※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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504話 自警団『黒燕』

 緑谷出久は決めた。

 

 かつてオールマイトが力を身につけた、ヒーローの本場、アメリカへの短期留学。三学期の3ヶ月を利用した集中ヒーロー合宿……短期間ではあるが、ヒーローの本場を知り、糧にして強くなってやると緑谷は意気込んだ。

 

 だがその前に……やる事があった。その為に緑谷は、雄英高校内図書室に足を運んでいた。

 

 雄英高校の図書館はスケールも、そして蔵書量も桁違いだ。最新のラノベから全国紙の新聞は当たり前、サポート科の為の専門書から過去のヒーローに関する文献も収められている。

 

「……これも違うか」

 

 緑谷は様々な本を傍に積み上げ、一つ一つ開いて調べては棚に返し、また数冊取り出しては開いて調べてを繰り返す。

 

 緑谷が調べていたのは……意識を失った時に見た、精神世界の景色と単語であった。

 

 あれは多分、自分の『因子』にまつわる映像だと、緑谷はそう断定した。あまりにも精巧な、幻想とかけ離れた景色だった事。なにより、かつてOFAを宿した時の歴代継承者という存在から、あの見た景色や言葉がかつてあった出来事ではないかと思ったのだ。

 

「駄目だ……黒燕(クロツバメ)も白燕隊(はくえんたい)も載ってない……」

 

 あの映像の中で、掠奪者達が言っていた二つの単語。

 

『黒燕』に『白燕隊』なる徒党や部隊は、恐らく過去のヒーロー組織かもしれないと、ヒーロー史や事件ファイルからアプローチをかけた緑谷だが見つからなかった。

 

「緑谷隊長って何なの……やっぱり僕がぶちのめされて脳みそが異常をきたしたのかな?」

 

 全く見つからないとため息を吐き、意識を失い大怪我から来た幻想かと考えながら、調べ終えた本を戻すため、本を抱え緑谷は立ち上がった。

 

「緑谷、精が出るな」

 

 その時、緑谷に声をかける者が居た。白い髪の左右六本三対の異形の腕を持つクラスメイト、障子目蔵だった。

 

「障子くん、キミも勉強?」

「あぁ、もうすぐ期末だからな、緑谷もか?」

「ちょっと調べもの……」

 

 障子は緑谷が抱える本を見て、複製腕を作り持とうとする。

 

「あ、いいよそんな……」

「気にするな、まだ病み上がりだろう?これくらいさせてくれ」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 全身ぐしゃぐしゃにされて、20日も寝ていた男が気にするなと、障子は軽々と書籍の山を抱えて隣を歩き、棚に返し始めた。

 

「……過去の犯罪ファイルに、昔のヒーロー全集……何か調べていたのか?」

「まぁね、けど見つからなくて……」

 

 片付けていれば呼んでいた書籍は目にしてしまう、緑谷の読み調べていた本のタイトルを目にした障子より尋ねられ、緑谷は頷いた。

 

「黒燕ってヒーローチーム、ネットにも名前すらヒットしなくてさ……勘違いなのかな?」

 

 探しているヒーローチームか、何か知らないがそんな名前は過去の書籍にもネットにも見当たらず行き詰まっているのだと緑谷は語る。すると……。

 

「黒燕?鹿児島に昔居た自警団(ヴィジランテ)の事か?」

「えっ?障子くん何か知ってるの?」

 

 まさかの返答が障子から返ってきて、緑谷は彼を見上げた。障子は頷いて、緑谷に語り始めた、

 

「九州のプロヒーロー達の前身というか、ルーツとでも言うべきか……鹿児島を中心に黎明期に活動していたヴィジランテ達だな、郷土史に載るくらい規模も大きかったらしい」

「黎明期のヴィジランテだったか……通りでヒーロー史に無いわけだ」

 

 探していたのは、ヒーローではなくヴイジランテ……しかも地方に根ざしていたディープな物だった。それはヒーロー史や名鑑には無いなと溜息を緑谷は吐いたが、まさかの人から手掛かりを得るとはと一歩進んだことを緑谷は心中で歓喜した。

 

「……何か、あったんだな?」

 

 さて、そんな突飛もない調べ物が進展したはいいが、それをクラスメイトが知った。しかもつい先日まで重症、意識不明だった男が唐突に聞いてきたともなれば、障子目蔵が心配するのも当たり前の事であった。

 

「あ……えーっと……あー……」

 

 緑谷からしたら『意識不明の最中見た景色』なんて、語っても信じないだろう。だから言い訳を無駄にも考えたが浮かばなかった。そんな緑谷に障子は……。

 

