【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
爆豪達が岡山駅前でヴィランと交戦しているその一方で、緑谷達もオールマイト引退後のヴィラン活性を思わせる程の通報やアラートに対応していた。
唯一マシだったのが、ほとんどが軽犯罪やトラブルであった事だろう。最初のひったくりの後は、喧嘩の仲裁だったり食い逃げを捕まえたり……凶悪犯罪とはかけ離れた事態を解決したり、お年寄りの荷物を運んだり、線路に落ちた人を助けたり。
一週間の職場体験初日ながら、光はあちこち動き息を切らしていた。
「今のところ、一番でかい事件は最初のひったくりですね」
自販機からカフェオレの缶を取り出した緑谷が、プルタブを開けて飲みながら、現状一番大きな事件はひったくりだったと語る。
「けど、この小さな犯罪が積もると厄介だよね、他のヒーローも管轄が広いから全部対応は難しいって、サーも言ってたよ」
「飽和状態ありきのヒーロー社会だった、という事ですか」
「そういう事だね、光くん」
通形は微糖、光は流行りのエナドリを飲みながら、この犯罪多発の状況でも平和だったのは、ヒーローが溢れかえるほど居たから対応出来ていたのだろうと語り、光は成る程と頷いた。
「でさ、聞いた話なんだけどね?いよいよ警察も個性解禁?するかもとか聞いたんだよね、大戦の時にセントラル病院での対応から省みて話が上がってるとか」
「となると、警察直属のヒーローが生まれたりなんてあるかもしれないと」
「それか装備拡張って噂、パワーアーマーとか、対ヴィラン特殊部隊とかさ、昔SATって警察の部隊があって、部隊を再編するかもって」
先の戦い、今の現状から警察も動いているらしい。ニュースで見たなぁと緑谷も世間話を通形とする中、光はエナドリを煽りながら、職場体験なりに周りを見渡していた。
さっきまであっちこっち動いたのに、一気に静かになった。波、というやつだろうか、毎分毎秒犯罪が起きるわけでも無いかと、光はエナドリを飲み干しゴミ箱に入れた。
う あ ああ あ あああ!!
その時、近くで悲鳴が聞こえた。緑谷と通形もコーヒーを一気に飲み干し空き缶をゴミ箱に叩き込み、何も言わずに聞こえた方角にそれぞれが飛び出した!光もそれに追従する!
「近くだったね!多分……路地裏だ!」
「上から見てみます!」
「頼むよイズク!」
通報のアラート無し、突発的な悲鳴の方角から、ビル群の路地裏かと緑谷が空を引き寄せ飛翔!通形に頼まれ上空から注視し確認すると、尻餅をついた学生を見つけた。
「学生?こんな時間に?」
ヒーローインターンの学生ならともかく、普通の学生ならば今は昼の授業中では?兎も角何かあったらしい、緑谷はその路地裏に降り立つ。ギリギリ人が2人並んで通れそうな路地裏で、その詰襟の学生は尻餅をついていた。
「キミ、大丈夫?何があった?」
その学生は、詰襟に学帽を被っていた。士傑高校の学帽かと思ったが校章が違った、見たところ中学生程度の学生は、路地の奥を指差して緑谷にこう言ったのだ。
「か、カツアゲされて、叫んだら向こうに犯人が逃げて……」
「恐喝か、分かった向こうだね」
まだ声変わりもしてない、少年の声で彼は言った。緑谷は言われるがままに路地の奥へ向かおうと振り返る。
「はい、その奥の左に曲がって━━」
振り返り、緑谷が背を向けると、学生は立ち上がって背中に手を回すや、何かを取り出して━━。
「先輩!危ない!!」
ついて来ていた光の声に、即座に振り返るや、後ろへ突き刺す様な蹴りを緑谷は放つ!学生帽の少年は、さながら新体操の様なバク転で回避した!その手に光るはコンバットナイフ!学生は奇襲を仕掛けようとしていたのであった!
「なんだぁ、まだ1人居たんだ、まぁいいや……どのみち殺しちゃうし」
さっきの怯え顔は嘘とばかりに、笑みを浮かべ器用にナイフを弄ぶ学生に、緑谷はまず学生の背後で路地の入り口に居た光に言い放つ。
「ヒカリ!来るなよ!絶対に入って来るな!!」
光はあくまで職場体験の身、仮免すら持たぬ彼を怪我はさせてはならないと、路地に入らぬ様に檄を飛ばした。
「いいのヒーローの兄さん、僕ら2人相手に1人なんて……」
2人?緑谷はまさかと、彼がカツアゲされて逃げた相手が向かったと言っていた、路地の奥へ振り向いた。
曲がり角から、これまた同じ学帽、そしてよく見たら制服に近しいが軍服の様な改造が施された詰襟に、黒い鋲打ちされたレザーマスクの少年が、鉄パイプを引きずって現れたのだ。
「ヒーローだ、楽園に不要なる存在のヒーローだ!」
くぐもった声で目を血走らせる鉄廟マスクの学生、そしてサバイバルナイフを曲芸の様に操る学生が、緑谷の前後から迫る!
