【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
その日の放課後の事であった、流石に怪我もあるのでもう帰って休みなよと緑谷に言われた光は、下駄箱で靴に履き替えて今日の訓練を思い出していた。
緑谷に個性の操作訓練や、応用法、考え方を教わり、自分にはこんな事が出来たのかと新たな個性の使い方が、まだまだではあるが思った様な形で出力出来た事。
そして、秒殺されるかと思った爆豪との訓練で少しはマシな内容にできた事は光の自信となった。
「……No.1か……いやいや、調子乗りすぎだ、積み重ねだよね」
緑谷に言われた『No.1になれる』という言葉を思い返し、気が早いしそれは調子に乗っていると笑いながら光は、自らを諌めた。
そもそも、No.1はなろうと思ってなれるものでも無いだろうし、プロヒーローになって恥ずかしくない実力を身につけなければと光は兜の緒を締める。
「随分と良い気分みたいだね、光くん」
そんな光の背後から、声がかかる。振り返ればそこに、斥野が立っていた。その顔は無表情に近いが、不機嫌さが漂っていたのがもう雰囲気で分かった。
「斥野くん、何か用?」
「いやぁ、随分役者な事今日はしてたなぁって、救助訓練で使えん振りして、戦闘訓練の代わりよう……期末でも手、抜いてたのかなぁってさ?」
光からすれば心外な物言いだった。が……実際期末試験の実技、そして救助訓練で二度斥野とは組んだ光は、救助訓練から今日の戦闘訓練の代わり様に、緑谷先輩からの教えで格段に戦い方や個性の応用を知ったから、変わり様は自分でも大変実感していたので……。
「そうじゃないよ、緑谷先輩があれから色々教えてくれてさ?自分でも驚くくらい出来る事、増えたんだ」
「ほーん……」
「まぁ、まだ全然お粗末だからこれからなんだけど……」
嫌味を含めた物言いに、光は正直に答えた。実際その通りで、色々教わって出来る様になったが、まだお粗末そのものだと。言い返してくる事を望んでいたのか、更に顔を歪めた斥野は言い放つ
「ま、そう言う事にしとくわ……けど勘違いするなよ?キミなんて所詮、雄英卒業生の過去にしがみついて日銭を稼ぐしかない零細ヒーロー止まりにしかならないんだからさ?」
斥野からすればつまらないし、苛立つ返答だった。だから通り過ぎながら、釘を刺しておく事にした。
「間違えてもNo.1になろうとか思い違いせんとき?No.1になれるのはその星の下に生まれた人間だけ、それは僕であり、爆豪先輩であり、轟先輩みたいな才ある人間なんやから……オールマイトもその星の下に生まれて、運命を全うして後進に席渡したんだからさ」
お前はNo.1になれないよと、選ばれた星の下に才能を持ち産まれた人間が、No.1のヒーローになれる資格を持つのだと。それは轟先輩であり、爆豪勝己先輩であり……そして自分なんだと吐いて、斥野は立ち去る。
光は……まぁ才能あるよなー斥野くんは、と呑気に彼の才能は遜色無く本物なのを知っているので何も言い返さなかった。
「うわぁ、あんな事言っちゃうんだ……ドン引きだなぁ」
「あ、緑谷先輩」
その様子を見ていたらしい、背後から出てきた緑谷は、あんな事ガチで言う人居るんだと表情を曇らせながら言った。
「と言うか、言い返さないの?そんな事無いって、No.1になるのは僕だーとかさ?」
さて、ここまでキミは言われたわけだが、言い返してもバチは当たらないし、そうしなかったのかと緑谷は尋ねる。光は遠ざかる斥野の背中を見つめ、腕組み唸り考えて、中々に長い時間悩んだ末に答えを吐き出した。
「才能あるの事実ですからねー……僕はそもそも、手が届く身近な人を必ず助けられるようにまずならないとなので……」
謙虚なのか、自信が無いのか、彼がやれNo.1になる資格を自分は持ち合わせていないし、そのステージに居ないから言い返さなかったのだと光は答えた。
そうかそうかと、緑谷はそれ以上光には何も言わなかった。彼の語るヒーローのまずやるべき事は、救う事でありその通りなのだから。
「気をつけて帰りなよ」
「あ、はい、また明日よろしくお願いします」
彼は自分のヒーローとしてのあり方を、ある程度形作っている。だから斥野の言葉にも揺らぎはしないのだろう、やはり強いなと後輩の在り方に口端が吊り上がるのを隠しながら、緑谷は光と別れた。
この時まで、緑谷は斥野をまだ『一年前のかっちゃんの強化版』な、生意気でまだ個性の強さにかまけている後輩程度にしか思っていなかった。
しかし、九月の中盤……緑谷は斥野を完全に敵視する事件が起こる事をまだ知らなかった。
「…………合格しました」
「「「「っしゃああああああーーーー!!」」」」
九月中旬、朝一の雄英高校ヒーロー科2年A組に歓声が湧き上がる!!
