【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「……人生でも上位の衝撃っすよ、まさか洗濯ヒーローウォッシュに中身があったなんて」
セントラル病院の病室……包帯を身体中に巻いたその姿でベッドに腰を掛けた青年に、ヒーロー公安委員会会長のホークス、いや、鷹見啓悟はそう呟く。
傍には砕けた、彼を表す洗濯機を模ったヒーロースーツ……目の前の包帯に巻かれたミイラ男の様な姿の青年が、まさか子どもも大人も知らない人は居ない洗濯洗剤のCMソングでお馴染みな、洗濯ヒーロー"ウォッシュ"などと、信じられようか?
というか、恐らく日本全国民、ウォッシュを知る者は彼を『洗濯機の異形個性のヒーロー』と認識しているのではなかろうか?
まさか着ぐるみ的なヒーロースーツだったのかと、ホークスすらも現役時代から同じ認識で驚くしかなかった。
「このような姿では……ヒーローなどまずできぬからな、だから俺はデビューからあの姿を纏っていたのだ」
「えー……声も渋い……」
「喉も焼かれてこんな声なんだ、すまない……」
この数十秒で今までのウォッシュ像全部覆ったぞとホークスは、苦笑するしかなかった。さて、それはそうと本題に入ろうかとホークスは椅子に座り目線をウォッシュに合わせ尋ねた。
「で、お尋ねしますが……貴方はあの場に現れヒーロー達を完膚なきまでに叩きのめしたヴィラン……怨龍と関係があったとベストジーニスト、シンリンカムイから聞きました……」
尋ねる事はヴィラン、怨龍こと緑谷悠の事。会話を聞いていたらしい確認を兼ねた質問に、ウォッシュは頷く。
「怨龍は……俺が10年前に中国で拳法修行をしていた時の兄弟子だった男なんだ」
「兄弟子……」
「同じ流派の先輩さ、中国のヒーロー達も拳法家や拳法を体得した者が多数居る、俺も当時ウォッシュとなる前に中国へ渡り、ある流派の門を叩いた……そこに居たのが怨龍、緑谷悠先輩だった……当時こそ怨龍としか名乗っていなかったから、まさか出久くんの叔父とは知らなかった」
ウォッシュがまだウォッシュとして活動していない時代……中国で力をつける為彼は拳法修行に渡り、その先で出会ったのが彼だったと語る。
「俺は怨龍の下で拳法を学んだ……最も、怨龍はその門下に居る時点で、様々な……黎明期に失われ廃れた格闘技や武術に精通していて、何故またその流派で学んでいたか分からない程の強さを持っていた……記憶を辿るなら恐らく当時37歳の時点で……あの人はオールマイトに肉薄する、並び立つ強さを持っていた程に」
「オールマイトに並ぶ……!?」
その証言に、ホークスは背筋が凍った。怨龍は、オールマイトに並び立てる強さを持つ。対峙したプロヒーロー達が尽く敵ず、見るも無惨に全滅させられたのは当然だったのかと。
つまり怨龍はAFO、さらには死柄木弔と同等の力と危険性を持つヴィランだという事がここで分かった。
「さらに言ってしまえば……出久くんとの戦いを見て、あの人はかつての流派の"秘奥"まで体得したみたいだ……もはやその強さはAFOも死柄木も超えてしまった……果たして今の時代に、彼に勝てるヒーローが居るかも分からない……」
そして、今や怨龍を倒せる、勝てる力を持つヒーローが居るか分からない程の強さを手に入れてしまったと、ウォッシュは包帯に隠れた顔を右手で押さえながら言葉を絞り出した。
「待ってくださいウォッシュ、その秘奥って……いやまさか、何か漫画みたいな奥技が現実にあるんですか?」
だがホークスは、ここで少しウォッシュの語る話に首を傾げた。というのも『秘奥』なる単語だ、さながら漫画やアニメの架空の必殺技やびっくりドッキリ拳法パワーがあるかの様な口ぶりだったから。
しかし、ホークスの質問にウォッシュの包帯から覗く目は鋭く彼を睨みつけた。
「……ホークス、ただでさえ個性の中には人智を超えた、その所有者でも理解しがたい個性があるんだぞ?未だ解明されない個性まであるんだ」
「言われてみれば……」
「それに……個性の始まりは中国からだ、何よりあの国は国名が変わるまで"命が軽かった"し"人権なんて軽んじられていた"んだ……」
ウォッシュの証言に、ホークスはさらに肝が冷えた。今でこそ個性研究はアメリカが先を進んでいるが……当時の歴史背景を知った上で中国の個性研究は、勢いがあった。
その中には……今の時代露呈すれば非難は避けられない所業の果てにたどり着いた研究結果もある。
「当時の俺もその力を求めた、しかし……怨龍はその秘奥の為に師すら殺し、他の弟子すら焼き殺し……俺も敵わずこの様となった……力の果てに行き着いた背を見た俺は、それを省みて力を追い求めるのを辞め……ヒーローとしてのあり方を考えた末……あれを纏う事を決めた」
それが、かつてウォッシュとなる前の、御手洗濯の過去だった。強さの果てに行き着いた先達の狂気に身を焼かれ、決してそうなってはならないと戒め、身を焼かれなおヒーローとなった男の、壮絶な過去であった。
語り終えたウォッシュに、ホークスは頷く事すら忘れた。だが、彼の証言からまだ聞いてない事があると、ホークスは息を飲み尋ねた。
「それで……怨龍が体得した、その秘奥って……」
怨龍がさらなる強さを手にした『秘奥』なる物……一体それは何なのだと尋ねるホークスに、ウォッシュは答えた。
「日本語ではこう言う……"因子回帰"と」
「因子……回帰……?」
「ああ、その秘奥を体得すれば……自分にまで連なる、積み上げて来た"過去の個性"を呼び覚まして使えると……」
ウォッシュが語る秘奥に、ホークスは今日何度目の驚愕に晒されただろう。もしそれが可能であるならば、個性研究においても常識が覆る事態になる話だ。
それを既に怨龍は証明、体得しているならつまり、こう言っても差し支えなかろうと、ホークスは冷や汗を垂らして呟いた。
「まだ数ヶ月も経たずに……AFOが再来したと言っても過言じゃないっすね……」
「ああ、何より……怨龍はAFOよりも強い、遥かに……」
ホークスの目指す『ヒーローが暇になる世界』が、遥か彼方まで蹴り飛ばされた様な気がした。