【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
蛙吹梅雨から轟焦凍へ放たれた質問には、緑谷出久も考えさせられる話だった。
将来、あと一年少しで、もう卒業が迫っている。ここから先自分達に課せられる課題は二つ。
『プロヒーロー試験』と『就職活動』の二つだ。
三年生になれば、プロヒーロー免許の試験を皆受ける。雄英では、事務所から指名された卒業生が、そのプロヒーロー事務所へサイドキックに就職する『推薦式』が基本となり、仮に指名が被った場合は卒業生側が自由に入所する事務所を決める事も可能となっている。
ヒーロー社会が崩壊したとはいえ、雄英高校のブランド力は強く、卒業したルミリオン先輩達は全員が指名推薦から就職を果たしていたのを、緑谷は知っていた。
が、ここでまた違う道もある。
親がヒーローの場合、その縁故で親の事務所へ入所したり、後継として事務所を引き継ぐと言う道だ。
轟焦凍もだが、2年A組には兄が活躍し、その名を継承した『インゲニウム』こと、飯田天哉も、この流れで事務所を引き継ぐ事になるだろう。
では轟焦凍は?かつては父を憎んでいた、家族の不和や衝突の原因でもあるエンデヴァーの事務所を彼は引き継ぐのか?尋ねた蛙吹に、轟は答えた。
「……正直な話、引き継ぎたく無い気持ちはある、まだ俺は親父を許したわけじゃねぇし、今後もそうだろう」
「轟ちゃん……」
「だが、親父が長年ヒーローとして活躍して、守って来た人や、養って来たサイドキックのことを考えたら、放り出したら混乱が起こるだろう……」
エンデヴァーは、後継者として轟焦凍を育てた。そんな彼は、未だに憎しみは清算できない相手から引き継ぐなぞ、やはり気分は良くない。が、このまま放り出せば、エンデヴァー事務所が守って来た管轄が混乱するのもまた事実であると、轟は語る。
「とりあえずは事務所を引き継いで、親父の下で学びながら整理して、色々終わってから自分の事務所を立ち上げたいとは思ってる」
「まぁ、その流れが現実的なのかな、轟くんは……」
「緑谷は?お前はどうするんだ?」
「え?僕?」
他人の人生設計を、まぁその流れが現実的なのかと思う緑谷に、轟はお前こそどうするのか?と尋ねた。
緑谷は考えた、思えば『ヒーローになる』と、漠然な目的しか無かった自分のヒーロー方針は『ヴィラン達への恐怖の象徴』になるとオールマイトに宣言した。
しかしだ、その活動方針、在り方を認めてくれるプロヒーロー事務所はあるのか?と、緑谷は思うわけだった。
「…………そろそろ本腰入れて、考えないといけないのかな」
「そうね、もう半分過ぎたもの、高校生活は……」
ヒーローになれても、その先生計を立てれるかは自分次第なのだ、ヒーロー事務所もピンキリ、更にはヒーロー社会崩壊で事務所もヒーローも激減したのも事実。しっかり将来を考える時期に来ている事を、緑谷は突きつけられたところで、予鈴のチャイムが鳴り響いた。
進路。
今日の緑谷出久の頭には、その二文字が消える事が無かった。プロヒーロー試験に受かり、卒業すれば、やがてサイドキックとしてプロヒーローの下に付き、仕事をこなす日々が来る。
その時、自分は果たして上手くやれるのか?そもそも自分の様な輩を採用してくれる危篤なヒーローなぞ居るのかと思いながら、今日も学食の『ランチラッシュのめし処』で昼食を済ませようとした。
日替わりメニューが『ヒレカツ定食』だったので、あればカツ丼よりこっちにしようかなと考えながら入ると……特徴的な赤白の頭髪を見かけた。
轟くんである、先に食べている様だが……対面に誰かが座っていた。その対面に座していたのは……。
「えっ、斥野くん?」
あの生意気首席の一年生、斥野力弥であった。どんな組み合わせだ?轟くんも良く許したな、席無かったのか?いやあちこちにあるなと、座れる席があるなかわざわざ轟の対面に座っている斥野が気になったので、さっさと自分のを頼んで、隣に座ろうと緑谷は決めた。
幸い、待たずに済んだので、緑谷は轟の横が空いていたのを確認し、近づいて声をかけた。
「轟くん、隣空いてる?」
