【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「誰かーー!そのバイク止めてーー!」
まだ昼間というに、女性の悲鳴と伸ばした手の先に、二人乗りでバイクに乗った男の、後方の男が女性バックの紐を持ち車道を爆速していた。
ひったくりである、何ともありがちな犯罪というのも嘆かわしい。
「ばーか!最近はヒーローも少ねえし対応も遅れてんだよ!」
「じゃあなババア!俺たち若者が使わねぇ年金有用に使っとくからよぉ!」
このひったくり犯2人の言う通り、ヒーロー達は数を減らして対応が遅れていたのも事実だった。数ヶ月前は犯罪が起きれば、我先にとヒーロー達が手柄を奪い合うくらいに集まったのはついこの前までの事。
復興著しく進むも、ヒーローの対応速度は一気に遅くなり、こう言った軽犯罪への対処全てに手が回らないのも事実であった。
ちょろいもんだと運転手が、クラッチを切りギアを上げて現場から去ろうとした最中、道路前方に影が一つ降り立った。
「ヒーローか!?」
「構わねぇ!どうせ残り物の雑魚ヒーローだ轢いちまえ!!」
あまりに堂々降り立つ様はヒーローかと運転手が焦るが、どうせ残り物だと鞄を奪った実行役が轢けと叫ぶ!それに呼応した運転手は歯を見せ笑い、ギアを最大にまで踏み換えてアクセルを捻った!
「どけやぁあああああああ!!」
近づいてくるヒーロー、その姿は純白のコート!それが轢き殺され血に汚れたくなけりゃ退けろと運転手が叫んだ。
だが、退かない!そのヒーローはぶつかりそうになる刹那、宙に舞いながらアクロバットに回避したのだった。
「はっはぁ!ビビりやがった!!ザマァねぇなヒーロー!なぁ!?」
最後の最後で逃げやがったと舌だし罵声を吐き散らすひったくり犯は、そのまま運転手に向き直った瞬間。
「へ?」
一気に心臓が冷たくなった。何故か?
無いのだ……『首』が!露わになっている断面から!血が風に吹かれて自らの服やら、左右に撒き散らし、力失った肉体がバイクのコントロールを失い、車体が倒れていく!
「うわぁああぁあああ!!」
ひったくり犯は宙に投げ出されたが、何かに一瞬引っ張られた感覚と共にセメントの地面を転がった。首なしの運転手も、投げ出された割には転がらず着地し、バイクも倒れてスピンしたものの、他の車両や歩行者にぶつからずそのまま止まった。
「な、何だってんだ!ヒーローじゃねぇのか!?」
ヒーローが人を殺しやがった!最初はそう思ったが実行役は起き上がりながら、打って変わって跳ね返る心臓とアドレナリンの興奮冷めやらぬまま考えた。
まさか同業か?いまひったくりしたババアのバックに、やべぇ物でも入っていたのかとなる前に、そのヒーローはゆっくり歩み寄り……運転手の生首付き脊髄を傍に落としながら声をかける。
「ひったくったバック、返してもらうよ」
「あ、ああ!ああ!?嘘だろ!!」
このひったくり犯も、狡いヴィランの端くれであるため知っていた!
『脊髄をぶっこ抜いて殺せる個性』なんて、この世に一人しか居ない!!しかし、あいつは『白いヒーロースーツ』じゃなかった筈と見上げた先に、やはり居た!!
「ひ、ひぎゃああああ!?何でイズクがこんなとこに居るんだよぉおお!!」
「ルミリオンの手前だ、ここまでで許してあげるけど……まだ抵抗する?」
「しません!!許してください!!つい出来心だったんですぅうう!!」
実行役のひったくり犯は恐怖の叫びを上げて、降参するのだった。
「もう捕まえたのかい!?早いねイズク!!スマホのアラートより早く気付いてたし!!」
その数秒後、通形が到着してもう解決したのかと驚く。緑谷は、スピンしたバイクを路肩に、そして首なしの運転手を引き寄せながら語った。
「エンデヴァー事務所の経験が生きてるんだと思います」
「なぁるほど、こりゃ俺もうかうかしてられないね!警察は俺が呼ぶよ!」
「ありがとうございます」
通形がスマホで警察に通報し位置を報せる、緑谷はだらしない白目を剥いた生首付き脊髄を、首無しの遺体に刺し込めば……血管に神経に筋繊維に皮膚と即座に繋がり、ひったくり犯の運転手が目を覚ました。
「が!?あ!?ひっ……いい、イズク!?」
「逃げたら……もう一回ぶっこ抜いてケツアナに刺してやるから逃げるなよ?」
「はぃいい!!」
運転手も緑谷の顔を見るや降参、一件落着となった所で……。
「も、もう終わってた……」
光がようやく到着した。しかし、緑谷と通形は遅いとか、ようやくか、とは言わず、即座に通形から光に指示が飛んだ。
「ヒカリ!バイク邪魔にならないよう立て直しておいて!キー抜いてエンジン停止して!もし火が燃えてたら消火!」
「は、はい!」
ヴィランを退治したから終わりでは無いぞ、事後処理もまた警察が来るまでヒーローが行うのた、通形の指示に光は倒れたバイクへと向かった。
「とりあえず警察に引き渡しですね、ルミリオン先輩……まさか来てすぐ犯罪が起こるとは」
ひったくり犯二人を、うつ伏せにして手足を縛り上げた緑谷は、まさか来て早速捕物を行う事態になるとは思わなかったと呟く。
「実際、復興が進んでからヴィランやら、軽犯罪増えたんだよね……ヒーローが少なくなったから対応する事務所の幅も広くなってるんだ」
「成る程……オールマイト引退後と同じ流れですか」
復興が進み、平穏になってからヒーローの現象もあって増えたのだと最前線で戦うデビューしたての先輩からの、実際目にしたリアルを聞いて、緑谷自身も気を引き締めた。
そして、インターン先を選り好みしていた数日前の自分を恥じた。これは、たとえサー・ナイトアイ事務所でなかろうと、同じ様にヴィランや犯罪の増加を肌で理解させられただろうと。
パトカーのサイレンが鳴り響く、警察も来るのが早いなと、音を聞いていると、緑谷達のスマホがまたアラートを鳴らす!
