【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「どんなもんっすか!中々に良いタイムなんじゃあなーい!」
「本当に実働で役に立ってるのが癇に障ります……」
二年八百万&耳郎と一年晴日&紙式のBチーム、救出訓練無事完了。耳郎の捜索を主軸に、八百万と紙式が移動及びダミーの輸送、そして晴日が単独で次々スピード重視で救助にあたり中々の連携を見せた!
理論値が飯田のAチームならば、Bチームは基準点として、このタイムを目指しても良いだろうとは思えるくらいに連携はできていた。
良い仕事した!と嬉々として帰還した晴日の横で、実際活躍したし見事に救助スピードの底上げを担っていたので、だからこそ苛立つと、紙式は相変わらず騒がしいと愚痴をこぼした。
「どっすかぁ、先輩方?惚れました?惚れました?今日とか遊びに行きませんか?」
「い、いえ……結構です」
「押しが強いなこの子……」
そして諦め悪いのか、悪気ない雰囲気で晴日は八百万と耳郎を今日の放課後に誘いをかける様子に……この二人は穏やかではなかった。
「なぁ峰田ぁ……あの一年坊主……調子乗ってね?」
「どうするよ上鳴ぃ?おいら久々に峰田ビーズ作っちまうよ、1.8mくらいのやつ」
「やっちゃう?"ヒーロー業界一最悪最低な技(ソーリー・バービー)"やっちゃう?」
いかにもなダメ先輩ムーブで、遠慮なしにナンパする晴日に苛立ち見せるのは、上鳴電気と峰田実だった。上鳴は自分も過去、様々な生徒に声かけていた前科がある中で立派なブーメランになっているのではあるが、今は授業中だぞ真面目にやれやと、怒りを募らせる。
が、この晴日を止めたのは、違う人間だった。晴日の背中をちょんちょんと突く者が居た。
「もう、何すかぁ?今俺二人をナンパ……して……」
ちょっと邪魔されて、萎えさせてくる邪魔者は誰よ?と晴日が振り返ったその先を見て、目を見開くや一気に冷や汗がぶわりと身体中から湧き上がって凍りついた。
「……殺すぞ(今は授業中だからやめようね、晴日くん)」
緑谷出久だった!!
今現在、世界中のヴィランが最も恐れを抱くヒーロー!『恐怖の象徴』!!ヴィランっぽいヒーローランキング1位であり、死柄木弔を倒した英雄が!真顔で見上げてその一言を発しただけで、さっきまで和やかムードだった待機場に一気に戦慄が走る!!
現に、緑谷は晴日が彼女の八百万に粉をかけやがったので、プッツン来ていたのだ!大人気ないと言われたらそれまでだが、緑谷出久も男の子でティーンエイジャー!そりゃ怒る!ふざけてんのかってなる!!
だから、殺気を滲ませて本音と建前が逆になって晴日にそう言えば、その殺気に一年生の殆どが戦慄するし、クラスメイト達は『落ち着け緑谷!?』と、止めるための身構えをするくらい気を張り詰める事態になった。
「す、すいませんでしたぁあ!!緑谷先輩!!マジ今授業中っすよね!?そんな場合じゃないっすよね!!申し訳ありませんでしたぁあ!!」
「わ、悪気はなかったんです!!この方ちょっとこういう空気読めない方で!!よく言って聞かせますから!!命だけは勘弁願いますでしょうかぁああ!!」
即座に八百万と耳郎から離れて90度の最敬礼まで頭を下げて謝罪する晴日、その殺気に思わずさっきまで苛立っていた相手なのに、自分もチームを組んだ人間である以上連帯責任を課せられると感じた紙式も、庇う様に割って入り無礼を働いた晴日によく言って教育しますからと頭を下げた。
「授業中だから……ね?」
「は、はい!そのとおりでございます!」
「おっしゃる通りです!気をつけます!!」
「緑谷、その辺で……」
