【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
学生がヒーローに襲い掛かり、さらに突然死。その血を浴びた緑谷は、細心の注意を払い病院にて感染症検査を受ける事になった。
「……血液に感染症を思わせる細菌はありませんでしたが、事態が事態です、今晩は経過を見たいのでこちらに泊まりください」
「まぁ、そうなりますよね」
被った血に感染症の細菌は無かったが、一応の為に検査入院をと医者より勧められた緑谷は、それはそうだよなと溜息を吐いた。身体に異常がないとは言え血を被ったのだ、数時間後に発症もおかしくない。
「何人か連絡をしたい人が居ますが、できますか?」
「はい、病棟のロビーでしたら携帯も使えますからそちらで」
「ありがとうございます」
とりあえず今夜は病院から出られなくなったので、緑谷はそれを学校、自宅に連絡をする事にした。
診察室を後にして、そのまま病棟のロビーに行き、スマホを取り出して緑谷は、電話をかけた。呼び出し音一回で、相手に繋がった。
『お電話ありがとうございます、こちら、サー・ナイトアイ事務所』
「もしもし、バブルガールさんですか?緑谷出久です」
『あ!イズクくん!話はルミリオンから聞いてるから、サーに繋げるね!』
まずは経過報告、サー・ナイトアイ事務所に事の次第を話す事に。バブルガールが出てきたので名を名乗れば、すぐにサーへ繋ぐと保留し、メロディが10秒足らず流れると改めて繋がる。
『もしもし』
「すいません、サー……厄介事になりました」
『構わない、災難だったなイズク、それで?診断結果は』
「とりあえず症状は無いですが、経過観察の為今夜は病院に泊まる事に」
『そうか、ルミリオンから話を聞いている、遺体はセントラル病院に運ばれてそこで検死解剖されるらしい……』
入院の件を、サー・ナイトアイに伝えた緑谷。話は聞いていた彼から、自分と通形が対峙し、変死した学生はセントラル病院にて調べられると彼は語った。
『それと、この学生達の身元が所持品から分かったんだが……どうやらまだ中学生だったようだ』
「えっ……」
『静岡県内の中学生で……着ていた制服も同じだが、二人は"違う中学"の一年生と二年生だった……なにより、その制服は改造が施されていて、どの学校にも無い形だそうだ』
さらに聞かされた、襲撃して来た学生の情報に緑谷は困惑した。まさか、中学生という自分たちより歳下の子どもが、ヒーローを襲撃する為に罠へ嵌めようとしたのかと。さらに言えば、同じ制服を着ていたが『違う学校の中学生』であった事も奇妙極まりなかった。
『以後、何か分かり次第連絡する、とりあえず今日は経過を見るように』
『ありがとうございます』
他に情報が入れば連絡するとナイトアイに言われ、通話は終了した。さて、次は母親と雄英だなと電話帳から番号を探すと、意外な人物より電話がかかって来た。
「えっ、かっちゃん?」
あまりにも珍しい事だった。余程な事がなければ爆豪から電話なぞ無いし、自分から掛ける事が大半な爆豪からの電話に、緑谷は即座に通話ボタンをタップした。
『出久か?』
「もしもしかっちゃん、何かあったの?」
最初の声色に怒りや怠惰の色がない……余程の真面目な話だと緑谷は気を引き締めた。
『……その様子だとヒーローネットワーク見てねぇみてぇだな?テメェんとこ含めて全国規模の事件起きとんぞ』
「えっ」
『今岡山に居るジーパンとこでチンカスとインターンに職場体験しとったんだが……岡山駅前で中学のガキが、個性で人を殺そうとした挙句、俺らが取り押さえたら自決しやがった』
爆豪から聞かされたのは、今こちらと同じ『中学生による個性使用と自決事件』であった。もうヒーローネットワークに流れていたのかと緑谷はまず考えたが、いや遅いと理解した。
今現在、夜も近い時間帯で、自分たちは昼間にこの事件と対面した。仮免を取ってからヒーローネットワークのアクセス権限を得て、情報のリアルタイム更新の速さに驚いたのが去年。
それがこんなにも遅い、まさかネットワークにも皺寄せが来てるのかと、緑谷は今の日本ヒーローの現状、傷の深さを改めて知らされたのだった。
「そっちどころか……全国?」
『切島とファットが大阪道頓堀で、九州では常闇、東北に行ってる砂藤と口田が同じ事件に遭遇したとよ……中学のガキが自決にヒーロー襲撃……聞いた話じゃ、行方不明になったプロやサイドキックまで出てるらしい最近の事件と関わりがあるんじゃあねえかってなってやがる』
それを聞いて、緑谷は口元を押さえた。今、自分や通形、光が直面した事件はこの静岡以外でも起きていると。全国規模の中学生達の暴走、自決という怪事件としてヒーローネットワークで今ようやく上がったらしい。
『で、だ……出久に確認してぇんだが』
「何?」
『死ぬ間際そいつら、ミカエル様とか名前呼んでたか?』
「……呼んでた」
それもまた、同じ名前を吐いていた。あの中学生達は血を身体から吹きだし、吐きながらに呼んでいた名前。
『ミカエル』
宗教には疎い緑谷だが、その天使の名前くらいは知っていた。確か七大天使の一人で……一番偉い天使だったよなと。死の間際、学生達がその天使の名前を呼んでいたが……緑谷は頭を押さえながら電話口に爆豪へ言う。
「ヘビメタ好きがさ……」
『あ?』
「酒飲んで、ヘドバンして悪魔崇拝ごっことかなら分かるけどさ……中学生が天使の名前呼びながら毒薬キメてヒーロー襲撃って、そこまでヒーロー社会崩壊してたっけ?」
復興の最中に起きたこの異常なる事態に、現実なのかよと再確認する緑谷に、爆豪は言い切った。
「……残ってんだろ、そんぐらい、ヒーローに対する不信も、不安も」
「まだ先が長いね、かっちゃん」
「もう切るぞ、せいぜい死なねぇように用心しとけや」
「お互いにね」
互いに用心と警戒を、爆豪との通話はそれで終わった。久々のインターンであり、一年生の職場体験としては波瀾万丈極まりない始まりであった。
緑谷は、次いで雄英、自宅に電話をかけながら考えた。このまま光くんを、この事件に巻き込むのは危険だろう……どこかで職場体験の範疇を越える事態になったその時は、先輩として彼をしっかり守らねばと。