【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「危なぁ……けど、首席くんは余裕が無いと見た」
ビルのドミノ倒しから危うく脱出して事なきを得た葉隠、待機場ではヒーローらしからぬ戦いにクラスメイトが一年坊主にブーイングしているが、当事者の彼女はそれを知らず、むしろここまでやって来た斥野に『余裕』が無いと察する。
「……いい事思いついた、まぁ今の私はヴィランなわけだから、これは許されるでしょ?」
ならこちらはさらに揺さぶってやろう、何しろ今回自分は『ヴィラン』なのだからと、ある程度ヒーローらしからぬ、敵役らしい事は許されると見て、葉隠は右手グローブを外しながら姿を消した。
「さぁヒーロー、引っかからず看破できるかな?」
消える直前、それはもう、悪い笑みを彼女が浮かべていたのを、中継カメラは撮影できなかった。
姿を消してしばらく、ビルの倒壊した地点に斥野は降り立ち、辺りを見回した。
「試合終了のブザーは鳴っとらん、つまりまだ倒れたりしては無いという事、どこだ葉隠先輩」
周囲を警戒して歩く斥野……そして、ふと瓦礫の積み重なった場所を目にして。
「え━━」
心臓が一気に締め付けられ、体温が一気に落ちたように、斥野は感じた。何故ならば……瓦礫から出ているグローブが見えたのだ。
それは間違い無く、対戦相手の葉隠先輩のヒーロースーツの一部であるグローブ!そして辺りに墜落している、正八面体のサポートアイテムドローン達!
まさか、いやまさか!?やらかしたのか僕は!!勝利を得るために行なった見境無しのビル倒壊ドミノ倒しに巻き込まれて、葉隠先輩は潰された!?
斥野の脳内に、次々浮かび上がってしまったのは、この後の自らに降りかかる様々な未来!
『訓練中の事故で雄英ヒーロー科生徒死亡』
『ヒーローらしからぬ行い、彼は推薦合格者足り得たのか!?』
『雄英やめろ!!抗議団体に訴訟団体の声が上がる!!』
『斥野力弥に実刑判決!!』
「あぁあ!?嘘だろ!!」
自分の輝かしい未来が、No.1ヒーローになり次代のオールマイトとして君臨するはずの未来が!こんな所で消えていいはずが無い!まだ間に合う、助かりさえすればとそのグローブに走って向かった瞬間!
「馬鹿め!引っかかったなヒーロー!!」
「えっ!?」
機能停止していたドローン達は一斉に動き出し、姿を現した葉隠の手から放たれたビームが、ドローンに乱反射!まさかの奇襲と待ち伏せに斥野は呆気に取られながら、ドローン達が乱反射して作り上げた『レーザーの檻』に捕まってしまったのであった!!
「大成功!触れたら危ないから動かないでね?一年生くん?」
「これは……!だましたのか!?」
まんまと騙され、ビームの檻に囚われた斥野を眺めながら得意げにグローブを拾って胸を張る葉隠。まさかまさかの彼の焦りを利用した手段は正しく、ヒーローを手玉に取る女性ヴィランそのものであった。
「ヒーローだったら流石にこんな事しないけど、今私はヴィラン役だからねー?よく見ないと一年生、それで……降参する?」
ここからは抜け出せまい、降参するかと葉隠に斥野は問われた。だが、斥野の心中は穏やかでなかった。あのレーザーのドローンに加え、ここまで手玉に取られた事から苛立ちと怒りは積もっていた。自分が先にヒーローらしからぬ行いをしておきながら、彼はそれを棚にあげて声を荒げた!
「舐めるなぁ!僕は次代のオールマイトになる人間だ!!この程度でこの僕を捕まえただなんて片腹痛いんだよ!!」
豹変!その変わり様に葉隠は気圧された。それと同時に、一気に盤面は覆る!
「えっ━━」
それは刹那の出来事……。
倒壊したビルの瓦礫、そして斥野を囲んでいたレーザーの檻を作り上げたドローン『ラミエル』達も、何より葉隠自身も……まるで『衝撃波で弾き飛ばされた』かのように吹き飛んだのだ!
そして斥野を中心に、数メートルの円の更地が綺麗に出来上がり……弾き飛ばされた葉隠は何とか受け身を取り着地する!
「今……何かに弾かれた!?」
その中心より、強い足取りで斥野は、葉隠に向かって歩き出して言い放つ。
「ここまでコケにした報いを受けてもらうぞ!ヴィランは倒さないと街の人々は安心━━」
斥野は、この勢いのまま葉隠を倒す名目で嬲ろうとしていた。この僕をここまでコケにした報いをと、試合と授業の枠を超えた私刑に処す気だったが━━。
ビーーー!!
