【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「おい、なんだこの揺れ!?」
「地震か!?速報あったか!?」
工場内に踏み込んだヒーロー達が、突如起こった地震に声を荒げた。工場全体を揺るがす地震は十数秒程起こり静止、そして余震に備えて注意深く待機していたヒーロー達の一人が目撃する。
「おい、あのあたり、盛り上がって来てないか!」
工場内の建物の周辺が盛り上がって来たのを見るや、その次の瞬間建物は一気に粉砕され、何かが凄まじい速度でヒーローの横を通過した。
「うあぁああああーー!?」
「どわぁ!?」
「ぬうぁああ!?」
誰かが叫んだ声を聞いた瞬間、余波でヒーロー達が吹き飛ばされて工場の建物のコンクリを貫通して、その姿が現れる。
「性懲りも無く……甦ってくるとは……いい加減にしろよ!AFO!!」
地面に叩きつけられた緑谷出久が、その襟首掴み顔を覗き込む『常川法水だったもの』に叫んだ。
その姿、最早人に在らず。
かつて力を渇望し、無個性に嘆くしかなかった少年は、星に射抜かれて信託と力をを授かって救世主になると神話の体現に歓喜した。
だが、その実態は再びこの世に生まれ変わらんとした巨悪の意志が、寄生虫の如く願いと若き肉体を餌に成長し、神託を騙り操り、役目を終えて意思を奪った『偽りの救世主』
因子怪人第一号"常川法水"
怪人名『Falscher Erlöser Michael(偽りの救世主、ミカエル)』
その姿は、天使の名を騙りながら悍ましい臓器や人間の部位が鎧を型取り、あまりに不自然な純白に色を染め、翼だけがまるで自らを天使と騙るように、文献や伝承そのままを持って来たかのように生やしたそれは……緑谷がかつて戦った『死柄木弔』が変異した『白い鎧の姿』と酷似していた。
「死ネぇええ!!」
「うぉおおお!?」
因子怪人へと変異した常川から、くぐもった声と共に、その蠢く顔面から光が灯るや、緑谷は危機を感じて首を捩り即座に左足で蹴り抜いた。
高音の喧しい音と共にレーザーが緑谷の近くを擦り、そのまま背後のコンクリートの壁を首が動いた上方向に流れて溶断する!
「このぉ!!」
緑谷は常川の顔面に振りかぶった左拳を叩き込む!外殻が砕け、赤い鮮血を吹き出すが即座に埋め合わせるように外殻は復元していった。再生能力はそのままかと、緑谷は間髪入れずに腰へタックルして常川を押し込んだ。
「あぁあああ!」
押し込まれ後ずさる常川だったが、緑谷のヒーロースーツの背中を引っ掴み、持ち上げて近くの壁に叩きつける!
「おぅう!?」
「カぁああ!!」
追撃のサッカーボールキックが緑谷の腹に叩き込まれ、コンクリートの壁を破り、工場の中まで緑谷は転がりこんだ!最初の対峙で分かってはいたが、膂力が凄まじい!
「失せルがイイ!!」
「!!」
流石に腹部の一撃が効いた緑谷は、立ち上がるのに時間が掛かった。両手の指からレーザーが放たれ、緑谷は倒れたままレーザーに向けて手をかざし、レーザーの軌道を引き寄せ上空へ向ける!
屋根や屋内の鉄柱が溶断され、火花が落ちてくる、出力を上げながら常川がゆっくりと歩み寄れば、緑谷の手の近くギリギリまでレーザーは近づき、いよいよ手に着弾しかねない、引き寄せでは軌道を変えれない威力にまで出力が上がって来た!
「くぅうう!?」
「そのまマ顔メんに穴をアケてやろう!!」
藪をつついて蛇を出すとはこれかと、さっきの常川をぶちのめす宣言がトリガーになってこうまで変化するとは思わなかった緑谷、押し切られかけたその刹那!
「イズク!!」
「ごァア!?」
常川の横面を、剛腕が射抜いた!赤いマントに金髪、正しくヒーローらしい出立ちのヒーロースーツは、即ち頼れる先輩通形ミリオことルミリオン!彼が緑谷のピンチに参上したのであった!
