【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
ウリエルこと那由多解理は、必死に逃げていた。まさかもう地下の本拠地までヒーローが来ていたなんて、いくら何でも早すぎると、勉強ばかりしていて無い体力を必死に、フルで使う様に、配管とガラス管の並ぶ道を走る。
対して緑谷は、空中より追い詰めてしまえばいいのに恐怖を与えるかの様にペースを合わせていた。逃げた先に首魁が居るかもしれないから、泳がせる意味も込めてか……ただ恐怖に敵を染める為かは知らない。
「ひぃ、ひぃい!」
やがて、ウリエルこと那由多解理は開けた場所に出て、そこでうつ伏せに倒れ伏した。様々なメーターやらPCの文字の羅列を見るに、この脳無工場の中枢らしい。足をふらつかせて、PCの前まで行くと、操作板に背中を預けて、酸欠の青白い顔で那由多は緑谷を見た。
「降参するか?今ならまだ、無期懲役くらいにはなると思うけど?」
個性使用による殺人に煽動、最早詰みではあるが、まだ命がある分マシだが?と、緑谷は那由多に問いかけた。しかし、那由多は必死に笑みを作り、緑谷に言い放った。
「ヒーローも、はぁ、馬鹿だなぁ、ぜぇっぜぇっ!僕たちには……はぁ、少年法があるんだよ、だから、ぜぇ、捕まえても無期懲役や、死刑には、なりはしないんだ……」
「……はい?」
緑谷は思わずそう声が出てしまった。この那由多くんは……所謂名門私立中学の少年らだよなと、まさか少年法を免罪符に無駄だから無駄だからあきらめろと言ってくるとは、苦笑超えて呆れしか出ないとため息を吐いた。
が、それは仕方ない。
『ヴィラン犯罪と少年法』は全く違うし、それを知るのは法律関係を勉強するか、ヒーローに深く関わる人間、警察くらいなのだから、まぁ勘違いする事なのだ。
緑谷は腕を組みながら、那由多へ間違いを指摘するのであった。
「個性使用における犯罪に少年法は適応されない、個性を使用した犯罪はヴィラン犯罪とされ、何歳だろうが行った時点で罪に問われるんだよ、知らなかった?」
「は、え……?」
「もしかして、捕まったらそれで少年院程度に済まされると考えてたの?だったらおめでたいね?個性使用の殺人に、洗脳、薬物製造に売買、殺人教唆……残りの人生タルタロスか、死刑がもう見えてるけど?」
那由多は酸欠の青白い顔がさらに青く染まっていった。彼はどこかで、許されると、やり直せると思っていたらしい。ここまでしておきながら、自分は未来ある少年だから法は味方してくれるとでも思ったのだろう。
そんな甘い話があるわけない、あってたまるかと緑谷の言葉に、那由多は虚勢を張るしかなかった。
「そ、それがどうした!ならここで僕たちがお前達ヒーローも、警察も倒せばいいだけだ!それだけの戦力もここにある!」
操作版のボタン一つを拳で叩き押し、エマージェンシーのブザーが鳴り響く!ふと、緑谷は那由多の背後に見えた、ケミカルで蛍光なピンクの溶液に満たされたガラス管から、溶液が吸い出されて中に見えた物を見た。
「かつてヒーロー社会を壊したAFOと死柄木弔!その懐刀である研究者!殻木球大が作り出した改造人間脳無!!その完成形"ハイエンド"だ!ミカエルから低級の数に割り当てる様言われたが、いざと言う時の為に作っておいたんだ!!」
鳴動する体組織に、電源が入ったかの様に光目、そしてガラス管のガラスはゆっくり開いて、ハイエンドが操作板やPCすら構わず踏み潰し━━。
「やれ!我らが尖兵!!そのヒーローを亡き者に━━」
その巨躯な足は。
「えっ?ぷぎゅら!!」
「えっ?」
ウリエルこと、那由多解理を踏み潰して、粉々の肉片へと変えてしまった。
これには、緑谷出久も面食らって、数秒硬直してしまう程であった。返り血まで浴びてしまったし、目の前にハイエンドらしき脳無が居るにも関わらず、その制作者がまさかまさか、それに踏み潰され呆気なく死ぬとは。
「え〜〜〜……?」
これ、現実か?踏み潰された那由多だった血のシミに肉片やらを見て、緑谷は顔を拭ってからそんな声しか出なかった。