「……こりゃエンデヴァー事務所の時並みに忙しいかも!」
「行くよ二人とも!皆がヒーローを待ってる!」
「了解です!」
矢継ぎ早のアラームに、次は通形が先陣を切り、緑谷と光はそれに続いた!
「ちょい待って!多すぎませんか!?」
同刻、岡山市内━━斥野力弥は本日5件目の通報を前に叫んだ。
「あぁん?なんだもう疲れたかチンカス」
「チンカスちゃいますから!?ネクストマイト!!マジやめてくれません!?というか、ヴィラン犯罪起きすぎちゃいますか!」
爆豪にチンカス呼ばわりされて訂正を求めた斥野だが、もう立て続けに5件もヴィラン犯罪が起こり、それに対応してここまで多いのかと現場の激しさに驚いた。
「AFOと死柄木が倒され、復興も終えつつある現在、ヴィラン犯罪もまた増加の傾向にある……そこにヒーローの数の減少も合わさり対応が遅れつつあるのが現状だネクストマイト、キミがまだ中学生だった頃もヴィラン犯罪は多発していただろう?」
復興が進んだ今この時こそ、ヴィランもまた再起しているのだと、目の前のヴィラン達を警察に引き渡しながらベストジーニストは答えた。キミが中学生の時も、この景色は当たり前ではなかったかと問われ、斥野はああ確かにと頷かざるを得なかった。
「……言われてみれば、毎日どこかでヴィラン犯罪はニュースになっとりましたわ、ほんでオールマイトが引退してドッと増えよりましたね」
「それでも、まだヒーロー達は飽和していて、手柄を奪い合う時代だったのだ……今は違う、ヒーローが足りないがヴィラン犯罪は増えて行く一方だ」
復興以前までは、ヒーローもヴィランも息切れを起こしていた状態。復興の目処が立つやヴィランも息を吹き返して、ヒーローはその数が足らなくなり対応に遅れているのが現状なのだと、ベストジーニストが語る。
「つまり……活躍の場はいくらでもあるっちゅう事ですか」
斥野は口端を吊り上げ呟いた、ヒーローが少ない今は活躍して目立つチャンスでもあると。まだ仮免すら持たない一年ながら、自らを『次世代のオールマイト』と騙る自信すら持つ斥野の目はギラついていた。
「……これを好ましいと言うべきではないのだがな」
ベストジーニストは、やる気を見せる斥野を評価こそすれど、ヒーローがまるで犯罪が起こる事を望む様な口ぶりには釘を刺した。
「はっ、ねぇよテメェの活躍できる場所も時間もな、俺がデビューしたら速攻ヴィラン犯罪無くし殺したるわ、サイドキック就職難起きるくらいにな、チンカス」
爆豪も、そんな後輩に自分なりの注意……とは聞こえない罵倒を口に出せば、斥野も売り言葉に買い言葉と言い返した。
「ほー……口だけは達者やないですかダイナマ先輩、もしかして狂犬病に罹患しとりません?こーわっ!保健所通報しときましょか?」
「あぁ?イズクに泣かされてちったぁマシになったかと思えば口の減らねぇ後輩だなぁ、本性繕う暇ないくらい疲れてんのか?」
一触即発の状況になりかけた刹那━━。
「ヒーロー同士が喧嘩をするな」
「おあ!!」
「ぐぁっ!?」
そのままベストジーニストはため息を吐いて、二人をまとめて拘束したのであった。全くもって、似た者同士の過激な向上心な二人だと、ベストジーニストは縛った2人を反省させながら警察を見送った。
だが、斥野の才能もまた素晴らしいものだと、彼はこの5件のアラートで、自分や爆豪に遅れを取らずついて来て、しっかり行動できている事実は認めざるを得なかった。
実力ならば、一年前の職場体験で来た爆豪以上の力がある。それこそ、個性使用許可を与え仮免同様の範囲で付いて来させたが、見事なものだった。
あとは爆豪同様、性格の矯正だなととりあえずは繊維を解いてやれば、2人は立ち上がり、互いに舌打ちして顔を逸らしあった。
「……ん?」
目を逸らした先の駅前を見ると、斥野はふと異様な風体の輩を目にした。
「ダイナマ先輩、ベストジーニスト……今日は平日ですよね?」
「あ?何吐かしとんだ?」
「どうかしたか、ネクストマイト?」
「いや……学生服の子が何やら突っ立っとりますけど?」
