【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
2度目の目覚め……いや、本当の目覚めで緑谷出久が最初に見たのは、白い天井に蛍光灯の光だった。
そこでようやく……自分が怨龍、叔父である緑谷悠に負けた事を思い出した。肉体の痛みは全く無い、だが体が重々しく節々が凝り固まった感じがして、上体を起こした。
そして、すぐ近くの棚に目が行く。花瓶には花がさされており、様々な見舞いの品が積まれていた。一体どれほどの間意識を失っていたのかと、緑谷は周囲を見回した。
すると、回診の医者か点滴の取り替えに看護師が来たらしい、ノックされたが応答はできず、ただスライドドアが音を立てて開いた。
そこから現れたお見舞いに来た人物は、驚愕して目を見開いて声を上げた。
「み!緑谷少年!?起きたのか!!」
「オール……マイト……」
「良かった、い、いやまずはお医者様に伝えねばな!いやよかった、皆大変心配したんだよ!」
慌ただしくまずは目覚めた事を医師に伝えねばと、オールマイトはお見舞いの新しい花を持ちながら、病室を出て行った。
意識を取り戻した事から、医師に看護師がまず容体を確認し、とりあえず問題は無いと分かってようやく緑谷はオールマイトと話す事が出来るようになった。
そこでまず聞かされた事は……。
「えっ、もう20日経過してるんですか?」
「ああ、キミが怨龍に敗れて搬送されてから……今日で20日間、キミは意識を失っていたんだ」
「じゃあ、文化祭は……」
「終わっているよ、既にね」
20日の間も、意識を失っていたのだとオールマイトに聞かされた。見舞いの品の中には、エリちゃんからの手紙まであり『はやくよくなって』という旨の内容が書かれていた。
文化祭も既に終わっており、思い出を作る機会を一つ失ったのかと、起きて早々緑谷の意識は沈み込んだ。
「……完敗でした、全く歯が立たなかった」
「……」
「誰にも負けないって、何処かで思ってたんですよ、僕……こんな個性だから、負ける事は無いって」
「少年……」
「今はただ……つらくて、悔しくて……自分の無様さが情けない……!」
掛け布団を握りしめて、歯を食いしばり嗚咽を殺し涙だけが流れた。完膚なきまでの敗北、遇らわれ、弄ばれ、全力を怨龍は軽々超えて来た。自分の無力さに涙を流す緑谷に、オールマイトはどう声をかければと悩んだ。
緑谷出久にとって『強さ』は精神的支柱でもあると、オールマイトは理解している。彼自身口では『ヒーローは強さだけではない』と理想を口にしているが、個性の絶対的な強さと鍛え上げた肉体と、研ぎ澄まして来た徒手空拳の技術から来る『強さへの自信』があったからこそ、足りない、そして自らが持つ事が出来ない『精神性』を補っていた。
それが砕かれたのだ、完膚なきまでに。
「緑谷少年……キミはそれで、どうしたい?」
そんな彼が、今求める物は……。
「……力が欲しいです」
そうだろうと、オールマイトは泣き続ける緑谷を見つめ続けた。
「ヒーローは……力だけではない、強さだけじゃないのも分かっています……それでも今は強くなりたい、力が欲しい……!どんなヴィランを前にしても負けない強さが……ただただ欲しいです……!」
オールマイトは知っている、彼が目指すヒーローとしての姿を。如何なる悪も恐怖し、決してそれらの悪意が民衆に届く事を許さない恐怖の象徴。
後ろ指を刺され、批判されようとも、真っ当じゃないと言われようとも、まともなヒーローでは決して解決できない、勝てない悪を打倒する非情なる執行人。
民衆の笑顔は普通のヒーローがやればいい。だからこそ自分は、血と汚泥に塗れようと民衆の安全を守るために悪を打ち砕く『力』の象徴、それが緑谷出久が目指すヒーローのあり方。
出会った時とは違い、緑谷出久は様々な困難も試練も乗り越えて来た。そして今、完全敗北という強大な試練を叩きつけられて、心が危うい。
かつて、彼をヒーローの道へ引きずりあげたオールマイトは、その時と同じ様に『賭け』に出る事を決めた。彼が『ヒーロー』のまま、もう一度立ち上がってくれると信じて。
「少年、キミはまだ……強くなりたいんだな」
「……はい」
「分かった、なら復学してから改めて話をしよう、私に任せて欲しい」
オールマイトは泣きじゃくる緑谷の肩を叩いて、そう告げた。