【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「斥野ぉおおおおおおお!!」
振りかぶる緑谷の右の拳が、斥野の顔面むけて振り下ろされた瞬間!その拳はまるで何かに阻まれる様に、斥野の顔面数センチで止められた。
「怖ぁ、いきなり暴力なんてヒーローの自覚あるんですか?緑谷せんぱ━━」
だが!緑谷の右拳から肘にかけてまで!力が込められたのが分かる様に血管と筋肉のラインが浮き出て、さらに拳が近づいた事により、斥野の顔色が変わった。
「は?」
「ふんぬぁあああああああ!!」
ブォオオン!!
風を切る音が、食堂に鳴り響く!怒声から静かになったから余計に聞こえやすく、その拳は斥野にあたりはしなかった。
斥野は後ずさって唖然としていた、信じられないと、当たる事はなかった緑谷の拳を振り下ろした姿を見て、その表情が歪む。
「話に聞いてはいたが、マジの化け物やんけ……」
だが!これで終わるわけがない!後退りした斥野へさらに踏み込んだ緑谷!次は当てると左でボディ打ちを行おうとした瞬間━━。
「がっ!?」
「うおっ!!」
瞬間だった、瞬きする暇すら無い、そんな刹那。緑谷の身体が凍り付けの氷像になったのである!余りに一瞬の出来事には斥野も驚いて声が上がった!
壊蹂熱線『妖艶氷華』轟焦凍の必殺技にして、冷気を帯びた蒼い炎の弾丸という矛盾の炎を放ち、触れた物を一瞬で凍結させる!ただし、拘束時間は短く、もがいて破壊可能なくらいには氷は脆い!
緑谷の背後で、轟は口から冷気を漏らして立っており、近場に居た瀬呂に声を飛ばす!
「瀬呂!!拘束!!」
「任された!!」
事態を理解した瀬呂が、更に氷像となった緑谷をしっかりテープにて拘束して二重に動けなくすると!
「ちぃいい!!」
凍結した氷を砕いて緑谷が復活し、テープを力任せに引きちぎろうとしたところで━━。
「ストップ!!落ち着け緑谷!!何があったぁ!!」
切島が前から、斥野との合間に割り込みタックルで緑谷を押し倒し拘束!押さえ込みも身を捩り抜け出そうとしながら、緑谷は斥野に向け叫んだ!
「絶対許さないからなお前ぇ!!謝れ!!轟くんに謝れお前ぇぇえ!!」
「緑谷いいから!!俺はいいから!!落ち着けって!?」
「よくないだろ!!いいわけあるかぁ!!逃げるなぁぁあ!!」
クラスメイト数人かかりの個性と力で取り押さえられた緑谷を見下ろし、斥野は憎たらしいほどの笑みを見せながら、ランチラッシュのめし処を去ったのだった。
「成る程な、それで騒がしかったのか食堂が」
昼休み終え、午後の授業が始まっていた。その中で緑谷と轟は、職員室で非番であった担任の相澤の下に呼び出されて、何があったのか問われて一字一句漏らさず報告した。
「確かに斥野の暴言は余りにも心無い……お前の怒りも十二分に理解できる、緑谷……だが、それでお前が殴り倒しても、心は晴れるだろうが……後々苦しくなるのはお前だ」
相澤は言う、友を口舌で嬲られた怒りは分かると。だが、それで殴ってしまったら立場が悪くなるのはお前なんだと諭した。
「謂れのない中傷に耐えるのも、ヒーローとしてのあり方だ、エンデヴァーも、その場に居た轟も耐えたんだ……分かるな?」
斥野の悪口はまた違うが、やがてプロヒーローとして活動した時の誹謗中傷、バッシングに耐えるのもまた仕事であり、あり方だと緑谷は諭された。現に、あの場で一番耐えていたのは轟であった事を、凍傷から無理やり動いて皮膚がちぎれ包帯を巻いた己の足、そして隣に立つ轟を見て、緑谷は答えた。
「……はい、軽率でした」
「この件は担任のエクトプラズムにも話を通しておくし、罰則も与えるべきだと進言しておく……以上だ、2人とも授業に戻れ」
「お騒がせしました」
「失礼します」
緑谷の気持ちを汲み、担任のエクトプラズムにも進言すると言って、相澤は2人を下がらせた。職員室を出た2人は、そのまましばらく黙って教室に戻るため廊下を歩いた。
「……緑谷」
「……なに、轟くん」
「悪いな……」
轟は、緑谷に謝った。巻き込んだ事か、足の皮膚持って行った事か、それとも自分が怒るべき場面で替わりに怒ったからか……全てか?謝られた緑谷は、少し呻きながら轟に答える。
「謝る必要無い、悪いのは……斥野だ、あのクソ野郎何が推薦だ……誰だ合格させたやつ目ぇ腐ってんのか」
「!!?」
轟はびっくりして、緑谷の方を思わず向いた。こんな口の悪い緑谷は初めて見たし、ここまで他人に罵声と悪口を吐き散らすなんて、想像もできなかったのだから。
「み、緑谷?その、本当に……この後斥野を襲撃とかやめろよ?そんな事して除籍なんてなったら今までの努力が水の泡になるから……」
故に、轟は冷静になれたと言うべきか……。確かに斥野の吐き捨てた言葉は許せない、許せないが……あれだけ言うなら"斥野は荼毘の被害者"なのかもしれないと、微かに思ったのだ。だからあの場で、自分に怒る資格は無いと思い受け身で耐えるしかないし、耐えれた。
緑谷が代弁するように怒り出したから、止めねばならないと轟は冷静になれたのだった。
轟に、マジでやりかねないと思われた斥野襲撃と言う話を聞いた緑谷は、しばらく黙って轟を見た。心配してくれているのが痛いほどに分かる、何よりあの場で怒らず自分を止めようとした轟の、甘すぎるくらいの優しさに、緑谷は溜息を吐いて轟に答えた。
「しないってば……轟くんもさ、あの場で怒らないあたり本当に甘ったるいよね?合宿で忠告されたくらいに……」
しないよと、止められた以上……轟の気持ちを踏み躙る事になるからしないと約束した緑谷ではあったが、やはりキミは甘すぎると愚痴をこぼした。
「まぁ、な……けど、少し報われた気持ちもある」
その通りで言葉を返せないと力なく笑う轟だっが、だからこそ報われた事もあるんだと、緑谷に言うのであった
「何がさ」
「替わりに怒ってくれて、ありがとうな……」
本当は自分だって、怒りたかった。だけどあの場で自分は怒る権利は無かったのだ、耐えるしかなかった。だから、代わりに怒ってくれたことに、轟は緑谷に感謝したのである。
「……どういたしまして」
緑谷からすれば単純な理由だった、礼を言われるような事ではない。
友達が、目の前で口舌にて尊厳も誇りも嬲られたのだから。
相澤先生は、ヒーローは誹謗中傷に耐えるべきだと言ったが、それは理解しているし、その通りだと頷ける。
しかし、ヒーローではなく……。
『緑谷出久』としては、斥野の行いは許せないから怒っただけの事であったが、轟からの礼を気にするなと返さず、そのまま受け取っておくのだった。