しかもだ……その作り上げたハイエンドが、ゆっくりと地面に倒れると、腐った死体が叩きつけられた様に、臓腑やら筋繊維が破裂して、ゲル状になって跡形も無くなってしまったのだ。
失敗作、というやつだったらしい。
「……ただ知るだけじゃ作れない、と言う事か」
知識や図面だけではままならないようだと、悪臭放つハイエンドだったゲルを見下ろしながら、さらに奥を緑谷は見れば、両開きの自動ドア……いや、ゲートを見つけた。
その奥から確かに感じた、微弱なAFOの気配。
ミカエル……常川法水はそこに居ると、緑谷はゲルの中を歩き、ゲートの前に立つ。ゆっくりと自動で開くゲートを前にして、緑谷は右肩を回しながら奥に侵入した。
上級脳無に殴り飛ばされた光勝人は、呆然としながら白黒になった揺れる景色の中で、何をされたのかと理解するまで時間がかかった。
痛みは感じていなかった。脳からアドレナリンが分泌して感じさせなかったのだ、今の一撃で光の肋骨は数本折れたし、衝撃に横隔膜がせりあがり息すらできない状態だった。
だから、その数瞬がまるで何十秒にも感じるほどに思考ができたのかもしれない。
白黒の景色……たしか失神やらでも色を失う事を思い出し、その瀬戸際に自分がいる事を理解する。
その白黒の世界の中で、絆定寺が泣きそうな顔で叫んでいるのと、彼女に襲いかかる上級脳無の姿を見た。
カッコつけて、盾になって、このザマかと光勝人の意識の幕が降りそうになる。目の前で、今正に助けが必要な人が居るのに、倒れるのかと光は自問自答した。
倒れるな。
光の心が、魂が叫んだ気がした。
目の前の人も救えなくて、手の届く人も救えなくて、ヒーローになれるのかよと。
そんな些細な、少しでも、人の助けになりたいが為に、ヒーローになると自分で言っておきながら、倒れるのかと。
痛みは無い、なら幸いだ、その間なら存分に戦える。立て、光活人、立て!!
視界に色が戻った瞬間!!光の足底は光線を噴射し、一気に自分を殴りつけた上級脳無向けて飛びかかった!!
「うぉおおぁあああああああ!!」
確か、先輩はと、光は緑谷の戦う様を脳内から引っ張りだして、右足を思い切り空中で伸ばして、上級脳無の側頭部に叩き込んだ!
「ガァギァアアアア!!」
露出した脳が焼けて痛みを感じたらしい絶叫を上げる上級脳無!バーニアとして放出したビームに熱せられたヒーロースーツの靴が、脳を焼いたらしい。
隙を逃すな、間髪入れず、反撃を許すなと、光は更に上級脳無へ飛びかかる!そして!!
その上級脳無の顔面向けて、右手の掌底を放つ!!手のひらの中心に収束する、黄色い光線のエネルギーが青白く染まり、そして!!
バギュイイイン!!
爆音とも、金属音とも区別がつかない凄まじい高音域の音を立てて、上級脳無の頭部を青い閃光が発生し、脳無の頭部を削る様に消失させた!!
さながら、爆豪勝己が放つ『APショット』の如く!!一点集中発射の高威力ビームが、上級脳無を見事打ち倒したのだった!!
仰向けに、後ろへ倒れていく上級脳無の巨大。それを見据えた光は、緊張の糸とアドレナリンが切れて、痛みと脱力により膝から崩れ落ちた。
「光くん!大丈夫!?」
すぐさま、絆定寺は光の横に駆け寄り、楽な体勢を取らせて応答を確かめた。息は浅く、口から血を流しており内臓を痛めたかもしれないと、絆定寺は必死に声をかけた。
「は、はは……カッコ悪いなぁ、助けに来たのに、助けられる感じになってて」
「いいから、立てる?肩貸すから」
なんとも締まらない、カッコ悪いと光が呟くが、絆定寺は言ってる場合かと脇に腕を差し込み肩を貸した。助けに来たヒーローが、助けるはずの子に肩を貸されるも、支えがなければ歩けないダメージを負っている事に、ようやく光は気付いた。
「ああ……早く、ヒーロー達に……報せないと」
「大丈夫だから、光くん、私が後は引き継ぐから、後は任せて?」
それでも、頼まれた事が出来てないと語る光に、絆定寺は心配しないでいいと、彼を励ましながら、廃工場のドアを押し開いた。
それと同時に━━。
「ま、また揺れ!?」
廃工場区間全てを揺らす地震が、唐突に発生した。