【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
理解しがたい事が起きていた。
「は!はぁっ、いや、いやぁああ!」
ヒーロースーツを身に纏えば、ヒーロー。しかし"彼女"は、その責務を放棄して、今背を向けていた。
戦う覚悟はできていた筈なのに、職場体験、仮免試験、インターンを越えた。そしてそれなりなプロヒーロー事務所に就職して、サイドキックになった。
AFO、死柄木弔との戦いも、主戦場から離れた有象無象の中で生き延びた。辞めなかったのは『打算』だった。
枠が空いたと思ったのだ、ここから多少の活躍をすれば、それなりの地位と名誉を得て、楽な生活できるのではと。ヒーロー飽和社会から一転した不足の最中、活躍の場はあると思った。
「何で、何でよぉ!もう、居ないはずじゃない!!倒された筈じゃないい!!」
逃げる、必死に逃げる。
突然の襲撃だった。理不尽な災害としか例えようが無い、自身の力と個性では、勝てない『化け物』から、彼女は必死に逃げる!
無様でもいい、逃げさえすれば、助けを呼びさえすれば!入り組んだこの街を抜けさえすれば!大丈夫だと、差し込む光を見つけて彼女の恐怖は和らいだ。
「た、助け━━」
「はーい残念」
その手が光に届く事は無く、最後に彼女が聞いたのは、少女の声。そして……最後に見たのは。
別たれ、ピンク色の中身を散らした、自らの"腰より下"であった。
「すっごーい!見て見てミカエル!真っ二つ!!試運転バッチリね!!」
嬉々として返り血を浴びて、巨大な『露出した脳に目玉が取り付けられた化け物』を引き連れて、学帽という今や絶滅危惧種な珍しい物を被る詰襟の少女は、錆びた配管に、打ち捨てられた機材が並ぶ空間……そこから、まるで『そこだけ』は、異空間の様に、最新の機材に、巨大な硝子の円柱が並び、同じ様な化け物達が並んでいた。
その空間の奥、これまた異空間の実験室に似つかわしく無い派手な玉座には、白の詰襟を来た銀髪に片目隠れの儚げな少年が、黒の学帽を被った詰襟の美少女から報告を受け、笑いかけた。
「尖兵の動作確認は問題ないようだねガブリエル、神託を得たあの日から、それに従い来てみれば見事な物だよ」
玉座より立ち上がり、階段を降りながら並ぶガラス管の中の化け物いや……『脳無』と世間では言うらしいが、銀髪の少年は『尖兵』と呼称した。
「ラファエル、他の尖兵が作成完了するまであとどれくらいかかる」
銀髪の少年が呼ぶは、様々なモニターを前にキーボードを操る眼鏡の少年。彼もまた詰襟ながら、かつての『帝国軍人の様なブーツ』に、白衣を纏い、応答に答える。
「一週間かな、そもそも凍結された物の再起動に調整に、ただ動かすだけじゃないんだこの子達……そうやってミカエルの指示を聞かせるまで、どれだけヒーローを殺させたか……それで13人目だ、ここの子を全部そうするなら年単位の長丁場になる」
真っ二つにされた女性ヒーローを見下ろして、引き摺られた『ワタ』を見下ろし足の甲で弄り、汚らしいと蹴り避けた。
「キミの叡智でもっても、それだけかかるか?」
「作った人がイカれだからねぇ、学会を追われた悲劇の天才にして、AFOの懐刀が作った、ヒーローを追い詰めた発明品なんだから」
「ならば……天使部隊を先に整えなければな」
歩きながら顎に手を当て歩く銀髪の少年は、指を鳴らせば天井より、青い翼を広げて舞い降りた同じ黒詰襟の少年が跪く。
「ウリエル、ガブリエルの"愛"の効果はどうだ?」
「はっ、既に楽園への入園を希望し、天使となる事を決めた者達が全国で1000は超え、下界にて終末のラッパを待っております」
「……まだ増やさねばならない、楽園への道は生半可にあらず、か……ガブリエル?引き続き増産した愛を天使に経由して配らせ、新たなる天使を増やすよう」
「はぁい!ミカエル様!」
るんるんと、スキップを刻み詰襟の美少女は機械仕掛けの玉座より出て行った。銀髪の少年もまた、玉座の階段を登り、再び座して呟やく。
「楽園は僕達が必ず作り上げる、神託にて得た尖兵と星から賜ったこの異能で……僕達が世界を支配するんだ……」
天使の名を嘯き、救世を歌う少年は、その時を待ち笑みを浮かべるのであった。