「ああ緑谷か、構わねぇよ」
カツ丼と水が置かれたお盆を置き、緑谷が轟の横に着席したのを、斥野は少し睨んだが、即座に繕った。
「お話中だった?」
「いい、別に重要な事じゃねぇから」
蕎麦を啜る轟は……少し苛立ちが感じられた。何かあったらしいが、この一年生何を喋ったのかと緑谷は、手を合わせて一礼しながらカツ丼を食べ始めた。
「酷いじゃないですか轟先輩、職場体験で僕の事エンデヴァー事務所に紹介してほしいって頼み込んでいるのが重要じゃないなんて」
「職場体験?」
緑谷は首を傾げた。今更になって『職場体験』だと?どう言う事かと箸が止まるや、轟が事の次第を話した。
「入学自体がズレたから職場体験もこの時期になったらしいんだ、で……ウチは今引き継ぎやらで対応できねぇって断ってんだが……」
「あ、そうなんだ」
言われてみれば、自分達は五月の雄英体育祭後に職場体験であったが、その時期は絶賛休校中かつ、死柄木との戦いの最中であった。それはズレ込むなと理解したが、そこに斥野は職場体験先をエンデヴァー事務所にして貰う為、その息子である、轟焦凍にコネを使って頼もうとしているらしい。
「あー、斥野くん?今エンデヴァー事務所引き継ぎやらで対応できないから無理だよ、僕もインターンを他所に頼むって言われたからさ」
事実、今それどころでは無いから無理だと緑谷も、内情を知る1人として彼を諭した。が、この斥野……中々に諦めが悪かった。
「緑谷先輩には聞いてません、俺は轟先輩に頼んでます、どうですか?俺、一年主席の有望株ですよ?仮にも短期間No.1だった貴方の父、エンデヴァーが管轄した範囲は広いし、人手が要ると思いますよ?邪魔にはならないどころか、活躍してみる自信がありますから」
見事なまでに自信過剰、自分勝手な売り込みだ。緑谷も、ここまで食い下がるのは余程だなと、さっさとカツ丼をかっこみつつ水で飲み下した。
「……悪ぃが、あの現場でお前が活躍出来るとは、俺は思えない」
「あ?」
轟焦凍は、箸を置いて斥野の売り込みをそう断じた。
「俺でも、親父の先をいけたのはインターン中一度だけだ、サイドキックの方々にも助けられて実感させられたよ、プロと学生の違いを……そんな皆がピリついて手も回らない中に、インターンどころか職場体験は無理だ……悪いが先生からの紹介から選んでくれ」
緑谷も心中で頷いた、事実エンデヴァー事務所の連携は凄まじかった。日に100を超える案件を捌き、エンデヴァー自身も飛び回り朝から晩まで、場合によっては夜間出撃もあった中で、インターンで自分がエンデヴァーを上回ったのは一度だけであった。
何十年もNo.2として君臨し、数ヶ月のNo.1のなかでもその活躍は激務であった。その事務所が、顔である代表のヒーローが引退してサイドキックだけで回している現状に、学生が入る余地は無いのだ。
「悪いな本当に、だから諦め━━」
「ちっ、役に立たんのう、所詮は繰り上げのNo.1とその息子か」
信じられない言葉が、斥野の口から吐かれ、緑谷は唖然とした。緑谷は即座に立ちあがろうとしたが、轟の冷たい右手が足に置かれて止められた。
「ま、いいですよ、どのみちあんたNo.1にもなれそうに無いですし、箔つけるためですから他所頼みます……」
食器の並んだお盆を持ち上げ、斥野は立ち上がり返却口に向かう。
「離して、轟くん……」
「いいから緑谷」
「だけど……あいつ……!」
緑谷からすれば、言わせたままでいいのかと、我慢ならない物言いだった。こっちが事務所の内情から無理だと下手に出れば、唾吐いたんだぞと。こんな事を君は許せるのかと、首を向けたが既に緑谷の足に氷が張るくらい怒っている癖にと!
「というか……」
さらに、この男は……振り返って轟にこう言ったのである。
「どの面下げてまだ雄英に居るんです?荼毘の弟、ヒーロー社会崩壊の張本人の、なんちゃってNo.1ヒーローのエンデヴァーの子が?俺なら首吊って死にますけど……よくまぁ雄英に居れますねぇ?」
瞬間、緑谷の足は轟の氷のストッパーすら、ズボンの生地と皮膚すら引き剥がして立ち上がり、駆け出していた!!
「せぇきぃのぉおおおおおお!!!」