【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「助けてくれぇい!交代を要求するぅうう!!」
さっきまで『先輩だろうが勝ってやる!』と、やる気満々だった晴日軽二郎くんであったが……その対戦相手が緑谷出久と決まった瞬間、即座に交代を要求して入り口ゲートを叩いた。
無論それでゲートが開く訳もなく、ただ金属音のみが響く最中……。
「えっ?」
晴日は、突如自分の周辺が暗くなったのを感じた。いや違う!何かが背後から迫って、影が出来ているんだと、反射的に思い切り左へ跳躍した瞬間!
「ぎゃあああああーー!?」
壁に激突してきたのは、グラウンドβの障害物として設置されている乗用車!!それがゲートにぶつかり!轟音と共にひしゃげて爆発して火柱を上げた!!
尻餅をついて叫んだ晴日、そして……彼は聞いた。
「いやぁ、懐かしいなぁ……オールマイトとの試験の時はいきなりメインロードが抉れて、足がすくんだなぁ……」
飄々と、懐かしい経験を語りながら……土煙の中歩いてくる人影、それが近づく度に分かってしまう!獰猛にも程がある殺気!!
嫌でも理解してしまう!!『勝てない』と!!『戦うな!逃げろ!!』と、晴日の本能がそう叫ぶ!!
「折角だから、あの時オールマイトが言った言葉を……一年生!キミにも言おうかな!!」
これが……死柄木弔と、AFOを倒した男!!
「街への被害など糞食らえだ……訓練なんて甘く見ると、痛い目見るぞ?」
そして……世界中の『悪(ヴィラン)』が恐れる『恐怖の象徴』!!
「僕は、ヴィランだ……さぁ、ヒーロー!!無力な人達を守る為に……命を賭けてかかって来い!!」
『悪の英雄(イーヴルヒーロー)』!!
イズク!!
ヒーローらしからぬ、瞳孔がガン開きになり赤く染まった瞳で!晴日軽二郎の前に彼は立ち塞がった!!
「あ、あぁあ!?うわぁああああーーー!!」
その名乗りを上げて、晴日が次に起こした行動は……!
『逃走』!!
ヒーローとして立ち向かう事すらも!市民を守る為に時間稼ぎで戦うという選択すらも捨てて、晴日は立ち上がり転けそうになりながらも、緑谷から逃げ出したのだ!
「どこへ行くのかなぁ?」
「ひぃいいい!?」
ぎゅわん!!と、晴日の前まで一気に回り込み立ち塞がる緑谷。その笑みはあまりにも恐ろしく、晴日は思わず立ち止まってしまう!
「蹴るよ、受けるか……避けなよ?」
「え━━」
そして放たれた告知、呆けた返事をした晴日の右の脇腹むけて、左のミドルキックが放たれる!本能的に、恐怖の中でも晴日はそのミドルキックに"当たったらダメだ"と察知したのか、間に合わないなりに最小の被害で済ませようと、体を捻り頑丈な背筋で防御した。
ミシリ
晴日は聞いた、自分の内側から鳴ったその音を、ああ……これ肋骨イッた感覚と音だと。そして、晴日の高身長な180cm台の鍛えられた肉体が……紙屑の様に吹き飛んで近場のビルの壁を突き抜け破壊したのであった。
「う、嘘だろ……晴日くんが、あんな!簡単に!!」
「少なくとも体重差がある筈なのに、簡単に蹴り飛ばされたぁ!!」
「というか、コンクリ砕けた!?先輩の個性ってパワー系じゃないだろ!あ、いや、力で脊髄抜いてるんだっけ!?」
一年側待機場では、光と具来そして道走がモニター腰に晴日が吹き飛ばされた事に驚き、他一年達も騒然としていた。何しろ晴日は……A組内、一年をまとめて見ても戦闘力は上位である。
そんな彼が即座に逃げ出した挙句、一撃でビルの壁を砕いて突き抜ける威力の蹴りを叩き込まれ吹き飛んだのだから騒然としてもおかしくない。
だが、この少年だけは細目で映像を見ながら当たり前とばかりに語り出す。
「そりゃあそうでしょ、だって緑谷先輩はそもそも肉体が僕らと違うんだから……噂流れてただろ?AFOが改造した脳無の一体、死柄木と同じってさ」