「……言えない事なら言わなくていいが、もし助けがいるならすぐに言ってくれ、緑谷」

「えっ」

「AFOの因子だってそうだ、クラスメイトにも言えない事情をお前は抱えすぎている……怨龍の事も……」

「!!」

 

 緑谷は今更ながら『怨龍』と自身の関係が、既にクラスメイト達に露呈していた事を今日になって気付いた。

 

 いや、無理もない。あれ程の被害を出したヴィランで、自分は意識不明の重体、説明が必要になるし、その流れで相澤先生が言ったのだろうと流れを想像した。

 

 それを踏まえた上で、クラスメイト達は知りながら言葉に出さず、知らない素振りをしてくれていたのだ。緑谷への細やかな配慮であったのだ、それを責める権利は緑谷には無いし、むしろ感謝すら心底より湧き上がる事だった。

 

「意識を失っていた時に、夢を見てね……その中で出てきた言葉だった……」

 

 その配慮には、真実で返そう。緑谷は障子に語る事にした。

 

「長ラン?って言うのかな、制服を改造したような一団が掠奪者から守るために戦ってた、その中の一人……白い制服で"白燕隊"って呼ばれた一人がさ……緑谷隊長って呼ばれてた……とまぁ、変な夢が気になって仕方なくてね?馬鹿げてるでしょ?」

 

 あまりにも荒唐無稽だが、それが調べ物をしていた理由なのだと緑谷は障子に語った。気でも触れた話だろと苦笑を見せる緑谷に、障子は首を横に振った。

 

「馬鹿げてないさ、というか……」

「うん?」

「その通りだ、黒燕は黒い改造された制服を着ていた」

「うん!!?」

 

 それどころか、障子は緑谷に当たっているぞと答え、びっくりして声を上げた瞬間。

『スイマセン、トショカンデハオシズカニ』

「「あ、はい」」

 

 図書館司書ロボットに、二人は注意を受けたのだった。

 

 そこからはもう調べて辿り着くのは早かった。そして雄英高校の図書館の蔵書量も半端ではなかった、九州のヒーローに関する本から、黎明期の資料や文献に辿り着き、緑谷が棚から取り出した『地方ヒーロー史・九州編』に、その名前は見つかった。

 

 そこにはこう書かれていた。

 

『黒燕は、鹿児島県に本部を置いた個性黎明期の自警団で、その活躍は九州全土に響き渡り、プロヒーロー制度が制定されるまでその代わりを担っていた自警団である。ただ、当時の異形型個性差別もあり、異形排斥の思想が強く、無関係かつ犯罪者でもない異形達を手にかけた一面もあった。特に強い者達には、白い衣装を与え"白燕隊"として、戦場にいの一番に向かわせていた』

 

 当時の写真もあった、そこには確かに緑谷が夢の中で見た黒い装いの男達が、教練を終えた軍隊のようにきっちり整列していた。

 

「しかし、なんで緑谷の夢に黒燕が……緑谷はこの辺りの生まれの人間だったよな?」

 

 隣で同じく読んでいた障子は、夢の中でなぜ突然黒燕の映像を見たのか不思議でならなかった。九州の黎明期の自警団で、それこそ福島県出身の障子は知っていたが何故に緑谷がと尋ねた。

 

 その理由は、緑谷も既に浮かんでおり、即座に障子に答えた。

 

「父さんの故郷……鹿児島県なんだよ」

「えっ、久さんが?」

 

 出久の父、緑谷久の生まれ故郷が……鹿児島県であると、出久は覚えていた。それがいつ聞いたかは忘れたが、父の口から聞いた事だけは確かに記憶にあったのだ。それは知らなかったなと、緑谷の話に障子が驚き、そのまま緑谷は語った。

 

「両親は、僕を育てる為に絶縁して実家に一度も帰ってない……父さんの故郷に、叔父さんのあの異形の姿の理由と、夢の真実があるかもしれない……アメリカに行く前に、明らかにしておかないと」

 

 父の故郷に、叔父の異形化の秘密と、夢の景色の真実があると見た緑谷は、本を閉じながらそう語り緑谷は決める。

 

 行こう……縁を断った、父の故郷へ。そうしなければいけない気がすると。

 

 それはそうと━━。

 

「……待て、緑谷?お前アメリカ行くってどういう事だ?」

 

 探し当てた高揚から、隠していたアメリカ行きを口に出してしまった緑谷は、一気に青ざめて障子を見上げながら言った。

 

「…………聞かなかった事には?」

「すまん、無理だ、スポドリでも駄目だ、ちゃんと話せ緑谷」

 

 さっき言いたくない事は言わなくていいって言ったじゃん!!仕方なく緑谷は、とりあえず障子だけにはアメリカへ三学期の間留学する事を話したのであった。

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