【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
業寒北区、光と緑谷と合流した通形は、緑谷が手に入れた情報を元に、聖救国騎士団の支部代わりとなっている廃教会に到着した。打ち捨てられ廃墟となり、解体する金も無く放置された、蔦も絡む年代物の廃教会。
車で来てみれば道路も手入れされてない、孤立したように郊外に建てられていて、それこそ廃墟巡りが趣味だったりするような輩でもなければ足を運ばない立地だった。
車から降りた緑谷、通形、光の3人。目視で気配は感じない、嘘の情報を吐かれたかと緑谷は眉間に皺が寄った。
「どうします?一気に行きますか?」
朝イチ襲撃を受けた緑谷は興奮と苛立ちから、さっさと終わらせようと少々先走る気が出ている。それを通形はなだめながら、緑谷に言った。
「俺が偵察してくるよ、逃げ漏らしは避けたいからね」
「了解です」
通形がまず偵察を買って出た。こんな状況だから、彼の個性『透過』は十二分にその強さを発揮できる。早速、地面に潜るように消えていった通形ことルミリオン、廃墟内の偵察が終わるまで、時間は掛からなかった。
「見てきたよ」
「どうでした?」
再び地面から抜け出てきた通形に、緑谷は尋ねると、通形はため息を吐いた。
「出払ってる、ってやつだよね、使った形跡は見て取れたけどもぬけの殻、とりあえず調べてみようか」
およそ、手掛かりになる物は無いかもしれないが、確かに詰所としてこの廃教会は使用された形跡があると通形は答えた。徒労だったか?いや、それは調べたらわかると、緑谷は光に目配せすれば、光も頷き、3人は改めて廃教会の正面から入るため歩きだした。
両開きの扉が、経年劣化で見かけより重々しく。イズクは力を込めて引き開いた。拡がっていたのは、いかにもな形式の教会だった。左右に並ぶ長椅子、敷かれて埃が舞う赤絨毯、床にはここで休憩したのか知らない、まだ新しいスナック菓子の袋やらが散乱していた。
3人が特に目を引いたのは、最奥の十字架が倒されて、奥の壁に刻まれた『鉤十字』だろう。果たして意味があって刻んでいるのか、一時の気の迷いから描いたのやら。
「通形先輩、緑谷先輩、あの鉤十字……たしかウリエルの」
「だよね、個性で移動に使うマークだ」
その鉤十字は、轟が交戦した聖救国騎士団幹部、ウリエルが黒霧の様なワープに使うマークだと、光もしっかり此度の事件の手掛かりは頭に入っているようで、通形は感心した。
『誰かと思えば、ヒーローがたった3人とは……』
そんな3人の耳は、確かに声を捉えた。光は即座に辺りを見回したのに対し、通形と緑谷は悠然と、迎え撃つ為に落ち着いていた。
そして現れる。奥の鉤十字から、水面よりゆっくり上がってくるように壁が波打ち、ナチ軍服に軍帽、蒼い翼を生やした少年が、そのまま3人を見下ろすように羽ばたいた。ヒーローネットワークにも拡がっている、聖救国騎士団の幹部『ウリエル』こと、門脇元次が姿を見せたのであった。
「態々現れてくれるとは、そのまま逃げ隠れしていたらまだ寿命は2〜3日伸びたかもしれないだろうに……勝てると踏んで姿を現したの?」
現れ見下ろす門脇に、緑谷は見上げながら言い放つ。そちらから現れてくれてこれ程の僥倖は無いと、判断を誤ったなと宣う緑谷に対して、門脇……ウリエルは指を鳴らした。
「勝てると踏んで?勝つから現れたんだ」
その合図とともに、廃教会の床のあちこちが光を放つ。地面から次々と現れる鉤十字!その紋章から現れるは……脳が剥き出しとなった改造人間『脳無』!!それらが十数体現れ、緑谷達を取り囲んだのだ!
「量産型の我らの尖兵!試作とはいえこの数だ、ヒーロー3人では相手にならないだろう!そのままお前たちを肉片にし、新たな尖兵の材料に━━」
取り囲んだ瞬間━━その脳無の一体が、その肉体を破砕しながら、宙舞うウリエルの横を通過し、更に壁を破壊して外に吹き飛ばされ
「してや……え?は?」
ウリエルが見たのは、跳躍して足を振り抜いた緑谷出久こと、イーヴルヒーロー・イズクの姿。その双眸が、赤く染まりギラリとウリエルを射抜くや、ウリエルは一気に身体が凍りついた様な錯覚を覚えた!
