【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
『わ、悪かったって!馬鹿にして!!』
『隠してたのかよ!?個性使えるの!!』
『ゆ、許して、命だけは!』
『なにやってるの法水(のりみず)!?あ、あなた、それは!!』
『やめなさい法水!やめ━━』
目を開けた銀髪の少年は、廃工場の仮眠室を彩った私室にて目を覚ます。傍には裸体で、自分の体を抱きしめた配下の天使、ガブリエルが寝息を立てていた。
自分も裸体を晒し、床にあるスキンの空箱を見て……そうしたのかと思い出す。
「起きたのミカエル?うなされてたけど……」
ガブリエルは妖しく笑いながら、ブランケットで身体を隠して頬杖をつきながらミカエルを見上げた。
「少しね……救世主になる前、僕を迫害した奴らの夢をね?まぁ、全員もうこの世に居ないから気にする必要はないんだけどさ」
「そう……私をいじめてた奴らみたいに殺したの?」
「殺したさ、復興中の事故に巻き込まれた、って形にした」
「まぁ、そうなって然るべき奴らだったのよね……ミカエル」
ミカエルの腰を指でなぞるガブリエルに、ミカエルはそのままベッドから立ち上がり乱雑に脱いだ白の改造学ランや、シャツを取り上げて身につけ始めた。その姿を見たガブリエルはブランケットで身体を包み裸体を隠す。
「ウリエルから報告はあったのか?」
ミカエルから尋ねられ、ガブリエルは少し眼差しを鋭くして不機嫌気味に言い放つ。
「もう少しピロートークしてくれてもいいじゃない、あぁんなに僕へ腰振っといてそれは無いんじゃない?」
「楽園を築いたらいくらでも囁いてあげるからさ……そう不機嫌になるなよガブリエル」
ミカエルのあしらいに、ガブリエルはプイとそっぽを向いたが自らも起き上がり改造詰襟に手を伸ばして着直し始めた。そうして身支度を整えて錆びついたドアを開けて、二人は向かう……彼らの『楽園』の中枢へ。
「あ、来た、また乳くりあってたの二人とも?飽きないね本当にさ」
玉座の間、この『楽園』の中枢、硝子の円筒立ち並ぶ空間に、白衣を羽織った同士ラファエルが、入ってきた二人を見て呆れ顔で言い放つ。その言葉にガブリエルが、ミカエルの腕を抱きしめながら言う。
「私とミカエルは赤い糸に繋がれたアダムとイヴなの、飽きるなんて話じゃないのよラファエル?心で繋がってるの」
私たちの行為はそんな下賤で汚らしい物ではない、心のつながりを確かめるコミュニケーションだと嬉々としてガブリエルは語る。
「……アダムとアダムだろ」
が、ラファエルのこの言葉にガブリエルは笑顔を一気に豹変させ睨みつけ、ラファエルは少し後退った。
「ガブリエル、よせ……ラファエルも、それは禁句、彼女はイヴだ」
ミカエルは抱きしめられた反対の手でガブリエルの目元を遮り、ラファエルを嗜めた。これにはラファエルも悪かったとばかりに頭を下げた。
「……失礼しました、ミカエル」
「ウリエルから報告は来てないか?」
「各地で、信徒とヒーローが戦闘を行ったと、全ての地域で敗北し自決……ガブリエルの個性から作った"愛"の効果はちゃんと機能してると」
「あたり前じゃない、私の愛が詰まってるんだから……ラファエル?あんたこそ尖兵の調整、ちゃっちゃと済ませなさいよ、見たら理解できるんでしょ?」
先程の失言の仕返しとばかりに、ガブリエルはラファエルを責めた。個性があるならさっさと尖兵の調整を済ませろと、ラファエルはため息を吐きながらガブリエルに言い返した。
「ああ、理解はできる、だけどそれを実際"行う"事は全く違うんだガブリエル、言い訳になるけど……僕の個性はあらゆる文献も一度読めば"頭に入る"が、それを自分で行うのは出来るできないがあるんだ、160km/hの球を投げれる正しいフォームが頭に入っていても、いきなり投げれるわけじゃない……愛の製薬だって、道具を信徒から送らせて、いざ製薬するまで大分時間が必要だったんだ……」
