※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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鹿児島弁にかんしては、こちらの翻訳をつかいました

https://onjyodoi.sakura.ne.jp/honyaku/honyaku.html


505話 父の故郷へ

 11月……

 

 日本のプロヒーロー達が、たった一人のヴィランに蹂躙され敗北を喫して、一ヶ月が経とうとしていた。

 

 さながら治りかけの傷に細菌が入り壊死を始めたかのように、その事実は様々な出来事となって波及していった。

 

 幸いなのは……かつてのエンデヴァーのスキャンダルよりかは、緩やかだった事か。また秩序崩壊に逆戻りにはならなかったものの、全国紙には様々なニュースが記されていた。

 

『プロヒーローの減少浮き彫りに、頼れるヒーローは現れるのか?』

『象徴なき日本、誰がこの国を守るのか?』

『特殊部隊再編?警察にて武装、個性使用解除の論調高まる、自衛隊もヒーロー減少受け意見多数、政権与党も議題に挙げる』

『アースファクトリー社開発局長斥野、新たなヒーロースーツ開発、"無個性もヒーローになれる時代が2〜3年内に"テスターに有名進学校と契約予定……』

 

 機内で広げた全国紙のニュースを眺めながら、緑谷は飛行機の到着を待った。

 

 静岡より1時間30分……これがバイクや車なら14時間掛かるらしい。

 

 幼少から一切、決して帰省する事無かった、縁を切った親族のいる父の故郷である鹿児島に、緑谷出久は向かっていたのだった。

 

 

 

『そうか、鹿児島に……』

『うん、だから教えてほしい、父さんの故郷がどこにあるか……僕の、父さんや叔父さ……怨龍の事について知りたくて』

 

 スマホを新調した緑谷は、父の久に鹿児島へ行く事を告げた。怨龍、叔父の緑谷悠に出会い敗北して大怪我した事も父は知っており、見舞いにすら行けなかった事を深々と謝罪した。出久も、怒り当たり散らした事を謝った。

 

 そして、自身が見た精神世界の景色、自警団『黒燕』について、緑谷悠とそれらに連なる自分のことを知る為に、決して行く事が無かった父の故郷に踏み入る事を決めたのだった。

 

『そうか……なら、僕も出久に話すことがある』

『何?』

『僕が実家に帰らなかった理由は、お前が原因じゃない……僕自身が理由なんだ』

 

 それを聞いた父から話されたのは、父方の親族との絶縁は、出久の個性が原因ではないという事だった。自らに原因があったのだと、父の久は出久に吐露した。

 

『母さんの実家はお前の個性で絶縁したのは事実だが、僕は元々鹿児島から出る時から縁を切っていた……出久は母さんの実家と同じ流れと思ってたみたいだが……そもそもお前を親族と会わせた事も、帰省した事も一切無いんだ』

『言われてみれば……』

『まぁ、訂正せず今日まで黙っていた僕が悪いんだがね……』

 

 久は、母の引子と静岡で出会う前から実家と縁を切っていた。出久も、一度だけ母方の実家に行った記憶はあったが、父方の実家へ行った記憶は一切無い事を思い出した。

 

 つまり、記憶にあった『個性による親族からの罵詈雑言』は、母方の親族からのみだったのである。しかし、それを利用した様に自身の親戚の事も語らなかった父に、緑谷はため息を吐いた。

 

『いいよもう……で、父さんの故郷って?』

 

 まぁ『時代最強のヴィランがきみの叔父さんで、僕の実兄です』なんて、子供に言えるわけないよなぁと、父の抱えたもの、心労を子どもなりに理解した出久は、父にさっさと故郷の場所を話せと催促した。

 

『鹿児島県の日置市から南下した先にある"陽界町(ようかいちょう)”という町だ、まぁ……行ったらすぐ分かる』

『行けば分かる?』

『それ程特徴がある町さ、兎も角気をつけて……』

 

 陽界町、それが初めて知った父の生まれた場所。そして"行けば分かる"ほどの特徴がある町だという……。出久はスマホのマップアプリを開き、現在地から陽界町までの道のりを調べた。

 

「……あれ?無い?嘘……」

 

 しかし、検索結果には『陽界町という地名はありません』と、出てきたのだ。まさか父がこんな場面で嘘をつく訳もないので……マップアプリに無い辺境なのかと、緑谷は少し怖くなった。

 

「足があった方がいいな、取っててよかったバイクの免許だ」

 

 となれば、自分で探すしかない。そしてこの場合、公共交通機関だと移動時間と範囲が制限される。緑谷は改めて、バイクの免許を取得していて良かったと空港すぐ近くにある、レンタルバイク屋へ向かうのであった。

 

 

 

 鹿児島空港より、南西へ50分の道のり……日置市。

 

 かの『鬼島津』こと、島津義弘公の縁の地であり、各所に島津家に纏わる観光スポットが散在し、JR伊集院駅には騎馬に跨る勇ましき『島津義弘公騎馬像』が観光客を迎えてくれる。

 

 その島津家の家紋を模った素朴な味わいの『伊集院饅頭』やラム酒を効かせたどら焼き『ラムどら』が銘菓、お土産として有名だ。

 

 また、西に行けば”日本の渚百選”にも選ばれている全長47kmの砂丘海岸『吹上浜』にたどり着き、江口漁港よりあげられた海鮮もまた名産である。

 

 レンタルバイクで市内に辿り着いた緑谷は、とりあえず誰かに聞けば『陽界町』の場所を知っているのか、市内の事は公的機関が一番だろうと、駐輪の関係から向かった先は……。

 

「陽界町?貴方(おはん)はそげな所に、何(ない)の用があって行(い)っのか?」

「え?」

 

 日置市役所だった、現地の役所なら町の名前や場所くらい知っている筈だと、とりあえず所内の職員に尋ねた結果、帰ってきたのは鹿児島弁と、怪訝な眼差しだった。

 

 市役所の職員がそんな事を言い、表情を濁す……因習村ならぬ因習町なのかと、緑谷は深く尋ねてみる事にした。

 

「それは……何故ですか?」

「そや貴方(おはん)、あの街は異形型の個性を持った人の町なのじゃっで、普通の人は白(し)れ目で見られますよ」

「異形型の個性の……町?」

「昔から陽界町は、差別(たてへだ)てされた異形の人が集まってできた町で、よそん奴(やっ)を快く思(おも)ていない、市役所(やっしょ)も警察(けいさっ)も、ヒーローも尋(たん)ぬいのは必(かなら)し異形型の人が行(い)っようにしちょっ程、排他的な町なのです」

 

 鹿児島弁……難しい!!とりあえず何とか緑谷が理解したのは。

 

・陽界町は異形個性の町。

・普通の人間が行けば白い目で見られる。

・警察もヒーローも役所も、仕事だろうが、異形の人しか行かないようにしている。

 

 と、言う事らしい。

 

「ありがとうございます……それで、どう行けば?」

 

 緑谷が行き方を尋ねれば、職員は呆れながら教えてくれた。本気で行くのか、知らんぞとでも言いたげな表情だった。

 

「県道37号を道なりに行(い)っと、途中(つと)に鳥居が建てられた道がある。そっかい鳥居に従(した)ごて行けば陽界町に行(い)っがなっよ」

 

 職員に道を教わった緑谷は、頭を下げて日置市役所から退出した。

 

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