「ミリオ先輩!」
「大丈夫かい!というか、目の前のは何だい、もしかしてホラーだったりする!?」
「見た目的にはオルフェノクですけど……常川です!AFO因子に、主導権を握られたんです」
「富士山の話で聞いたやつだね!厄介な事になった!」
軽口を叩いて、通形は緑谷の腕を引いて立たせると、変異常川はぎょろぎょろと目を動かして、緑谷と通形両名を睨みつけた。
通形と緑谷は、互いに合図や声掛けも無しに横並びになると……揃って一気に変異常川向けて走り出す!
「二人に増えタトコろでぇえ!」
変異常川の右拳が、先に踏み込んだ通形の顔面を射抜き貫通する!が、無論手ごたえは無い!
「はぁあ!」
「オウっ!?」
対して、背後から追従した緑谷の右サイドキックが、通形の身体を貫通して変異常川の腹を射抜き、後退させる!
「パワァアアーー!!」
「ブフぁあ!!」
前のめりになり下がった頭へ、通形のアッパーカットからの右ストレートでさらに追撃が叩き込まれた!
「これでぇえ!!」
その隙を待っていたとばかりに、緑谷の右手が変異常川の頭部を鷲掴みにした!このまま脊髄ぶっこ抜いて終わりだと、筋繊維のちぎれる音が確かに聞こえた!
「はぁなあせぇえェェえ!」
「おわぁあ!?」
しかし、コンクリートにクレーターを作り破砕する剛力の個性を有する変異常川は、首を振るい緑谷を振り払い放り投げた!
「はぁあ!!」
「なにっ!?」
さらに、身体のあちこちの蠢く肉体の装甲から手を作り上げ、方々にビームを照射したのである!バヂチィと音を立てて、その一つが緑谷の身体に命中し、緑谷は地面に落下して熱に悶えた。
「あっつ……あぁ!!」
「イズク!?」
生身だったら両断されていたかもしれない、ヒーロースーツのコートの耐火性ですら焼き切り、インナーも焦げて袈裟に水脹れが出来上がった緑谷に、通形が駆け寄る。
「さっキマデのちょうしハどうしたんだぁ、ヒーろぉ!」
自身を痛めつけていた先程と打って変わって、追い込まれた緑谷を挑発するように変異常川が、聞いたことのあるねっとりした二重の声で叫んだ。明らかに、AFOの意思が表に出て来始めているどころか……本来の常川の顔が肩あたりに溶け込んで鎧の一部にされているのを緑谷は見た。
「切れ端で浅ましく、人に寄生して生きるしかできない分際でぇ!」
立ち上がった緑谷も、いよいよ苛立ちが許容を超えて悪態が口から出てしまった。だがしかし、脊髄ぶっこ抜きもできそうにない、かつての死柄木の劣化個体じみた相手に倒しきれない様には不甲斐なさを緑谷も感じていた。
どうしたらいい……無いものねだりながら、オーバーホールの時のように、通形と合体変身ができたら簡単に勝てるのにと、心配する通形に目線が移る。
その時だった、緑谷の腹部から、レーザーを受けた熱とは違う、違う熱が発生したのは。
「えっ……!?」
「イズク、それって……!」
緑谷は、熱の原因である腹部に目を凝らした。熱と共に痣は広がっていき、形を作り出していく。
まさかと思った、あの日、AFOを倒した時から『力』は消え去った筈だった。しかし、今この場に、その『力』が再び顕現し始めたのだ!
触手が蠢き、禍々しいベルトが生成される。しかし、あの時の自分が使っていたベルトとは少し形状が変化していた。
緑谷は理解した、成る程と。
内に引き寄せ溶けていった『あいつ』が言ってるんだ。
『欠片一つ残すな』と。
『全部壊すまで戦え』と。
その為の力であり、約束であり、契約であると!
「ミリオ先輩、離れててください、あとは僕が」
変わってしまった以上、どんな力か分からない。だから緑谷は通形に下がるよう頼んだ。そして、変異常川の前で仁王立ちとなった。
そして、両手を内から外に回して、ベルトの前でクロスさせ、声高々に叫んだ!!
「変身!!」
ベルトの中央が妖しく、緑色に輝き始める。蠢く『黒』と『白』の触手が緑谷を包み込み、かつて装着した『鎧』の形を作り上げる!
象徴を模る『黒』に破滅を示す『白』の線が、刻み込まれ……今!この場に落ち延びた悪を破壊し、殺し尽くす為の姿が顕現した。
緑谷出久……『象徴と破滅の鎧』
装着完了!!