斥野が指差した先には、岡山駅前のシンボル『桃太郎像』の近くを、猫背でふらつく学生帽を被った詰襟の少年が居た。
「不良学生……には見えねぇな?不登校か?」
所謂サボりのヤンキーには見えない、きっちりとした着こなしの学生だ。背丈からして中学生かと、爆豪は登校せず徘徊して時間潰しをしている輩かと呟く。
しかし、ベストジーニストもその学生の姿を見るや目を細めて言った。
「……岡山県内に現在、学帽を採用している学校は公立私立、中高含めて無い」
「「えっ」」
「あれは軍帽だ、足元に至ってはブーツ、制服も違う……あれは……たしか第二次世界大戦の━━」
『異様』は最早『奇怪』にまで言葉が変わった。学生が着ていたのは詰襟でなく軍服であり、さらに軍帽にブーツまで履いている。しかし顔の幼さからして中学生の少年だった。
いよいよ持って怪しいところではないと、ベストジーニストが歩きよりながら、声をかけようとした。
「キミ、ちょっといい━━」
あと少し、5〜6歩の距離で、ベストジーニストが目を見開き、爆豪も同時に動いた。軍服ファッションの少年は、右手に水色の結晶を作り出し、それを『剣』の形に整えるや、笑みを向けて近くを通った歩行者に振りかぶる!
歩行者が気付いた刹那、ベストジーニストの自らが着るヒーロースーツの繊維が腕を止め、爆豪が即座に手のひらを向け……コンマ数秒遅れて斥野が通行人の前に立ち盾となった。
「白昼堂々通り魔をするにしては、いささか大雑把すぎないかね?少年」
「脅しじゃねぇ、手ぇ下ろせや」
通行人は、悲鳴をあげそうになったが、ヒーローが居てくれた為助かった事に安堵し後退りして離れ、野次馬達も何事かと集まり、ベストジーニストが居る事に黄色い悲鳴をあげたり、捕物をスマホで撮影しようと集まる。
「詰みやで自分、大人しくその子どものおもちゃみたいな剣下ろし?」
斥野も、ジーニストと爆豪に続いて嘲る様な説得を吐いた瞬間だった。
「ネクスト!!個性張れ!!自分の周囲!!
「あ?」
爆豪から怒号が飛んだ。しかもヒーロー名で、その刹那斥野が見たのは……。
自分の頭上に展開する、幾つもの水色の結晶の剣が降り注ぐ景色だった!
「おぉわぁああああ!?」
即座に個性を展開できたのは才能故か!斥力の力場で自らの周りを包み!叩き込まれた結晶の剣たちは、弾かれてガラスの様に残骸を散らして行く!
「てめっ!?」
このガキやりやがったなと爆豪が爆破を放ちにかかった瞬間、軍服少年の拘束されたはずの右手が動くや、爆豪に握りしめた結晶剣を振り下ろす!
「ちぃ!!」
バックステップで間合いを取り事なきを得た爆豪だったが、即座にベストジーニストへ文句を飛ばす!
「ジーパン!ちゃんと拘束しとけや手ぇ抜いたんか!!」
気を抜いたのかベストジーニスト!だが、爆豪に帰って来た言葉は違った。
「繊維を切られた……そう易々と切れる素材ではないのだが……あの結晶は余程いい切れ味らしい」
ベストジーニストは言い放つ、切られて抜け出されたのだと!ベストジーニストの個性『ファイバーマスター』はあらゆる『繊維』を操る!自らのヒーロースーツや、敵の服の繊維すらも操るが、彼がそう言うくらいには『切られる』事は稀有な素材を切って、身動きを取れる様にこの少年はしたらしい。
「邪魔、するなよぉ……聖別ができないじゃないかぁ……」
ここでようやく、軍服の少年が喋る。少年の目は、どこに向けられているか分からずあちこちに瞳を動かし、その瞳に光は無く虚ろで、口から涎を垂らして見るからに正気では無いのが分かった。
「白昼堂々、ヤクでもキメたんかいなこのガキ……!」
「ブースト材の一種みてぇだな……明らかに個性が強化されてやがる」
結晶剣を防ぎ切った斥野は、怖気を感じる程の少年の異様さに戦慄し、爆豪は冷静にこの軍服少年の様子を見て構えた。ジーニストも改めて構え直し、この軍服少年を拘束する為にその姿を見据える。
真昼の駅前で起こった通り魔未遂……まさかこれが、爆豪達だけに起こった異常では無い事を、彼らはこの後に知る事となる。