「パァァアアアゥウウワァアアアア!!」
それだけじゃ無い!こちらが脳無に指示を出す前に、通形ミリオことルミリオンは!姿を床に消しては取り出して脳無達を殴り、蹴り!次々と吹き飛ばしていく!!
「え?あ、えと……え〜〜?」
対して職場体験の光は、囲まれた筈がポツンと構えこそすれど、既に先輩二人が脳無を次々機能停止させ、一体も自分には向かわせないと守られている事を理解させられるのだった。
果たして、1分と経ったかどうか……廃教会の壁に穴が開き、椅子や床には脳無が脳を砕かれ機能停止し、パンパンと手を鳴らすルミリオンと、首を捻り音を鳴らすイズクが、汗ひとつ流さず立っていた。
「光くん、覚えといて?怪人脳無は剥き出しの脳みそが弱点、尚且つ意識は既に持たない破壊衝動と命令をこなすだけの怪物だから、慈悲の一切なく殺し切る事、いい?」
「は、はい!」
さらに後輩にまで講釈を垂れる余裕をウリエルに見せつけ、その圧倒的な力にウリエルは顔面蒼白となり、信じられないと目の前の現実を否定する!
「ば、馬鹿な!こんなのあり得ない!!」
ウリエルは自らが現れた壁の鉤十字に飛び込んだ。
逃げた?違う!ウリエルこと門脇は戦う気だった!そのまま緑谷の背後の壁に鉤十字が現れ、そこからウリエルが現れる!
「緑谷先輩!!危な━━」
背後からの奇襲!通販か何処からか仕入れたか分からない鉈を振り上げるウリエルに対して、光が声を上げ切るよりも、緑谷は即座に振り返り……。
「せいりゃああああ!!」
「あぼぉはぁあ!!」
右の回し蹴りが放たれ、ウリエルの左側頭部を直撃!一撃でウリエルは2回転ほど宙で側転して床に墜落!ウリエルは白目を剥いて昏倒するのだった。
「見え透いた事を、所詮学生のごっこ遊びだな……」
痙攣し、昏倒するウリエルを冷ややかに見下ろし、緑谷はそう吐き散らした。しかしこれで終わりではないと、即座に次の仕事に緑谷は掛かる。
「ルミリオン、警察と……サーに連絡しましょうか、主犯格の一人を確保に、脳無の回収で」
「だね、俺はサーに電話かけるよ、ヒカリは警察に!」
「了解です!」
主犯の一人を見つけ、更に確保できた。それをナイトアイと警察に報告だと、各々が動き出す。ヒカリはスマホを取り出し、警察に電話を掛けようとした。
「ぐ……が……」
「!!」
しかし、まさかの事態が起きた。何とウリエルが意識を取り戻したのである!否!イズクが証言を得る為、いつもより弱めに蹴り抜いた為、意識を刈り取れなかったのだ!!
「しまった!浅かったか!」
「に、げないと……逃げて、ミカエルに!」
蹴りで切れた口内から血を指に纏わせ、そして鉤十字を地面に描くウリエルこと門脇!地面が水面の様に揺らぎ、その手足がずぷりと沈み出した!
「逃すかぁ!!」
緑谷が手をかざし、ウリエルを『引き寄せ』にて引き上げた……その瞬間だった。
何かが、砕ける様な音がして。
床の揺らぎが消えると同時に、ウリエルの右腕の肘から先と、両足の膝から下が……切り落とされた様に消え去った。
「え?あ、あぎゃああああああ!!ひぃいいいいい!?」
「はぁ!?何が起きた、今!!」
右腕の肘から先、更に両足が喪失しウリエルが血を吹き出す様に緑谷は絶句!只事じゃ無いアクシデントに、通形は光に指示を飛ばした!
「ヒカリ!そのまま救急とサーに連絡入れて!」
「は、はい!」
「ルミリオン!救急呼ぶ暇無い!!止血したら僕が運びます!!」
突如起こった、主犯格の個性事故。先程まで敵で、ヴィランだったはずの相手は泣き叫びながら血を吹き出させ、先輩二人に返り血を浴びせている。
ヒカリは救急、警察、そしてナイトアイ事務所と順に連絡を入れる中で、最後に緑谷がウリエルを蹴った瞬間の事を思い出していた。
あの瞬間……緑谷出久の右足から『赤黒い稲妻』が迸っていた事。
そして……緑谷出久の背後に『白髪に紅のボロ布を纏った男』が、見えた様な気がしたのだ。