【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
死んだりはしません。
個性の始まりの国、中国。
軽慶市の『発光する赤子』により、かつての大国『中華人民共和国』はそれらの拡大を恐れた背景がある。当時の政府はこの事件以降、国内な青少年に発生した異能を隠匿しようと弾圧した歴史がある。
少数民族の弾圧と同時並行で行っていたが為に、不満を募らせた国民達は決起し、中国では内紛が起こった。
その内紛の中で、個性を持った者達はかつての『武侠』の様に弱きを助け、強気をくじくとばかりに旗を掲げた結果、その革命は成功し『中華人民共和国』は『中華民族首長国』として名を変えた。
これを『武勇革命』として、世界史にも刻まれる『ヒーロー』の始まりの転換点として知られている。
その背後にも、AFOの影があったとか無かったか……真相は定かではない。
香港……100万ドルの夜景を擁する眠らない街。鰂魚涌(クーリーベイ)は様々な映画の舞台であり、モンスターマンションが建ち並ぶ混沌とした区域だった。
「……どうなってんだ、こりゃあ?」
その一角、高層ビルのエントランスに彼女は居た。欠けたウサギの耳に、両腕は義手、右脚も義足に、白いレオタードに三日月マークをあしらえた彼女の名は……。
ラビットヒーロー"ミルコ"
かつてのAFOとの戦いで両腕と片足を失いながら、彼女は引退するどころかその後は傷を癒すと義手に義足の姿で、世界を飛び交っていた。
目的は1つ。
『AFO残党の殲滅』である。
AFOに与するものは世界中に蠢いている。首魁を失った今、それらが『次代のAFO』になろうと動きを活性化していたのだ。退院するや否や彼女は、世界中にそれらヴィランの動きあれば参じて、現地ヒーローと協力し戦果を挙げ『バニー・ザ・ウェポン』とまで呼ばれているのである。
今回香港にまで来たのも、AFOの息がかかった組織が取引を行うと香港警察、そして現地ヒーローから情報を得て降り立ったのである。(因みに、この二日前にはオーストラリアにてAFOの配下をぶちのめしている)
「誰も彼も既にやられている……交渉が決裂して抗争でも起こったか?」
現地警官の一人も、エントランスの景色にそう語るしかなかった。ヴィラン組織の組員らしきスーツの男達が、意識を失い、痛みに呻き、そして死んでいる者まで居たのだから。
突入した警察やヒーロー達も、状況を掴めておらず、佇む中で……ミルコの勘とでも言うか、気配を感じて上を見た。
ガラス張りのエレベーターが動いて、上に上にと向かっている!その中から、こちらを見下ろしている黒いコートの男がいる事に。
「見るからにってやつだなぁ!」
自前の足と、義足がうなりをあげて、ミルコはエントランスからエレベーターを追従する様に跳躍した。
そして━━怪しい人物を追ったミルコは、ビルの屋上にまで来ていた。
四方に同じ高さのビルが見え、風荒ぶ高層階、ヘリポートの中心に佇む男にミルコは声をかけた。
「そんなに慌てて逃げるなよ、やましいことしてんのかぁ?」
ヘリポートに佇む男は、ミルコの声を聞いて振り返る。その顔には正体を隠す為の京劇の面がはめられており、傍には何か取引したらしいジュラルミンケースを携えていた。
「選びなよ、大人しくあたしに捕まって事情聴取を受けるか、あたしに蹴られて事情聴取受けるかをな?」
ミルコから突きつけられた二択に、京劇面の男は、ジュラルミンケースを傍に置くと、右手の指で来いよとジェスチャーで挑発した。
「蹴られて事情聴取だなぁ!!」
地面を蹴り踏み込み、一気に間合いを詰めたミルコの、義足の右足が京劇面の男の頭部に振り抜かれた!
しかし!
