【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
緑谷出久は目を覚ました。
だが、目覚めたのはベッドの上でなく……。
『……何、ここ?』
緑谷出久が知らない景色の中であった。だが、同じような現象を緑谷は幾度か経験している。かつてOFAを宿した際、その歴代継承者が滞在した『精神世界』だった。
だが……様子が全く違った。緑谷が身体を起こしたのは、廃墟が広がる道路の真ん中だった。
道路標識や崩れ去った建物から、ここが『日本』と言うのは何となく分かったが……まるで群訝山荘事件後に社会崩壊した日本の一部のように思えた。
『……死んで地獄に堕ちたかな?』
叔父に殺され死んだかと、そしてここは地獄やもしれないと、緑谷はため息を吐いた。おお、イーヴルヒーローイズクよ、死んでしまうとは情け無い。
だがしかし、地獄にしては空は明るいし、獄卒も餓鬼も、血の池も見当たらないので……緑谷は歩いてみる事にした。
精神世界を歩く感覚は不思議で、地に足がついた感覚はない癖に、体はしっかり動く。廃墟は続き、人の気配も無い。
と言うよりも……そもそもこの景色は一体何なのだと、歩みながら緑谷は首を傾げた。すでに自分の身体から消え去ったOFAが、残滓として景色を自分に見せているならば、何か理由がある筈だが、歴代継承者が現れる事も無く、ただ殺風景な景色を歩まされた。
『何なんだ、この景色……ここは一体どこ……だ?』
歩み続けてしばらく……緑谷が目にしたのは、まだ比較的建造物の形が残った道だった。恐らくは大通りか、商店街だったのか……そこでは乱闘騒ぎが起こっていた。
『寄越せオラァ!』
『や、やめてください!』
『ある物全部奪っちまえ!』
さながら崩壊後の世界で、緑谷も体験した、日常だった景色だ。しかし……この現場に緑谷は覚えが無かった。知らない商店街だし、ヴィランらしき輩も何やら古めかしさを感じた。
夢景色ゆえ、干渉はできないのでただ略奪者と奪われる民間人達を眺めるしかない緑谷、しかし背後から幾つものエンジン音が聞こえたので振り返った。
先程の歩いてきた廃墟の道を、濁り見えなくなった景色の靄を切り裂いて、それらは現れた。緑谷はその姿に面を食らった、改造されたジープ車、その左右にはオフロードバイクが追従し……それらに跨り、搭乗している者達は皆、白の長ランを身につけていたのだから。
『く、黒燕団の白燕隊!?もう来やがったのか!!』
『引き上げだ!引けーー!!』
略奪者達にとって都合が悪い奴ららしい、オフロードバイクが略奪者を追いかける中、止まったジープの横に捕まっていた一人が、走るジープから慣れたように地面へ着地する。
その男は、左手に持った日本刀を鞘から引き抜くや、向かってきた略奪者をそのまま切り伏せ、そして商店街へ消えて行った。
『何故です!緑谷隊長!!』
『えっ?』
唐突に、緑谷の周囲の景色が変わった。今度は雨だ、曇り空から雨が降りしきり雷も落ちる中で、自分が『隊長』と呼ばれたのかと驚き振り向く。
『どうして裏切ったんです!そんな化け物を逃がしてどうする気ですか!!』
化け物?緑谷が振り返った先では、先程ジープから降りて刀を振るった青年が、雨に打たれながら、同じく白い長ランを着た男に刀を向けていた。
緑谷隊長……そう呼ばれた男の背後には……3〜4mはあろうか、巨大な二本ツノを生やした、それでも『美しい』と感じてしまう『女の鬼』が居た。つまり、緑谷隊長とは……その刀を持ち、女を庇っている方らしい。
緑谷隊長とやらは、何やら語ったらしい、口を動かしたが……それを緑谷は雷雨で聞く事は叶わず。ただ雨濡れの刀身が振り下ろされ、同じ白ランの男を切り伏せ、鬼の女の手を引き、靄の中にに消えた。
『いつかやがて、陽の当たる世界へ……それを願い、ここに結成しよう!』
また景色が変わる、何処かの寺社らしい……そこで赤い盃を掲げているのは『緑谷隊長』と呼ばれた男、白ランは華美な柄の半纏に変わり……同じ盃を掲げる者の大半が、異形の個性を持っていた。
その傍には、先程手を引き助けた鬼の女が和やかに笑っていた。
その幸せそうな景色を最後に……世界はゆっくり暗く染まり、また違う光が差し込んで来たのだった。