理由は簡単!!
心操人使……仮免試験合格!!そして三年団の試験止め置きされたラストチャンス組も漏れなく合格したとの報せもあった。
これにより!雄英高校二年団全員が、仮免ヒーローとして揃ったのであった!!
「インターン先候補決めたか、心操!」
「ファットガム事務所来いよ!紹介するぞ!」
「ホークスが近々事務所をサイドキックに引き継ぐらしいから、よければ推薦してみるが」
さぁ次はインターンだ、うちに来い、いやうちだ、話をしてみるとやいのやいの男性陣が騒がしい中、緑谷出久は窓辺を見ながら……。
「緑谷ちゃんどうしたの?何かいいことでもあったのかしら?」
「うん?」
緑谷出久は微笑んでいた、恐らくは今まで見せた事無い程に柔らかな笑みを浮かべていて、蛙吹もいい事あったの?と尋ねる程には微笑んでいた。
「いやぁ、蛙吹さん……後輩ってさ」
「うん」
「可愛いよね、世話焼きたくなるって言うかさ……」
「あら、そんな後輩が緑谷ちゃんにできたのね?」
緑谷出久は、心底思っていた。『今、めちゃくちゃ楽しいし青春送れてるな』と。
慕ってくれる後輩が居て、その後輩に指導する自分なぞ、考えてもいなかったのだから。今は卒業して活躍しているルミリオンこと、ミリオ先輩もこんな気持ちを抱いていたのだろうかと思いを馳せる。
「……あー、明日あたり幸せのぶり返しで死ぬんかな僕」
「何でそこで一気に落ち込むのよ緑谷ちゃん?ヴィラン連合襲撃の時にUSJ行くバスの中と同じ事になってるじゃない」
幸せすぎて逆に落ち込み出した緑谷に、見た事ある懐かしい流れと蛙吹は笑う。そんな会話の最中に、緑谷の視界に一人入ってきた。
「緑谷、ちょっといいか?」
「轟くん?どうかした?」
轟焦凍だった、眼差しが少し真面目な雰囲気を醸し出しており、重要な話かと、頬杖を付くのを緑谷はやめた。
「インターン再開の事なんだがな……エンデヴァー事務所は引き継ぎの関係で対応できねぇって親父から連絡あった」
まだ先にはなるが、ヒーローインターン再開の話らしい。轟の話に緑谷は、そうかと納得するしかなかった
AFOとの戦い、そして荼毘を止めるため、『フレイムヒーロー』エンデヴァーこと、轟炎司はその身を焼き尽くした。
結果、現在は車椅子で移動しなければならない程で、ヒーローは引退……短いながらもNo.1ヒーローとしての責務を果たした彼は、サイドキック達へ引き継ぎなどに追われているらしい。
「長年活躍されて事務所も大規模なのは知ってるわ、轟ちゃん……流石にインターンの対応までは無理よね」
「ああ、だから緑谷と爆豪……二人には悪いがまたインターン願いを別のヒーロー事務所に頼みたいんだ」
引き継ぎの関係でインターンはできない、エンデヴァー事務所に出向していた緑谷、爆豪、そして轟も、ヒーローインターンは違うヒーローに改めて頼む必要になった。
「それは……そっか、しかし困ったな……」
予見できた事のはずだが、すっかり忘れていた。またインターン先を探すのかと、腕を組みながら緑谷はどうしたものかなと考える。
一応1人、頼れそうなヒーローは居るには居るのだが……やはり緑谷出久、苦手意識があった。
「タカカズさんとこ、頼んでみようかな」
『ナイスガイヒーロー』タカカズ、ヒーロービルボードチャート前年下半期No.10の、バイセクシャルを公言するヒーロー。昨年は死穢八斎會事件にて会合し、雄英体育祭の時から緑谷にラブコールを出している男であった。
背に腹は変えられない、電話番号はあるので電話を後でかけてみる事にする中、蛙吹が轟に尋ねた。
「そういえば轟ちゃん、卒業後はどうするの?プロヒーローになったら、エンデヴァー事務所は引き継ぐのかしら?」
蛙吹から尋ねられたのは、インターンのさらに向こう。
緑谷達もやがて訪れる『卒業後』の話であった。