「は?」
「え??」
ブザーが鳴り響き、アナウンスが響き渡った。
『タイムアップ、両者勝利条件未達成の為、引き分けです』
試合時間は、すでに無くなっていたのだった。
「いや〜……最後危うかったなぁ」
「お疲れ葉隠ちゃん、怪我はない?」
「ビルの時ひやっとしたよ、大丈夫?」
試合は終了し、引き分けの結果となり、帰還した葉隠に麗日と耳郎が即座に怪我はないかと心配で駆け寄った。
「大丈夫だよ、けど時間とヴィラン側って立場に救われたなぁ……最後個性で弾かれた瞬間"あ、これ私じゃ勝てない"って感じたもん、末恐ろしい才能を感じたね……もしあの子みたいなヴィランと一対一になったら、仲間が来るまで時間稼ぎかそこまで逃げるしかできないなぁ」
うむうむと、怪我よりもこの試合は『時間と立場に助けられた』と自らを評する葉隠、最後の数秒の反撃から、自分で対処は不可能と感じたとまで、斥野の個性の強さを実感したらしい。
彼がヴィランだったら……最後の数秒でそう思うほど盤面を覆す力を彼は持っていると葉隠は才能を評価するが……。
「けど、性格がなぁ……あれは入学時の爆豪くんに輪をかけて酷いと思ったよ」
「んだと透明女ぁ!?」
最後の反撃の台詞が、明らかに爆豪じみていてドン引きしたなと葉隠が苦笑して爆豪は待てやと声を荒げた。
「こらこら爆豪、そうつっかかるなよ……てか、それマジ葉隠さん?爆豪よりやべーの?」
宥める瀬呂だったが、葉隠が評する話題の首席一年はそこまで性格が終わって入りなのかと尋ねれば、葉隠は右手人差し指を唇辺りに添えながら、上を向いて考えた。今は透明化しているため、瀬呂の想像の身振りではあるが。
「何というか、タイプが違うんだけど……えーっと"今まで失敗も無くクラスで勉強もスポーツも一位で、世界は自分を中心に回ってると思って全てを見下している"って感じかな」
「えらい具体的!?」
「テンプレエリート志向ってやつか!」
大変具体的な評価に、あの短時間でそこまでわかったのかと芦戸は驚き、つまり纏めればエリートの嫌な奴かと切島が当てはめた。
「先生も大変だなぁ、2人目の推定性格爆豪でエリート志向なんだろ?緑谷ぁ、ちょっと今から一年待機場に行って脊髄ぶっこ抜いて立場分からせてやれよ?」
あの下水煮込みな性格が2年連続で雄英に入り、しかも今度は推薦枠で首席なのかとエクトプラズムの心労を心配した峰田が、もう緑谷が脊髄ぶっこ抜いて実力差と立場わからせて首輪つけた方が早いだろと緑谷に冗談めかして言った。
「酷いなぁ峰田くん……それだとまるで僕が恐怖と力で全てを支配するヴィランみたいじゃないか」
「過去は消えんぞ、折寺中の裏番長」
「うぐっ」
無論、そんな事しないよと峰田の冗談に笑う緑谷だったか、何を今更お利口にしてんだと爆豪に釘を刺され、緑谷は仰け反るのだった。
そして……一年側待機場では。
「あ、お疲れ斥野く━━」
「うるさい、話しかけんな」
具来が、戻ってきた斥野を迎えた。しかし即座に黙れと言い、壁際の椅子にどかりと座った。周りのクラスメイト達も……流石にこれ以上斥野に声を掛ける気にはなれなかった。
斥野の行き過ぎた上昇志向も、性格の悪さも新一年A組は流石に数ヶ月ながら理解していた。そして、悔しいし認めたくないが……勉強も実技も一年団トップは彼だった。
だから、少し期待していたのだ。
斥野力弥ならば、もしかしたら2年生に勝てるんじゃあないかと。
先の晴日軽二郎は、緑谷出久にそれはもうあしらわれたが、相手が悪かったんだと流石に同情した。
一年首席の彼ならば、流石に轟焦凍や、爆豪勝己は無理でも……他の二年生なら個性の相性と強さで勝てるのではと、皆微かに希望を持っていた。
だが、結果は葉隠透という戦闘向きでない個性の先輩を相手に、いいようにされてまさかの引き分け……斥野自身も、この試合『勝つべきな組み合わせ』だったと、椅子に座り頭を抱え自責の念に駆られた。
「よりにもよってかよ……!」
これが爆豪先輩や、轟先輩ならまだ、負けても食い下がっていい勝負を見せる自信が彼にはあった、その実力もたしかにあったのだ。
『慢心』
その二文字がこの結果を産んだのだ。
されど、交流戦は次々と進んでいく。