【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「やってしまった……ああ……先生殴って父さんにあんな事……最悪だ」
熱はやがて冷める物で、しばらく項垂れていた緑谷は、ここまでの行いを自省し、さらに落ち込むと言う負のスパイラルに陥っていた。
思えば、自分はここまでカッとするタイプだったんだなと、かつての中学時代並みにキレ散らかして相澤先生に八つ当たりで殴った事に、緑谷は深々ため息を吐いた。
正直言って……緑谷は今、学校に行きたくも、家にすらも帰りたくなかった。と言うか教師殴り倒したら停学どころか退学だよなと、まさか今日この日にヒーロー人生が終わった事すら感じた。
「母さんになんて言おう……とりあえず父さんには謝って……あー……投げたから壊したか」
だが、何かしら一つは解決しないといけないと強迫観念から、緑谷は投げ捨てたスマホの下へ行けば、見事に壊れてパーツもバッテリーもあちこちに飛んでいた。
「あ〜〜……何で今日なんだよイレイザーヘッドぉ……」
もう一度壁に背中を預けて、なぜ文化祭の準備初日にこんな仕打ちをとヒーロー名で呼び捨てするくらいには堪えていた緑谷、すると……。
「イレイザー?来てんのか、久々だな?」
「え?」
「え?誰だ……」
どうやらテナントの裏口だったらしい。近くのドアから、赤いキャップを後ろ向きに被った中年の男が扉を開けて出てきて、壁で項垂れている緑谷を見下ろしてきた。
綺麗な内装と広々とした空間……今の時間はもう終わっていたのか、はたまた休みだったのかは分からないが、他に客は居なかった。そのかわり……。
「猫がいっぱい……」
「猫カフェだからなうちは、そら奢りだ雄英生」
あちこちに猫が居て、各々気ままに鳴いたり遊んだりしており、緑谷の足元にも既に一匹が体を擦り寄せまとわりついていた。中年の男は猫ちゃんラテアートのカフェラテを緑谷のテーブルに置いた。
こんな店があったんだなと、店内を見渡すて、緑谷はそのまま一口猫ちゃんカフェラテを飲んだ。暖かく甘苦い、様々な事を抱えていたが少しだけ楽になれたような気がした。
「イレイザーヘッドの名前出してたが、何かあったのか?確か雄英の先生やってんだろ?今」
「えっと……ご存知なんですか?貴方は」
「昔ちょっと世話になってな、俺は堀田一郎、この猫カフェHopper's Cafeの店主だ」
そう言う店名であり、店長だったのかと、遠慮なくカフェラテを啜る緑谷は、まさか相澤先生と旧知の仲の人と遭遇するとは思わなかった。
「で?イレイザーの教え子がどうしてまたウチの裏で項垂れてたんだ?」
さて、改めてその相澤の教え子が項垂れていたのかと堀田に聞かれた緑谷は……そこまで至った理由は守秘義務に当たると思われたので、それを省いて答えたのだった。
「相澤先生を……ぶん殴ってしまって……」
「ほーイレイザーを殴っ、殴ったぁ!?」
「理由はその、言えないんですけど……色々心労が重なりまして、耐えきれずに……そのままここまで走ってきたんです、セントラル病院から」
「セントラル病院!?結構距離あるぞ!?」
「と言うか、ここどこですか?」
「知らずにひたすら走ってきたのか!?」
思えばそもそも、セントラル病院からひたすら走ってどれくらいの時間走っていたかも知らないのだ、知らない町まで緑谷は来ていたらしい。
「あー……ここは鳴羽田って言って、神奈川県と東京の境目の町だ、怖いな雄英生は……体力おばけかよ」
「……え!?」
緑谷出久は、堀田から聞いた位置関係を脳内の日本地図から算出した。
まず、セントラル病院があるのは東京だ。そこから高速道路で2時間掛かって、確か到着が18:00ギリギリだったので、母に出立前に遅くなる事を伝えた。
で、相澤先生をぶん殴って東京から、神奈川県との境にある鳴羽田まで激情に任せて走った……今現在の時刻はと、カフェ内の壁掛け猫ちゃん時計を緑谷は見ると……。
21:45と針は示していた。
教師への暴行、深夜徘徊、さらに自宅へ帰宅せずに失踪……役満であった。緑谷は頭を抱えて蹲った。
「やらかしたにも……程がある……!」
「その……まぁなんだ、気を落とすな雄英生、あー……一応保護したって電話入れてやるし、イレイザーにも頭一緒に下げてやっからさ?」
「本当に、迷惑かけます……」
むしろ相澤先生と旧知の人に会えたのが幸いだった。本当に一時の動揺は身を滅ぼしかねないなと、堀田に頭を下げた緑谷。堀田は苦笑しながらとりあえずは連絡からだなと、カウンターに向かった。
「近場のビジネスホテル取るからよ、今日はそこ泊まりな、親御さんにも電話するか?スマホは?」
「あー……壊してしまって、ビジネスホテル代はちゃんと払いますので」
「いいって、久々にイレイザーの話聞けたしよ、一時は記者会見だ大怪我出しても連絡すらしないんだぜ?あいつ」
店の電話を操作する堀田と会話する緑谷、本当に迷惑ばかりかけてしまったと、また数匹猫が制服のズボンを登り、肩まで来るので抱き上げたりしていると、ふと壁にかけられた写真を見た。
もしかしなくても、それは相澤先生の写真であった。開店記念の集合写真か、無愛想に目線を逸らしてカメラを見ていなかった。
堀田さんの隣には同じ似た顔、双子の兄弟だろうか?そして異形の個性らしい、蟷螂にタコかイカ?のような人も笑顔で写っている。
「……あれ?この2人って」
そして、さらに2人。緑谷は一緒に映る男女に見覚えがあった。
「あの……堀田さん?」
「ん、どしたぁ雄英生?」
「この人ってまさか……アメリカのヒーローのザ・スカイクロウラーと……アイドルのポップ⭐︎ステップですか?」
緑谷出久がまさかと指差し、堀田に尋ねた。一人は冴えない気の弱そうな、オールマイトパーカーに身を包んだ少年。もう一人はピンクの髪に小悪魔なレオタード衣装の少女。その二人の名前を呼んだ緑谷に、堀田は笑顔で頷いた。
「あぁよく知ってるな、今やアメリカで活躍するトップヒーローの、ザ・スカイクロウラー……かつては苦労マンとしてここらでヴィジランテとして活動してたんだよ、その嫁さんのポップ⭐︎ステップもこの辺りでゲリラライブやって下積みしてたんだぜ?数年経ったが今でも覚えてるよ、相澤も教師になる前はこの辺りを拠点にしててな、コーヒー集りに来てたんだよ、お前が座ってた席は相澤の特等席だ」
緑谷が自暴自棄になって漂流した街は……かつて数年前、相澤先生が活動していた場所であり、アメリカに渡ったスーパーヒーローと、トップアイドルが下積みをしていたと言う、縁の町であった。