二人並んで頭を下げるのを見下ろす緑谷に、障子もちゃらけた授業態度の晴日が気に入らなかったのは解るが、そこまでで勘弁してやれと肩をポンポンと叩いて、緑谷は無言で振り返って、次は自分たちCチームの番なので待機場を出る自動ドアに向かった。
「いくよ、二人とも」
「は、はい……」
「……はい」
同じチームとなった一年の斥野、光の二人も返事がおぼつかない位には気圧され、緑谷の後ろについて行き障子も含め待機場から出ていって、自動ドアが閉まったところで、一年A組は詰まる息を皆吐き出し、頭を下げていた晴日と紙式は足の力が抜けて、その場にへたり込んでしまった。
「怖ぇよ……マジ怖ぇよ緑谷パイセン!!?殺されるかと思った!!後ろにオーラ出てたもん!!何か紫色の禍々しいオーラ出てたもん!!」
「授業中にナンパなんてしたら不真面目判定で怒りもするでしょう!?本当に時と場合考えなさいな……生きた心地がしなかった……あれが、あれが恐怖の象徴……!!」
全くもって異質な、同じ舞台に居ないと理解させられるその殺気に晴日はさっきまでの陽気は掻き消され、紙式も震えが止まらなかった。
「おい大丈夫かぁ?流石にそりゃ授業中にナンパなんてしたら、うちの総大将怒んべ?」
「ごめんね?緑谷ってそのあたり凄い真面目だからさ……うちらからもちょっと言っとくから、立てる?」
上鳴はさっきまで晴日に苛立ちを向けていたが、突然緑谷が怒りと殺気を剥き出しにした事態で、彼が立てなくなったのを心配になり、肩を貸した。巻き込まれた形になった紙式にも、耳郎がこっちも悪かったから緑谷に指摘しておくと紙式をゆっくり立たせながら謝るのだった。
「けどどうしちまったんだろうな、ここまで緑谷が怒ること、二人はやったか?」
緑谷の親友である峰田も、唐突に怒った緑谷に、何があった?となる程には今回掴みどころが無かった怒り様だった。
少なくとも普段の緑谷ならば、晴日のナンパを嗜めるためにもっと理性的な話で彼を諭すのが普段の彼で、まさか開口一番に『殺すぞ』なんてまず言わない。
「まぁ、ナンパ?なのかなぁ?訓練中にチャラつくなってか?」
「マジ反省してます……すいません……」
思い返しても、やはり晴日のくどいナンパしか思い当たらないなと晴日を支える上鳴が呟き、晴日は涙目で謝罪を呟いた。
一方で……先程の怒り様の理由を理解した者はその場に居た。
『……嫉妬してくれた、のでしょうか?緑谷さん』
八百万百である、緑谷と恋仲となり、夏休みの間に進展した彼女は、晴日が言い寄る様に気を悪くしたのかと、緑谷がそんな感情を剥き出しにした様があまりに新鮮だったので、愛おしさと人間らしさに少し笑むのであった。
「あー……やらかした、何やってんだか本当に、切り替えないと」
「珍しいな、緑谷がああも怒るのは……」
「まぁ流石に、ちょっと晴日くんが目に余るなって……けどあれはダメだ、ちゃんと謝らないと」
馬鹿なことをしたな、緑谷出久と、緑谷は自ら自戒しながら、このメンタルで訓練に入ったらやらかすと、切り替える様に自らへ言い聞かせた。
障子からはあくまで、晴日の授業態度に腹を立てたと思われているが実際違う。浅ましい嫉妬だ……恋仲となった八百万に、言い寄ってきたから腹が立ってあんな、年下のヤンキーの調子に乗った様を年齢だけで押さえつける馬鹿な先輩ムーブをしてしまったのだ。
そして、こんな事実を言えないので、あくまで授業態度の不真面目さから怒った事にしている自らの浅ましさにより、自己嫌悪に陥った。
「とりあえずは訓練だ、位置に着こう緑谷」
「了解……」
謝るのは後、訓練に集中だと障子に言われ、緑谷は一年の斥野、光と共にスタート地点に待機した。
やがて……全員が準備ができたと見るや、ブザーが鳴り響き、緑谷達の訓練は始まった。