「!?」
ミルコは驚愕した。確かに当たる踏み込み、間合いだった筈だった!しかしミルコの右足は京劇面の頭部を通り抜けたように振り抜いて、そのまま背後に着地した。
「ラビットヒーローミルコ、両腕どころか片足も義足にされてなお見事な蹴りだな……全盛の五体満足なお前ならば届いただろうに、残念なものよ」
面のズレを直す所作をしながら、男はミルコを評した。今の義足ではない、五体満足なお前ならばその蹴りは当たっていただろうと。
余裕ぶった上からの評論に、ならそれでも当ててやるとなるのが、いつものミルコだった。しかし、今の回避には汗が一つ垂れて表情は強張ってしまった。
時として、会合一つだけで実力を理解してしまう事がある。プロとして活躍してきたミルコも、目の前の男の実力が先程の回避と気配で分かった。
スイッチが入った、とでも言おう。顔から笑みは消えて、目はウサギらしからぬ捕食者の眼差しに変わり、再び京劇面の男に踏み込つミルコ。
放たれるは、ミルコの個性『兎』の脚力を全開にして叩き込む蹴りの嵐!
「満月乱蹴!!(ルナラッシュ!!)」
本来の足を失えど、その乱打に耐えうる義足と、残された生身の足による蹴りの嵐!豪雨の如き波状攻撃はかつての死柄木すら晒されて受けるしかない必殺の蹴り技!
しかし!!
「灰燼滅拳……」
その蹴りの嵐を前に、京劇面の男は腰を落とし、その両足の足底から膝まで、紫色の炎を纏い、ミルコの蹴りに対し蹴りで迎え撃った!
「炎満群足(えんまんぐそく)!!」
互いの蹴りが、脛がぶつかり合い、紫色の炎が散る!二撃、三撃!そして!!
「な、に……!?」
四撃目に、ミルコの右足の義足が砕け散り、左足の脛から出血するやヘリポートの上に転がった。
「あ……ぐぅあ!?」
ミルコは感覚で理解した。
折られたと!唯一残った左の足が今の蹴りのぶつかり合いで砕かれたと!様々なヴィランを打ち砕いてきた、その脚力に耐えうる足だった!しかし、この京劇面の男はそれを上回ってきたのだ!
「……割られたか」
だが、ミルコの蹴りも当たっていた。パキリと京面が綺麗に真っ二つに割れて落下し、ミルコが見上げた先の顔に、ミルコは一瞬戸惑った。
ミルコはこのヴィランを知らない。しかし、その様相や輪郭が『ある少年』と似ている部分があったので驚いたのだ。
そのヴィランがミルコの反応に対して何も感じる事は無く、ただ近づいて来たヘリコプターの羽ばたく音と、上空から照らされるライトと、落下して来たワイヤーを見るやヴィランらしき男はそのまま、傍に置いたジュラルミンに手をかけようとした。
「逃すわけぇ、ねぇだろうがぁ!!」
ラビットヒーローミルコが、足が折れたくらいで止まらない事は誰もが知っている。両腕片足失いながらも戦い続け、義手義足になろうと引退しない女傑でありヒーローの彼女が、残った左足が惜しいと見逃す事は無かった。
両腕の義手で身体を宙に跳ねさせ、飛びかかるミルコ。しかしヴィランらしき男は目の前から消え去り━━。
「悪いが━━」
「がっ!?」
「俺はフェミニストなんでな、ヒーローだろうがヴィランだろうが女を執拗に痛めつける気にはなれん」
背後に回り込まれ、地面に落ちるやミルコの首はヴィランらしき男の腕により締め付けられていた。
「が!ぐ、はな、せてめっ、あっ……!」
足を砕かれ、腕を引き剥がそうとミルコはヴィランらしき男の腕を義手で掴むが、義手以上の出力をその腕は持っているらしい、引き剥がせれずに頸動脈の血流が止められ、涎と涙を垂らしながらもがき、ミルコは義手の肘を背後の男に叩きつけ足掻いた。
「たとえ全盛のスター・アンド・ストライプだろうが、俺はこの勝ち方を選ぶだろう……恨みたければ好きなだけ恨め」
「あ、あ……あう……あ……」
だが、いかに彼女でも限界は来る。男勝りな彼女らしからぬ苦悶と共に目は光を失い、一際強い痙攣を起こし、義手は力を失い、ミルコは失神した。レオタードの股からじわりと水跡が滲み、地面に温かな水たまりがゆっくりと広がってから、ヴィランらしき男はミルコの首から腕を離した。
意識失った細目と、涙と涎の線。男はミルコの頭をゆっくり地面に下ろして立ち上がる。そして、ジュラルミンケースを回収して、ワイヤーをコートの下に着込んだ安全帯の金具に取り付け、ヘリコプターに巻き取られながら上昇して行った。
その日……ラビットヒーロー"ミルコ"は、ヒーロー人生初の『完敗』を刻まれたのだった。