【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
緑谷出久が検査入院にて一夜を明かし、インターン二日目を迎えた翌朝、光と通形と朝イチでナイトアイ事務所に出勤して、その報せはナイトアイから語られた。
「「ハイエンドを従えた学生ヴィラン!?」」
「ああ、神野区に現れ、それをエンデヴァー事務所のサイドキッカーが対処したと」
光は話に付いていけなかったので、まず質問からする事にした。
「あの、ハイエンドとは?」
「かつて、AFOや死柄木が従えていた改造人間の脳無ってのが居て、その一番強い個体」
「エンデヴァーが1位になった直後、九州で退治した敵……って言ったら分かる?」
「あっ……あの黒い化け物!神野に現れたんですか!?」
例として出しやすいのがかつての九州の件で、それを聞いて光はあの化け物かと理解した。
「脳無が現れた以上、警察もヒーロー公安委員会も一気に本腰を入れ始めた、何しろAFOの懐刀が生み出した兵器……噂のAFOの遺産とやらかもしれないと言われ始めている」
ここに来て、サーの口からも『AFOの遺産』という言葉が出てきて、それが絡んで来た事件だろうなと緑谷も頷く。流石に在野のヴィランが脳無を所有なぞあり得ないだろうから……いや、資金集めで兵器売買の形で売ってないよなと緑谷は少し肝を冷やした。
「それで、神野の監視カメラから主犯の映像が撮れていて今回の犯人は特定し、情報も上がってここにある」
「早っ!?」
「大っぴらに広場で宣言していたらしいからねぇ……」
さらに言えばと、ナイトアイはすでに主犯格の情報も挙がっていると言いながら茶封筒を見せて、来たので光は昨日ですよねと驚き、大々的に現れ宣言してから逃げたのでそれはそうなると通形は苦笑した。
ナイトアイは茶封筒の紐を解いて写真とレポートを机に広げれば、緑谷達もそれらを確認した。
「まず、ウリエルと呼ばれていた青羽の少年、門脇元次……中学二年生で業寒市(ごうさむし)の蛍陽中学の生徒との事らしい」
「中学生が……僕の二つ下がこんな事を?」
主犯格の一人の名前と現場の映像を切り取った写真、そして市役所に届けられた個性届や写真を見て、光は信じられないと疑った。自分より年下の中学生が、こんな犯罪を行なっているという事実……その呟きに緑谷は答える。
「年齢は関係無い、僕が出会ったヴィランには、老人も居たし同じ年代の学生も居た……その気になれば誰だって個性使ってヴィラン犯罪は起こせる」
年齢は関係無い、ふとした気の迷いでヴィランには誰しもなりうるのだと緑谷の言葉に、光は生唾を飲み込むと、話が止まったとナイトアイが続けた。
「続けるぞ?この門脇元次は、個性届には『蒼翼』という飛行できる羽の個性らしいが、監視カメラと現地で対峙した轟焦凍からの証言から"マークを描いた場所から消えた"と、別の個性を行使した情報が入っている」
「えっ、それって……」
「個性の複数持ちが居るって事ですか!?」
ナイトアイから語られた更なる情報に、緑谷と通形は驚いた。複数個性を持つ事例は、それこそAFOのような他者から奪うヴィラン、因子を植え付けられた死柄木弔くらいだ。
轟焦凍のような両親の性質が出た、とかではなく唐突に現れたとなれば、最早AFO関連を疑うしかなかった。
「で、問題はこちらだ、恐らくは今回の首魁だろう彼、ミカエルこと常川法水だが……」
また天使の名前、この学生ヴィランのコードネームらしい。広げられた写真には……。
「えっと……どっちがその常川くんですか?」
緑谷は出す写真間違えましたかとナイトアイに尋ねた。片方はいかにもな、特撮や映画に居そうな銀髪に純白の制服を着た少年。もう片方の写真は、普通の眼鏡をかけた中学生の姿であった。
