【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
神奈川県横浜市神野区……そこはかつて、巨悪AFOが、オールマイトにより打ち倒された場所であり……轟焦凍と、その兄である轟燈矢ことヴィラン連合の一人『荼毘』の決戦の地でもあった。
その跡地にはオールマイトの活躍を讃え、スタンディングしているオールマイトの銅像が建てられ、銅像を中心に広場が整備されていた。
社会が崩壊した際は、落書きされたり『私はもう居ない』と書かれた看板が吊り下げられていたが、今はその様子もなく静かに佇んでいる。
それを見上げ、轟焦凍は綺麗に整備されて戦いの跡すら一切消え去っている事に、悲哀が少し胸から湧き出した。溶けたオールマイトの像は新たに築かれ、崩壊したビルはもう一切見当たらない。ここで二度大きな戦いがあり、一度は自分が戦った事も無くなったかのようだった。
「焦凍くん、ボーッとしない!」
「あ、はい、すいません……バーニンさん」
呆けるなと檄が飛び、轟焦凍は意識を引き戻し返事をした。父、エンデヴァーのサイドキックの一人であるバーニンからであった。
轟焦凍は、ヒーローインターンを、父エンデヴァーの下で再開していたのだった。緑谷や爆豪には面倒見れない状況にあると伝えたが、なら自分も他所でと思っていたが……エンデヴァーではなく、そのサイドキック達からの希望であった。
「悪いな焦凍くん、インターンとは名ばかりの動員になっちまった」
「私的な理由でもある……けど、あの人が引退して担当区域は一気にヴィラン犯罪が増えたんだ」
同じく、エンデヴァーが側に置いていたサイドキックの代表格、オニマーとキドウもその場に居て、轟に謝罪した。
「構いませんよ、俺こそ親父の尻拭い皆様にさせてるみたいな物ですから」
轟からすれば、父の引退の皺寄せを、息子である自分がしなければ誰がやるのか?という気持ちがあった。
かつて、エンデヴァー及び、エンデヴァー事務所のサイドキック達が担当していた範囲は、ヴィラン犯罪が著しく増えていた。復興も大詰めともなり、ヴィランも大戦の疲弊から回復したとばかりに活動している。
そして、エンデヴァーの引退……これが大きかった。たった数ヶ月のNo.1だったが……それでも、彼のヴィラン検挙率はオールマイトを上回り一位であり、その実直さと容赦無い働きぶりは『治安維持』のシンボルとしてヒーロー社会を担っていた事が分かった。
オールマイトは去り、エンデヴァーが居なくなり、さらに言えばホークスも個性を失った今……象徴無き時代に戻ったとも言えよう。
「エンデヴァー事務所でも、辞めたサイドキックに、大戦で亡くなったり、復帰ができなくなった奴ら多いんだ……」
「今はよその事務所のヒーローと連携して、元々担当してた区域もお願いしたりしてる」
「はっきり言うと、忙しさならオールマイト引退直後以上だよ、これは」
かつて父と、そのサイドキック達が管轄だった区域に手が回らない。人員不足と、エンデヴァーという強大な象徴の喪失は、この多忙さという形になり、息子の轟焦凍の肩にのしかかった。
なんで俺が……そう言っても許されるくらいには、轟焦凍は父エンデヴァーの過ちを知っているし、その被害を受けて憎んでいる。しかし、轟焦凍はそれを決して口にしなかった。
エンデヴァーの息子としてでは無い、しかし他に代わりは誰が居る?自分以外に、この責任を果たせる者は居ないのだからと、父を支えたサイドキック達と共に、ヒーロー活動を行っていた。
広場で警戒を強める中、今日はやけに静かな気がするなと辺りを見回す轟。かつてのインターンで教わった、五感を研ぎ澄ませという教え通り、些細な事態を見逃す気は無いと入れ込んでいた。
「傾聴セヨ!!」
唐突であった。拡声器越しに増幅した声に轟も、炎のサイドキッカーズも、何より広場を移動していた民衆も、その声に立ち止まり、声の方を向いた。
そして見た、異様なる集団を。
2〜30名か、一糸乱れぬ整列で広場に陣取り、後ろに手を組み休めの姿勢で直立し、左右には旗を掲げる制服姿の少年達!何よりその旗に、オニマーやキドウはあっけに取られた。
「おいおいおいマジかよ、鉤十字の旗だと?」
「第二次世界大戦じゃあねぇんだぞ?何事だ?」
第二次世界大戦のドイツナチスシンボル、ハーゲンクロイツ掲げた軍服じみた学生服の少年達、もうこれだけでヒーロー達は、動かねばならない筈だった。
だが……動けなかった。オニマーにキドウも、文句こそ吐いたが即座に動ける筈なのに、その声を悠長に聞いていた。
「何やってんだろうね、デモ活動なんて届けはあった?」
バーニンすらも、学生のでも活動かなと呆れた風に思いながら顔を向けてはいたが止めには行かなかった。
轟すらも……この異様な集団を『おかしい』とは思えど、バーニンがデモ活動かと言ったので、そんな集団かと見るだけになっていた。それなのに、この話は聞いておくべきなのかもしれないと、止まって集団の話を聞き続けた。
拡声器を持つは、他の制服と明らかに違う純白の制服を着た少年。髪の毛も銀色で、肌も日本人らしからぬ白さな少年は、立ち止まった民衆に演説を始めた。
「この国は……再び偽りの社会を築こうとしている!!」
拡声器から響いた声は、より民衆を惹きつけた。聞かねばならない、耳を傾けねばと皆が少年の声に耳を傾けた。
「オールマイトは去り、エンデヴァーとホークスというヒーローの不祥事は断罪もされぬまま!またもう一度偽りの平和で蓋をして!再びこの日本は後戻りしようとしている!!また、この国は繰り返そうとしている!!」
轟は、その通りだよなと意識が遠くなるなかで、父が許されない所業をしていたのは事実だと頷いた。
「この国はまた繰り返すのか!?同じ事を!!我々はそれを断じて許しはしない!!我々、聖救国騎士団は宣言し、此処より始める!!このかつての象徴を廃し、ヒーローという偽りを滅し、我々が新たなる日本の秩序として君臨し、日本を、ひいては世界を救う事を!!」
遠のきかけた意識の中で、轟は思い返した。
同じだと……この甘ったるくて、従いそうな感覚、いいように頭を揺り動かすのは、かつて現れたダークマイトの配下の女より食らった夢に堕ちる催眠に似ていると!
だから、轟は戻って来れた!そして理解する!!
「催眠攻撃か!?」
左右で呆けているバーニン、オニマー、キドウ。聞き入る民衆達も魂が抜けたようになっているのを見て、轟は即座に左足から冷気を地面に伝わせた!
「まずは、このオールマイトの君臨する広場より我らの粛正を━━」
「ミカエル!!」
その冷気は巨大な氷の波となり、制服の集団。『聖救国騎士団』全てを飲み込んだ。