※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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485話 偽りの救世主、再臨

 ゲートが開き切る……。

 

 左右に立ち並ぶガラス管、道は奥へ続き、その最奥には階段があった。その先には玉座があり、白い制服に銀髪の少年が座っていた。もう、いかにも自分が悪の帝王にでもなった様な、そんな出立ちの少年……ミカエルこと常川法水は緑谷を見下ろしながら口を開く。

 

「まさか、ここまでたどり━━」

「あーもう、いいからさ、そんなの」

「なっ!」

 

 緑谷は、身の毛もよだつ感覚から、それ以上喋るなと常川に言う。何かラスボス気取ってカッコ付ける気だったらしいが、遊びに付き合うつもりはないと、緑谷は歩み寄り、常川に近づく。

 

「常川法水、ヴィラン名ミカエル、逮捕状が出てるからこの場でお前を……!」

 

 さっさと終わらせようとした最中、緑谷の鼻が甘ったるい香りを捉えた。そして、緑谷は足が止まりふらついた。

 

「ふふ、馬鹿ね?たった一人で玉座の間に来るなんて……」

 

 ガラス管の裏から、改造制服に化粧を施した美少年が、嬉々として現れた。ガブリエルこと、雨谷誘魅はゆっくりと緑谷の前まで近づく。

 

「私が分泌するフェロモンにかかれば、男女構わず誰だろうと虜になり、命令に従うの……どこのヒーローか知らないけど残念、ミカエルには指一本触れさせないわ」

 

 そう、ガブリエルの個性『フェロモン生成』!!これにより分泌されたフェロモンを

緑谷は嗅いでしまったのだ!!がくりと頭から力が抜けて意志を奪われた様子に、ミカエルは呆気ないと頬杖をつき、偉そうにしながら返り討ちにあったヒーローが、傀儡となった事に笑みを浮かべた。

 

「ガブリエル、こいつは使えそうだ、せっかくだからこのままヒーロー達に差し向けてやれ」

「はぁい、ミカエル……さぁ、ミカエルの為に、ヒーローと警察を倒してきなさい」

 

 ミカエルの命令に、ガブリエルは勿論と緑谷の元に近づいて、命令を下した。しばらくして、力が抜けた首を上げた瞬間━━!

 

「あごぎゃああ!!」

「は!?」

 

 ガブリエルの左頬に、緑谷の薙ぎ払う裏拳が叩き込まれた。

 

 その一撃は、ガブリエルの左の顎骨から側頭骨周辺を粉砕し、亀裂は鼻骨から前頭骨にまで至り、かつてドラマにまで出た美少年の顔を無惨に破砕する。

 

 勢いのまま、ガブリエルの痩せ細った肉体は吹き飛んでガラス管を叩き割り、ガブリエルは痙攣して白目を剥きながら意識を手放した。

 

「ふん……」

 

 緑谷は一つ強く鼻息をしてみせ、何がフェロモンだ効いていないわと見せつければ、玉座からミカエルは立ち上がり狼狽えながら言い放つ。

 

「ば、馬鹿な!ガブリエルのフェロモンが効かないなんて!?」

 

 今まで薬品に加工してでも操る事が出来た雨谷の個性により作られた、自分に従うようになるフェロモンが、直に嗅いだのに全く効いてないとなれば、狼狽えるのもわかる。

 

 が、緑谷自身も身構えていたのだ、どこかでガブリエルこと雨谷と対峙した際に、呼吸を止める気構えはしていた。

 

 微かにそれを感じたのだが……緑谷には全く効いていなかったのである!雨谷のフェロモンは!

 

 何故か!?それは、この事件解決後に、雨谷と那由多が作った麻薬を飲み、操られていた『天使』こと、被害学生達に残留した成分、個性因子を調べたところ……。

 

 雨谷の生成したフェロモンが最も作用するのは『12〜14歳の思春期まで』と言うのが後になって分かるのであった。

 

 緑谷からすれば"趣味の悪い甘い香水の匂い、ミッドナイト先生の付ける香水の方がくらっときてしまう"となって、全く効果が無かったのである。

 

「ミカエル、いや、常川法水!大人しく降参するんだな……もう何処にも逃げ場も、仲間も居ないんだから……ヴィランごっこもお終いにしようか」

 これが最後通告だと玉座の階段真下まで近寄り、降参を促す緑谷。しかし、常川は顔を歪めて緑谷に言い放った。

 

「ごっこ遊びだと……ふざけるな!僕は神託を聞いた救世主だ!新たな楽園を作る為に神に選ばれたんだ!!この力が、その証明だ!!」

 

 あまりにも恥ずかしい世迷い事を自信満々に吐き散らしながら、常川は右手を向ければ、手のひらからレーザーを照射!緑谷はそれを体を軽く斜めにして最小限の動きで回避する!

 

 ミカエルはそのまま背中から、天使の様な白き羽を羽ばたかせて宙を舞い、さらに高みより緑谷を見下ろして言い放つ!

 

「我は救世主ミカエル!!この間違った世界を正す為に神より信託と力を与えられた真なる救世主(ヒーロー)!!この威光と力にひれ伏すがいい!!」

 

 世迷いを突き抜け、狂信じみた名乗り。かつて無個性だった少年が、ある日天から降り注いだ光に貫かれ力を手に入れた。さながら、神話や奇跡、物語の序章を思わせるなんともドラティックな話だろう。

 

「残念だけどさ、その力は神様の贈り物じゃあない……もっと悍ましい、寄生虫じみた悪の煮凝りの破片だよ」

 

 だが、緑谷は知っている。その力の正体、放つ気配から確信した!それはあの日世界に散ったAFOの『個性因子』!それに彼は貫かれ、個性を手にしたのだと!