「同一人物だ、こちらの銀髪は恐らくは変装にメイクだろう、警察ならこの程度のメイク簡単に剥がせる」
「す、凄いよね、ここまで人間メイクで変われるなんて……」
あまりにもな変貌に、警察の捜査力よりもここまでメイクで変貌できる事実に通形は驚く。だが、本題はそれではないとナイトアイは続けた。
「この子は避難生活の時に両親を亡くしたらしい、それからは親戚も無く養護施設に送られる予定が行方不明になっていたそうだ……そして……彼は無個性の筈だったが、様々な個性を使い轟焦凍と交戦して敗走したらしい」
「え、敗走したんですか?」
「轟くんは……苦戦とか……」
「最初催眠にかかりかけて危うかったが拘束できたと、門脇の個性で逃してしまったのを悔いていた」
このミカエルなる少年も、複数個性持ち、しかし元は無個性だったようだ。そして今回の大規模ヴィラン犯罪のリーダーらしいが、轟と戦って負けて逃げたと聞いて、緑谷はポカンと呆けた。
いや、轟焦凍が負けるなぞ緑谷出久は思ってもいない。いないのだが……緑谷は通形に顔を向けて、今僕が思ってる事は先輩にも分かりますか?と、眼差しで尋ねてみた。
「えっ……と……サー?その、今回のこの学生ヴィラン……行き当たりばったりというか、犯行が稚拙な気が」
意図を汲んだ通形も、やるせない顔でナイトアイにそう尋ねた。ナイトアイも、溜息を吐いて気持ちは分かると証拠物件を纏めながら語り出す。
「ああ、だが……その稚拙な犯罪で死人が出ているのも事実だ、あまりにも稚拙で無責任で、だからこそ我々ヒーローは許すわけにはいかない」
サー・ナイトアイは語る、だからこそ許してはならないのだと。幼稚なごっこ遊びのつもりだろうが、死人が出ている以上、ヴィラン犯罪に変わりはない、ナイトアイは緑谷達に言い渡した。
「ルミリオン、イズク、2人には今から業寒市へ行き情報収集を頼む」
「了解です、サー」
「分かりました」
ナイトアイから指示を飛ばされた一方、呼ばれなかった光はナイトアイに向かって尋ねた。
「あの、ナイトアイさん、僕は……」
「この件は職場体験のキミには少々手に余る、これからはバブルガールとセンチピーダーと周辺パトロールに従事するように」
「わ、わかりました!」
妥当な判断であった。まだ仮免許を持たない職場体験の学生には、死人が出ている事件は荷が重い。あくまで職場体験であり、その範疇を超えた事態からヒーローは、学生を守る義務がある。
苦惜しい気持ちはあるかもしれないが、今はちゃんとプロヒーローの姿を見る事も大切だ。緑谷の方に光が一度目を向けたが、それに対して緑谷は頷いて、彼は納得したように視線を外した。
「ではルミリオン、イズク、頼んだぞ」
「「了解!!」」
ナイトアイの号令を受け、緑谷は通形と二日目のインターンに向かった。事務所を出て、階段を降りながら緑谷はふと呟く。
「しかし、業寒の蛍陽中の子がヴィラン犯罪とは……世も末だなぁ」
「知ってるのかい?イズク、その蛍陽中学校を?もしかして出身?」
「いや、僕は折寺中ですけど……」
緑谷の呟きに通形が尋ねた、知っている学校なのかと。もしかして出身だったりするなかと。緑谷は、違うがしかしと通形に語ることにした。
「私立中学で人気あったんですよ、蛍陽中学校って、学帽ありで詰襟もビシッとしてて、折寺区の隣に業寒市があるんで近いですし……」
「へぇー、私立中学!名門ってやつ!?」
「えぇ……勉強疲れか教育虐待の果てにやらかしたのか?」
此度の主犯格は、名門私立中学の学生である。その生徒がこのような犯行を行なっている事実に緑谷は頭を傾げながら、業寒市へ通形と向かうのであった。