※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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502話 何が為に

「緑谷が復学したぞぉおおーー!」

 

 目覚めて三日後、健康診断にて異常無しの判定を貰った緑谷はようやく雄英高校へ復学した。

 

「緑谷ぁ!お前マジで今回は死んだかと……心配かけんなちきしょーー!」

「意識戻らなくてマジ心配だったんだかんな!総大将!」

「あはははは、峰田くんも上鳴くんも痛い、なんか力強くない?」

 

 いの一番に峰田と上鳴が泣きながら抱きついて来たが力が強く、緑谷はタップして離れる様に言う。次いでクラスメイト達が次々と、心配していた、よく帰って来たと声をかけた。

 

 もみくちゃにされながら、緑谷は自分の席に向かえば爆豪は一度視線をこちらに向けたが、すぐ戻した。

 

 まぁかっちゃんは何も言わないよなと、後ろの席に座る緑谷だったが。

 

「大丈夫なんか、もう」

「!!」

 

 まさかの心配が、第一声で緑谷は返事が遅れた。無言のままか、はたまた『何負けてのこのこ帰って来とんだ雑魚』くらい悪態を吐くかと思っていた緑谷は、嬉しさを隠しながら少しの間を経て言葉を返した。

 

「うん、何とか……ありがとうかっちゃん」

「……チッ」

 

 感謝を返し、舌打ちで返事をされたが、それでも緑谷は嬉しかった。

 

 文化祭も参加できず、20日間の遅れを取り戻す、また日常に戻って来た緑谷。しかし、その心は既に『次』へ向かおうとしていた。

 

 

 

「すまなかった」

 

 その日の昼、担任の相澤は雄英高校の仮眠室へ緑谷を呼び出し頭を下げた。謝る理由はただ一つ、怨龍の件である。

 

「俺の独断でこんな事になってしまい、お前をこんな目に遭わせてしまった……担任として恥じるべき事だ」

「あ、いや、それなら僕も先生殴ってしまったし……こちらこそ……」

 

 緑谷も、キレて殴ってしまった事は心にしこりを残していた。互いに頭を下げ合う形となったところで、相澤の隣に座っていたオールマイトが一つ席をして話を始めた。

 

「お互い、これで良いかな?なら、緑谷少年……私からも話がある、キミの今の気持ちに応える準備を整えて来た」

 

 担任を交えて、オールマイトが緑谷の抱える気持ちを解決する準備ができたと語る。傍に置いていた冊子を緑谷に向けて間の机に置いた。

 

「オールマイト……これは……」

 

 その冊子には英語ではあるがこう刻まれていた。

 

『ロサンゼルス・ヒーローズファクトリー』と。

 

「雄英高校では、希望者にヒーローの本場アメリカへ短期留学を行っていてね……この学校は私が渡米して通っていた大学の系列となるヒーロー科の学校であり、雄英とは姉妹校でもあるんだ」

 

 

 ロサンゼルス・ヒーローズファクトリー!

 

 ヒーローの本場、アメリカにおけるヒーロー科を擁する高校の中でも『ヒーローズ・テンスクール』と言う、名門10校として数えられる高校である!

 

『テン・スクールズ』と言う、アメリカ東部に集中する歴史ある寄宿制名門私立高校10校を指す言葉があるが、ヒーローという職業が出来て、アメリカがヒーローの本場となってからは、アメリカ西部側に有名ヒーローを排出した高校が集中し、その名門10校を『ヒーローズ・テンスクール』と呼称する様になったのだ!

 

「アメリカのヒーロー科では、日本のヒーロー科以上の実践、専門的な分野を深掘りして学ぶ事ができる……期間は3ヶ月で、緑谷少年には三学期をこの学校で学ぶ期間に充てる事ができる……」

 

 オールマイトが緑谷に提案したのは、ヒーローの本場アメリカ、そのヒーロースクールへの短期留学だった。かつて緑谷も、一年の仮免許取得後、ヒーローインターンの直前に『あるアメリカのヒーロー』から留学の招待があったが……校風が合わないのと背後への恐怖から断った事があった。(あぁん!?ひどぅい!!)