 

「もう一度言う、ごっこ遊びは……終わりだ!」

「だぁまぁれぇえええええ!!」

 

 絶叫と同時に羽が羽ばたいて加速!ミカエルの拳が緑谷に振り下ろされ、それを両手で受け止めた緑谷!その力は受け止めた緑谷の足元からクレーターを作り上げる程の威力で、地上にまでその力が地震となり伝播した!

 

「どうだ!この力!!オールマイトにも劣らないこのパワー!何処の馬の骨か知らないがこのまま押し潰し━━」

 

 何ならこのまま押し潰してやると力を加えたミカエルだったが━━。

 

「え、あ?」

 

 ミカエルは見た、その力で押し潰そうとするこちらを、両手で防いでいた緑谷が、ゆっくりと片手に切り替えて支える様を。そのままにしとけとばかりに、ガラ空きになった右手の拳を握りしめて!

 

「はぁああ!!」

「おごぉおお!?」

 

 放たれた右のボディアッパーが、ミカエルの胸板に叩き込まれて、拳がなんと胸板にめり込んだのだ!!その一撃は胸骨を破砕して左右肋骨に衝撃を伝播させ粉々にした!!

 

「おおらぁあああ!!」

 

 その拳の勢いのまま、振り抜いて緑谷はミカエルをコンクリートの地面に叩きつける!ミカエルの身体はバウンドし、宙を舞うや、緑谷は右腕を振り抜き叫ぶ!

 

「Get over here!!(こっちにこい!!)」

 

 右袖から放たれた鎖苦無!普段こそ肩程度に放ち引き寄せる保護に使うその切先は!

 

「ぎゃあ!?」

 

 なんと!ミカエルの額を貫いた!!前頭骨に脳漿にまで達した苦難はしっかりミカエルにひっかかり、それを引っ張って引き寄せるでなく、再度緑谷はコンクリートの地面にミカエルを叩きつけた!

 

「がぁああああ!!」

 

 しかも頭から!危険な角度から!!頭蓋骨が更に割れて、額骨も砕けるミカエル!!さらに!!

 

「イーヴル・X-RAXコンボ!!」

「ひぎぇえ!!」

 

 跳躍した緑谷は、右足底にてミカエルの頸椎を踏み抜き粉砕したのであった!!

 

 最早半死半生なぞ生ぬるい、確殺の連繫を叩き込まれたミカエル!そのままバック宙でミカエルの首から降りた緑谷は、血を吐き痙攣するミカエルを見下ろした。

 

 ミカエルからすれば、待ったをかけたくなる攻撃だった。中学生ながら、理解せざるを得ないほどの攻撃!目の前に居るのはヒーローのはずで、ヒーローは殺しは法度なのに……目の前のヒーローを名乗る男は明らかに自分を殺しにかかってきてるのだと!

 

「あ、あぐ、うぅああ……」

 

 幸いだったのは、ミカエルの持つ個性『救世主』の中の一つ『超再生』があった事だろう。これにより臓器が破裂しようが、骨や脊柱や延髄が砕け、損傷しようが再生して元通りになる。ダメージは回復してすぐに戦える!!

 

「超再生や超回復持ちのヴィランを相手に、ヒーローがどう勝つかご存知かな?」

「は、はぁ?」

 

 延髄の損傷、砕かれた肋骨や胸骨が再生していく中で、逆に見下ろしてきた緑谷より、ミカエルは問いかけられた。終わりが見えない、再生し治り続ける敵をヒーローはどう倒すのか?

 

「細胞の一つまで消し去る?その為に酸の海でも用意する?もっと簡単な事があるんだ……それは……」

 

 その答えを語る緑谷に、ミカエル……いや、最早救世主の皮が剥がれた、ただの中学生常川法水は、凄まじい恐怖を感じながらその答えを突きつけられた。

 

「心砕けるまで、ぶちのめし続けるんだ、個性と精神は密接でね……弱気になると個性も弱まる、再生や治癒の個性持ちもさ、心折れると傷の治りが遅くなり、やがて止まるんだ……さて……」

「ひっ!?」

 

 拳を握りしめ、骨を鳴らして、緑谷は治りきった常川に言い放つ。

 

「何十回ぶちのめしたら、心折れて治すのやめるかなぁ?」

 

 この言葉で、常川法水の心は砕け散った。こんなの聞いてない、こんな筈がないと、頭の中で現実を否定する言葉が渦巻く。

 

 最後に残ったのは『死にたくない』と言う感情だけ。この目の前のヒーローは、倫理や決まりをすっ飛ばして自分を殺す気だと理解したから、常川はどうしたらこの状況から助かるのかと必死に考えた。

 

   モラウヨ、コノニクタイ

 

「え━━」

 

 だから、神託の声が聞こえた瞬間、常川法水の意識は飲み込まれて、死を迎えたのだった。

 

「おご、おおあぁああ!?」

「えっ?」

 

 そして、常川法水の精神の『死』により……。

 

『偽りの救世主』が、再臨しようとしていた。

 

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