【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
いかにもな黒服だった、多重債務者を売り飛ばすような黒服だった。緑谷出久は別の意味で恐怖を感じてまず黒服にこう言った。
「うちは借金する相手も親戚も居ませんし、マイホームのローンも数年前に父が払い終えましたが……」
「あ、いえ、借金取りではございませんが……私、こういう者で……」
名刺を丁寧に渡される、ただ……異様な名刺だった。何せ名前が無い、ただこう書かれていた。
「ヒーロー公安委員……?」
公安、という二文字に目が行く。警察の公安の部署?それともヒーローにもそんな組織があるのかと。
「はい、我々は所謂ヒーロー達の免許の試験担当やその免許発行等の事務作業をしています」
役所仕事までヒーローはやっているんだな、この辺りは公僕の仕事と思ったが意外な事実だと納得して名刺を眺める緑谷。
「実はキミにその職場体験で指名をと今日はうかがーー」
「学校を介しない、生徒への直接勧誘は禁止ですよ、公安委員会のお方?」
背後から、聞き慣れた声に振り返る。ミッドナイトが鞭をくるくる回して……いつもの優しい目とは違う眼差しで、名も知らぬ公安の職員を注意した。まるで……敵を前にしたように。
「おかしいですね、そもそも彼には指名を入れたんです。今名刺を渡してみれば我々どころか、公安を知らないと反応を返したんですよ」
「指名をしたと言え、あなた方を選ぶ自由は彼にあります、直接来訪されては彼も困ります……どうぞお引き取りください」
もしも、敵と戦う時のミッドナイト先生というのは、ここまで変わるのだろうかと声色の冷たさに思わず緑谷は足が竦んだ。
名も知らぬ公安職員は、全く表情を変えずに、そうですかと言って一礼し、車道に停めていた黒い車に乗り、走り去って行った。
「私からの忠告、そこはやめときなさい……事務仕事なんて嘘っぱちよ」
そこだけはやめろ、本気の忠告だった。それだけを緑谷に言って、彼女は校舎に帰って行く、そんなやべー場所なのかと、ふと裏面もあるのに気付きひっくり返すと、そこには携帯番号が書かれて、一言添えられていた。
『困った時にはかけて来なさい、キミの力になろう』
あやしい事この上なかった、しかし緑谷は、そこらにポイ捨てするような悪い子では無い為、あとで捨てようと財布のカード部分にさして帰路についた。
この一枚の名刺が、彼の運命を揺らす事になろうとは、その時は緑谷出久自身も全く思ってすらいなかった。
ーーそして、また敵も動き始める。
「成る程な……お前たちが雄英の襲撃犯、んで…‥その一団に俺も加われ、と……」
いずこの繁華街、薄暗いバーにて、3人の男が集まっていた。猫背に赤の鉢巻にスカーフ、さらに目元に穴を開けただけの破った布を巻き付けて隠している男が、顔を掴む手首そのものをつけた前衛芸術の男と、頭部から黒モヤを出し続ける男に語りかけた。
「ああ、頼むよ悪党の大先輩……」
「……目的はなんだ?」
「とりあえずはオールマイトはぶっ殺したい、気に入らない物は全部壊したいな……特に……この正義を気取るクソガキとかさ?」
前衛芸術の男が最初に出した写真には、雄英体育祭で首を掲げた緑谷出久が映っていた。
「……悪質なコラか?」
「コラじゃ無いんだよなぁ……俺はこいつに、昨日までずっと身体中ギブスをつけられるくらいボロボロにされて、やっと最後のが外せれたんだ……」
信じられないだろうが本当である、黒いモヤの男も震え出し、拭いていたグラスを落として頷いた。