「僕らの楽園の為に死んでよ、ヒーロー!」
ほぼ同時の前後から、攻撃が振るわれる!
瞬間!緑谷はサバイバルナイフの学生に目もくれず、鉄パイプの学生へ走った!
「はは!ガラ空きだよヒー」
そう背中はガラ空き、その通りである。しかし、緑谷はそうしても良いと思ったから、それでも大丈夫だと思ったから一方に絞ったのだ!何故ならば、自分の背中には!
「パァアゥワアアアーー!」
「がほっ!?」
頼れる先輩ヒーロー!ルミリオンが居るのだから!路地の壁を透過して真っ直線に来たルミリオンが、サバイバルナイフ持ちの学生後方斜め上に現れて即座にのしかかって捕縛!ナイフを手首を捻り上げ落とさせた!
「はぁあ!まだ居たの━━」
「シィイッ!!」
「あうっ━━」
そして!鉄パイプ持った鋲マスクの学生は、まだ居たのかと予想外の援軍に驚く間も無く、緑谷の右のストレートに顎を撃ち抜かれ、膝から崩れ落ちた。
不利だったのは一瞬!通形、そして緑谷の先輩コンビ二人の言葉すら交わさず一瞬で相手を制圧した光景に、光は驚き身動きすら出来ないほどだった。
「す、凄い……!」
片やプロデビュー数ヶ月、もう片方は仮免!ここまで強く、早く対応出来るのかと、光は言葉が漏れた。
「学生さんだよねキミ達、何があったか知らないけど、辛い事があるなら話くらい……」
押さえつけた学生に、余程の事があってこんな事したのかと尋ねた通形。だが━━次の瞬間に信じられない事態が彼の目の前で起こった。
「が……げ!」
「え?」
通形が押さえつけた学生が、突如痙攣し始めたのであった!鍛え上げた通形の肉体すら跳ね上げそうな明らかに異常な痙攣!このままでは捻り上げた腕を折りかねないと考えた通形は即座に離れれば、まるで学生は奇病に晒された患者のように身体を海老反りにしながら跳ね、喉を押さえた。
「み……かえ……るさ……まあ……!あぁが!おぁあ!?」
そして、その学生は目や耳、鼻から血を流し、目は充血すら生優しい程に血に染まり、最後に口から破裂したかのように血を吐き出して、がくりと力無く倒れた。
「な、あ……え!?」
「これは、一体……!!」
血の海に横たわる学生に、通形も、緑谷も、何が起きたのだと愕然とした。
「うがぁあ!!が、おあぁあああ!!」
「!?」
そして、緑谷が顎打ち抜き意識を断ち切ったマスクの学生も、痙攣しながら跳ね始めて緑谷は即座に何事かとマスクを引き剥がし、吐かせにかかった!
「おい!?何なんだこれは!!キミ達まさか毒でも飲んだのか!!なら吐き出せ!!」
学生が自決用の毒まで持って、ヒーロー襲撃なぞ何事なんだと、痙攣する学生の上半身を抱え起こした緑谷だが、すでに鼻や耳より血を流し、目は血に染まり血涙を流していた。
そして━━。
「さ……きに、お待ちしてます……ミカエル……さまぁ……ごぶぁ!!」
吐血した血が、緑谷の顔面に吹き付けられて、緑谷の顔と純白のヒーロースーツを血に染めた。腕の中でがくりと力を失い、息絶える学生……それをゆっくり地面に寝かせて、緑谷は通形と光に告げた。
「ルミリオン先輩、ヒカリ、すぐに警察を……あと救急も呼んで周辺閉鎖を……感染症の類ならまずい」
「お、OK、すぐ呼ぶ!」
「は、はい、分かりました!」
通形と光に通報と閉鎖を任せ、顔に吐かれた血を拭いながら緑谷は壁に背中を預けた。仮に、これが感染症の類なら動いてはならない。だから任せるしかないと、ため息を吐いた。
「……前のやつも感染対策で捨てさせられたよなぁ……ああもう」
作ってまだ着たの一回だぞ、このヒーロースーツ……緑谷は項垂れながら、二人の学生の亡骸を見下ろした。
その顔は、苦しい最後のはずだったのに、幸福の絶頂じみた薄気味悪い笑みを浮かべていた。