 

「かつて私が師匠と、グラントリノと共にAFOへ挑み敗北し……雄英を卒業してからアメリカへ渡って力をつけた……緑谷少年、キミの気持ちは私も痛いほど分かる……力への渇望も……だから、私はキミの背中を押そうと思う」

 

 オールマイトもまた、高校時代にAFOに挑み敗北した。師匠は殺され、無力感に苛まれた事は痛い程に理解できると胸に手を当てて語る。

 

「行ってきなさい、そして本場アメリカの経験を身につけて、力をつけて来なさい、そして必ず……ヒーローとして強くなって帰ってくるんだ、緑谷少年」

 

 短期とは言え、かつてのオールマイトが歩んだ道を、彼は指し示した。緑谷はその冊子を開いてめくり、そして読み終えてから立ち上がった。

 

「ありがとうございます、オールマイト……短期留学、よろしくお願いします」

 

 これで強くなれるのならば、怨龍に近づけるならば、迷う事は何も無い。緑谷はオールマイトと相澤に深々と頭を下げて、アメリカ短期留学に行く事を決めたのだった。

 

 

━━台湾、台北市中山━━

 

 この場所には、個性黎明期を経ても残り続ける老舗の台湾料理店がある。『梅子餐庁』と言う名前の店は、黎明期時代には既に60年の年月を積んだ老舗、今の時代なら百数十年の間、代を経て味も変わらず現地民だけでなく、旅行者の腹と舌を満たしている。

 

「個性は代を経て交わり、複雑になり、そして変化して強くなっていく……」

 

 地下一階、今日も様々な客で賑わうこの店に、緑谷悠も居た。並べられた様々な料理のうち、オーソドックスな春巻きを皿から箸で取り上げ眺めて語る、

 

「だが年月を経て、代替わりをしてなお変わらない物もまた良いよな?俺がこの店に初めて来たのは20代、20数年で台湾に来れば必ず一度はここで食べるが……その頃と全く味が変わらない"不変"という素晴らしさよ」

 

 春巻きを口に入れ、揚げられた皮の感触に中の餡の味を堪能する悠の対面に座る男は、この時代には珍しい伝統的な中華服を纏い、鋭い眼差しで悠が食を楽しむ様を見ていた。

 

 一切箸をつけぬ相手に、悠は尋ねた。

 

「食べないのか?」

「もう食べたのだが?お前が食いすぎているのだ、その歳でよくまぁこの皿達を平らげるな……」

「健康の証よ」

「タバコと酒もやっといてか……」

 

 この中華服の男、既に自分の食事は終わっていた。皿も既に下げてもらっている、むしろ悠が大食漢でまだ食うのかと呆れていたのだった。

 

「それで……劉大老もお前らも、何であんな物を俺に持って来させたわけだ?」

 

 名物の渡り蟹のおこわをせいろごと近づけて皿に移しつつ、自分に神奈川県警本部にあった『物』を奪わせた理由は何だと、悠は中華服の男に尋ねた。

 

「いや、そもそも……何で"あんな物"が一県警本部の地下、証拠保管室にあるなんて知ってた?内通者でも居たのか金でも渡したか?」

 

 悠は気になっていた、仕事の内容はともかく、今自分を雇っている組織は何故、自分にそれらを奪って来るように命じたのかと。その質問に中華服の男は言う。

 

「貴様が知る必要もない事だ怨龍、我ら"三頭龍"の勢力と戦力の拡大に、あれらは必要な物……ただそれだけだ」

「ほう……」

 

 悠からすれば、奪って来た物が雇用主の組織拡大に重要な物らしい。あんな物がねぇ、とアタッシュケースは既に渡し済みだが、何をするのやらと考えながら悠は、豚の角煮を箸でつまみ口に詰め込み咀嚼する。

 

「話は終わりだ、俺は本部に戻る……また仕事があれば連絡する」

「何だ?もういいのか、一杯飲んでいけよ18日ビール頼んでるぞ?」

「まだ仕事がある、酔って行けるか馬鹿め、会計はしておくから一人で楽しめ」

 

 中華服の男は眼差しを崩さず、席を立ち上がり悠の前から立ち去った。つれないなと悠はその背を見送る一方で、ウェイターがその傍に立ち一礼し、緑の透き通った瓶とグラスを置いたのを見て、すぐ笑みを浮かべ『多謝』と感謝をしておくのだった。

 

 18日ビール……徹底した低温管理により一般的な高温殺菌をしないがため、製造後18日間という短期間の賞味期限が設定された台湾ビール。その瓶を傾けグラスに注ぎ、泡3、液体7を作り上げるのは最早手慣れており、早速一気に悠は飲み干す。

 

 スッキリとした味わいに一息漏らした悠は、さらに1杯と瓶を傾けながら呟いた。

 

「荼毘……確か、エンデヴァーの息子だったか、その肉体片だったか……一体そんな物で何をするのやら……まぁ俺は金さえ貰えば後は知らんが……」

 

 二杯目は少し残し、くるくるとグラスの中のビールを弄び、悠は警察から奪い渡した品で、雇い主は何をするのやらと考えたが、まぁ勝手にしたら良いかと残りを煽り、再び瓶を傾けた。

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