そう簡単に言ってくれるなと、ラファエルは己の個性にも出来る事、出来ない事があると語れば、ガブリエルは馬鹿にするように言い返した。
「屁理屈こねて、頭しか役に立たないんだからせめてその辺りはしっかり結果出しなさいよ」
それには流石にラファエルも苛立ちが湧き上がるや、ガブリエルに言い返す。
「何だと……お前だって材料しか出さないただ常川にくっついてるだけだろ、ユウビ!いや……ユミ!」
「その名で私を呼んでいいのはミカエルだけよ!」
「やめろ二人とも、ガブリエル?ラファエルは良くやってくれている、彼がいなければ楽園建造が何年も先だったんだ、それをより早める事ができているのはラファエル……我が親友、那由多のお陰なのだから」
二人の口論にミカエルは待ったをかけて止める、そもそもこの『楽園建造』は何年掛かるか分からない話であり、その期間を短縮できているのはラファエルの名を冠した、親友である那由多のおかげだと、ミカエルはガブリエルをそう言って諭す。
「あ、いや……そんな親友だなんて……尊敬するキミからそう大切に言われるとは、常川くん」
ミカエルから『親友』と呼ばれたラファエルこと那由多は、頭をかきながら照れた。自分からすれば尊敬する男からそうまで言ってくれるのかと、彼の本当の名を呼ぶ程だった。
「おっと、ここでの僕はミカエルだ、ラファエル……期待しているよ我が親友。頭脳で君の右に出るやつは居ない……かの個性研究の異端、AFOの懐刀である殻木球大の研究を理解し、この工廠で尖兵製造と調整を行えているのだからね?」
「Jawohl!……任せてくれ、ミカエル」
背筋を伸ばして、ラファエルは声を張り上げて持ち場に戻った。その背中を見送り、ミカエルはまだ機嫌の悪いガブリエルを側に連れたまま玉座の階段の前まで歩けば、ようやくガブリエルは腕を離した。
「同志ウリエル」
「何だ、気付いていたのかミカエル」
ミカエルの声に、天井から青い翼を羽ばたかせ、着地した。
「なぁんだ居たの、愛の配布は済んだわけ?」
「もう終わってる、が、ミカエル……やはりヒーローは手強い、各地で天使が戦闘になったが全て敗北した……戦力としてはやはり心許ない」
「聞いてるさ、ラファエルから」
階段を登り、玉座に座ったミカエルが、ラファエルの報告は既に聞いたと答えれば、肘掛けに肘をつき頬杖を付く。
「調整が済んだ尖兵……その試運転を兼ねてヒーロー達にいよいよ喧伝しようと思う」
それを聞いたウリエルは、少し考え発言した。
「数は増えているが、まだ早すぎると思うが?尖兵もその一体しかまだ調整が済んでないのだろう?」
確かに『天使』の数は増えているが、まだその時ではないのでは?と尋ねるウリエルに、ミカエルはこう返した。
「今回は、僕も出る……同志ウリエル、神野区の天使を招集し部隊編成をしておいてくれ」
その返答に、ウリエルはああと納得した。
「成る程、キミが出るなら成功するか……して、なぜ神野を?」
キミが出るなら喧伝も成功するだろうなと、だが何故神野なのか?その問いかけにミカエルは笑みを浮かべ答えた。
「あそこにはうってつけの場所がある、オールマイトがAFOを打ち破った場所、そこで僕たちが名乗りを上げ、ヒーローに力を見せつける……何より、今手薄なんだよ、No.1ヒーローエンデヴァーが引退した為にその近辺はね?」
救世主ミカエルの答えに、ウリエルは納得した。ならばとウリエルは、右手親指を噛み、血を流せば床に何やら字を描く!
それは『鉤十字』!かつてのドイツを支配した独裁者が掲げたマークを描くや、そのコンクリートの床は水面のように揺れを起こした!
「分かった、なら先に行って準備しておく、ラファエルに尖兵の輸送準備を頼んでおいてくれ」
「頼んだよ、同志ウリエル……門脇くん」
「任された」
水面のようになった床に、ウリエルこと門脇は足を入れれば池に落ちたように一気に沈み、そして揺れは収まりコンクリートの硬さを取り戻した。
見送ったミカエルは、足を組みながら虚空に呟く。
「さぁ、ヒーロー達……新たな救世主の前にその膝を折る日は近いぞ」