数ヶ月前の避難生活の中で、流れていた噂。緑谷出久はAFOが生んだ『化け物』であり、人間ではないと……それが今目の前で証明していると、語るは斥野力弥であった。
「あの噂本当なのか……じゃあ先輩、AFOに弄られた身体でヒーローやってるのか」
それを聞いた道走が、画面を見つめてそう呟く。斥野はそれを見てニヤリと笑い、次に来るだろう『求めた反応』を待った。
「何か……色々背負ってるんだな先輩、個性といい今の力といい……なるべくしてなったのかな、恐怖の象徴に」
「あ?」
だが、斥野は道走が、求めてない反応をして唸った。
「どうした?斥野?」
「……いいや、何でも?ま、晴日くんが五体満足で帰って来れる様に祈ろうか」
斥野は繕いながら笑みを向けて、建前だけながら晴日の無事を願いこの戦いを観ることにした。
違うだろ、斥野は心中で吐き散らす。この場でいうのは『気持ち悪い』とか『化け物がヒーローやってるのか』とか『どの面下げて雄英に居るんだ』だろうがと。
「……本当、キッショいな」
瓦礫を歩く緑谷先輩を、映像で見ながら、誰にも聞こえない様に斥野は呟いた。
晴日軽二郎は、コンクリの壁に叩きつけられ、絶句した。
先輩……俺を殺す気だと!この訓練にかこつけて自分を亡き者にする気だと!
もしかして、この前の救助訓練で粉かけた先輩のどちらかが、緑谷先輩の女だったのか!?じゃないと直接『殺す』とか言わない筈だ!!
謝ろう!謝って許してもらおう、調子こいてすいませんでしたって!砕けたコンクリの上を歩く音を聞いた晴日は、アドレナリンの生成もあってか肋骨の痛みを感じないまま、人影が近づくのを確認し、即座にその前に走って……。
「すいませんでしたぁ!!!」
土下座した。
「先輩の女と知らなかったんです!許してください!!マヂ調子に乗り━━」
だが、飛んできたのは衝撃だった。側頭部を蹴られ、晴日は横に転がり、涙を流しながら……見下す緑谷の顔を見た。
凄まじい怒りの顔!!怒髪天って多分こんな顔だったかもしれんと、晴日は恐怖に支配されてもはや立ち上がれなかった。
死ぬ!ガチで殺される!!そう思った矢先、緑谷は口を開いた。
「何だよ、そのザマは……それがヒーローか?」
「え……?」
「ヒーローが……ヴィランに土下座して命乞いするのかと聞いているんだ!!」
緑谷の怒声に、晴日ははっとして、涙すらひっこんだ。
「キミの目の前に居るヴィランは、情けも!容赦も無く!!街を破壊し人の命も財産も奪うんだぞ!!それを、ヒーローであるキミが!!無様に頭下げて命乞いして慈悲を貰えると思うのか!!なぁ!!?」
倒れ伏す晴日にズカズカと近づいて、襟首を掴み持ち上げ、しっかりと目を合わせ晴日に緑谷は言い放った。
「立て!!そして戦え!!ヒーローになる為に雄英に来たんだろう!?ならば……逃げるな!!キミが逃げたら、キミに期待して名前を呼ぶ人々を誰が守る!!キミが倒れたら、キミに期待と安心を預ける人々の命が奪われるんだぞ!!ヒーローになりたいなら……恐怖を押し殺し立ち向かって来い!!」
晴日は、理解した。
緑谷先輩が怒る理由……。
さっきの逃走、今の土下座……もうヒーロー失格なんてレベルじゃない。ただの粋がってたチンピラでしかないじゃないかと、晴日は気付く。
晴日軽二郎は……チヤホヤされるからヒーローになろうとした。それもまた良いだろう、同じ理由でヒーローになったプロも探せば居る。
けど、ヒーローとして、当たり前は彼らもやってきている筈だ。無力な人々の為に、その個性で守り、民衆からの賛辞を受ける。
『期待』には『責任』が同じか、それ以上にのしかかるのだから。
「う……あぁあああああああああああ!!」
襟首を掴まれたまま、晴日は叫びを上げて、緑谷出久の顔面を、右拳で殴り抜いた。