なんでやり返さなかったんだ……いつもみてぇな愉快なオブジェ作りゃお終いだろうが……」
やり返さない理由……それを聞かれた緑谷は……ニヤッと笑って茶化すように言った。
「実はさ……オールマイトが人質に取られてね、僕が入試までいじめに耐えないと殺されちゃうんだよね」
「馬鹿が…ったく、聞くんじゃあ無かったぜクソヴィランがよぉ……」
事実ではあるのだが、馬鹿らしいと爆豪は背を向けて歩き出した。緑谷はそんな背中に語りかけた。
「かっちゃんも律儀だね!囲って僕をなぶれば気が晴れたろうに!」
その言葉に首だけを向けて、また舌打ちを一つして爆豪は言い放つ。
「るせぇ、俺はあいつらみてぇな没個性とは違うんだよ、本気のクソヴィランのテメェを1人で殴らねぇと、ただの弱虫だろうが」
それだけを言い残して、今度は止まらず爆豪は立ち去った。その背中を見送り口の中に溜まった血と唾を吐いて、緑谷は呟いた。
「やっぱり強いなぁ、かっちゃんは……」
ボロクズにされた制服やカバンを抱えて、ふらつきながら緑谷は歩く。母さんと父さんへの言い訳どうしようかなと考えながら、緑谷は夜の下校路を歩きだした。