【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「で、イレイザー……貴方は心構えとか前持っての話も無く?緑谷くんへ直接話をしたと?」
緑谷が自暴自棄となった翌朝、雄英高校教師の一人、香山睡ことミッドナイトは、昨日の緑谷出久への話で、厳しい眼差しを向け相澤に詰め寄っていた。
「イレイザー……今回は俺もちーっと逸りすぎたと思うぜ俺も、火急とはいえだ……まだ緑谷は学生で17のティーン、しかもただでさえ、あいつが背負わされた物はヘヴィ過ぎるくらいだぜ?」
プレゼント・マイクも、何故先に相談なりしなかったんだと同輩の凶行を嗜めた。合理性の塊でも今回は流石に、タイミングを考えるべきではなかったのかと言われた相澤。
「それでなぁなぁになってしまったのがAFO因子の話だ、緑谷から顔面殴られるの込みで……俺はさっさと言ってしまった方が合理的だからそうした、非難は承知の上でな」
相澤の結論が口から放たれて、それまで言うかとミッドナイトとプレゼント・マイクは苦渋の表情を浮かべた。前例があり、それを避ける為に相澤は、一人責任と遺恨を背負って今回の話をしたのだと二人は分かってしまった。
教師は、時に生徒から憎まれようとも、受け止めてぶつからねばならない事もある。避けて通れないなら、周りの教職者に伝播するくらいなら、自分が全て受け止める気で、相澤は此度の宣告を緑谷に行ったのだ。
「言ってる事はわかるけどよぉ……また飛び出してヴィジランテ活動し始めたらコトだぜイレイザー?」
だがそれでも、人の心が無さすぎないかとマイクから言われ、ミッドナイトが心配だと語る。
「そうよ、まだ自宅にも帰ってきてないって━━」
「いや、鳴羽田のビジネスホテルに泊まって、今日は欠席すると昨晩に連絡は来てた」
「「え?」」
失踪しているのは間違いだと、ミッドナイトの話に相澤は訂正を加え、マイクと二人で驚く。すでに所在は割れていたのかと。
「あの後熱のままに走って落ち着いて……俺の旧友が見つけてな、律儀に連絡入れて来たんだ」
「真面目だなぁオイ!?」
「逆に心配だわ!?あの子鬱になりかけてない!?」
そこはそのまま黙って消えるかと思えば、律儀に連絡するくらいには頭冷やして自制できるんだなとプレゼント・マイクはツッコミを入れたが、こうも真面目過ぎると鬱の傾向すらあるぞとミッドナイトは余計に心配するのだった。
同刻……鳴羽田市内、緑谷出久は朝の通勤や登校の往来の中を歩いていた。
皆が会社や学校に向かう朝の人並み、それとは逆に学生服で歩くという、川の流れに逆らう奇特な魚のように歩きながら、心中のもやを抱えながら、重い足取りで最寄り駅まで歩いていた。
「どうしよ、帰りたくないし……学校行きたくない……」
駅が近づいて来ると、ため息が自ずと漏れた。緑谷出久は、思いの外堪えていたのだ。憧れのヒーローの一人が壊れた姿を見せられ、強大なヴィランが自身の叔父だと知り、それを信頼していた父は今まで隠していた。
一夜寝たらスッキリして、さぁやり直そうとまではなれなかった。だけど、かつて皆の前から姿を消した前科から、またクラスメイトや母親には心配をかけてはならないと、兎に角帰って姿を見せなければと、重いを動かした。
信号を渡り、歩道を歩いて駅に近づく。そうしてあと少しで駅までの所━━。
グォオオオオン!!
「うるさっ!?」
凄まじい音に、緑谷は思わず道路を見た。そしてすれ違ったその車から、喧しい音が鳴っていたのを理解した。
所謂高級車、スーパーカーというやつが、丁度信号で停車して煽るようにエンジンを朝っぱらから吹かしていたのだ。
傍迷惑な輩だなと緑谷は、どんなやつがこんな車を運転しているのか少し見てやろうとしたが、信号は切り替わり、また音を吹かしてスーパーカーは、律儀に車列を乱したり煽ったりしない安全運転で走っていったのだった。
緑谷は、ああいう車は日本の街中じゃなくてサーキットやらで走れば様になるだろうに、態々街中で乗り回す必要あるのかなと駅へ向かいながら、思うのだった。
そのスーパーカー……フェラーリSF90ストラダーレの車内で、緑谷悠は神奈川の街並みを悠々とドライブしていた。誰かに覗かれたような気がしたが、目を引くのは分かるなと小粋に鼻歌を奏でながら、安全運転を心がけて『目的地』を目指す。
「しかし……つまらん仕事になりそうだな、エンデヴァーもホークスも引退、エッジショットは療養、ベストジーニストも全盛のキレを失い……ミルコもまた同じ……今日本にヴィランが本気で攻め入れば、簡単に堕ちるのが見てとれる……」
悠は此度の仕事、つまらぬ余裕な物と見ていた。何しろ今の日本のヒーロー達は、戦力が一気に削がれたのを否定できないからだ。オールマイト引退から始まり、その後進だったエンデヴァーとホークスの引退、ビルボードチャート10位圏内の戦力を持ったヒーローも、後遺症で全盛期を失った。
ヒーローが枯渇した日本は、簡単に堕ちると見た悠は、この後の自分の仕事も何一つ障害なく達成できると見て、退屈を抱えながらハンドルとアクセルを操作する。
「つまらんと言えばこの車もだな、1000馬力のくせに安全面だの制御系がハイテクでレールの上を走らされてるみたいでつまらん……走るための機械の癖に……まぁ今日でお役御免には丁度いいが……」
その文句は自ら運転する車にも向けられた、しかしもう別れる予定で丁度いいかと、悠は欠伸をしながら目的地へ向かうのだった。
叔父と甥は、神奈川の路上でまさかのニアミスを果たしていたのであった。