【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
11月……
日本のプロヒーロー達が、たった一人のヴィランに蹂躙され敗北を喫して、一ヶ月が経とうとしていた。
さながら治りかけの傷に細菌が入り壊死を始めたかのように、その事実は様々な出来事となって波及していった。
幸いなのは……かつてのエンデヴァーのスキャンダルよりかは、緩やかだった事か。また秩序崩壊に逆戻りにはならなかったものの、全国紙には様々なニュースが記されていた。
『プロヒーローの減少浮き彫りに、頼れるヒーローは現れるのか?』
『象徴なき日本、誰がこの国を守るのか?』
『特殊部隊再編?警察にて武装、個性使用解除の論調高まる、自衛隊もヒーロー減少受け意見多数、政権与党も議題に挙げる』
『アースファクトリー社開発局長斥野、新たなヒーロースーツ開発、"無個性もヒーローになれる時代が2〜3年内に"テスターに有名進学校と契約予定……』
機内で広げた全国紙のニュースを眺めながら、緑谷は飛行機の到着を待った。
静岡より1時間30分……これがバイクや車なら14時間掛かるらしい。
幼少から一切、決して帰省する事無かった、縁を切った親族のいる父の故郷である鹿児島に、緑谷出久は向かっていたのだった。
『そうか、鹿児島に……』
『うん、だから教えてほしい、父さんの故郷がどこにあるか……僕の、父さんや叔父さ……怨龍の事について知りたくて』
スマホを新調した緑谷は、父の久に鹿児島へ行く事を告げた。怨龍、叔父の緑谷悠に出会い敗北して大怪我した事も父は知っており、見舞いにすら行けなかった事を深々と謝罪した。出久も、怒り当たり散らした事を謝った。
そして、自身が見た精神世界の景色、自警団『黒燕』について、緑谷悠とそれらに連なる自分のことを知る為に、決して行く事が無かった父の故郷に踏み入る事を決めたのだった。
『そうか……なら、僕も出久に話すことがある』
『何?』
『僕が実家に帰らなかった理由は、お前が原因じゃない……僕自身が理由なんだ』
それを聞いた父から話されたのは、父方の親族との絶縁は、出久の個性が原因ではないという事だった。自らに原因があったのだと、父の久は出久に吐露した。
『母さんの実家はお前の個性で絶縁したのは事実だが、僕は元々鹿児島から出る時から縁を切っていた……出久は母さんの実家と同じ流れと思ってたみたいだが……そもそもお前を親族と会わせた事も、帰省した事も一切無いんだ』
『言われてみれば……』
『まぁ、訂正せず今日まで黙っていた僕が悪いんだがね……』
久は、母の引子と静岡で出会う前から実家と縁を切っていた。出久も、一度だけ母方の実家に行った記憶はあったが、父方の実家へ行った記憶は一切無い事を思い出した。
つまり、記憶にあった『個性による親族からの罵詈雑言』は、母方の親族からのみだったのである。しかし、それを利用した様に自身の親戚の事も語らなかった父に、緑谷はため息を吐いた。
『いいよもう……で、父さんの故郷って?』
まぁ『時代最強のヴィランがきみの叔父さんで、僕の実兄です』なんて、子供に言えるわけないよなぁと、父の抱えたもの、心労を子どもなりに理解した出久は、父にさっさと故郷の場所を話せと催促した。
『鹿児島県の日置市から南下した先にある"陽界町(ようかいちょう)”という町だ、まぁ……行ったらすぐ分かる』
『行けば分かる?』
『それ程特徴がある町さ、兎も角気をつけて……』
陽界町、それが初めて知った父の生まれた場所。そして"行けば分かる"ほどの特徴がある町だという……。出久はスマホのマップアプリを開き、現在地から陽界町までの道のりを調べた。
「……あれ?無い?嘘……」
しかし、検索結果には『陽界町という地名はありません』と、出てきたのだ。まさか父がこんな場面で嘘をつく訳もないので……マップアプリに無い辺境なのかと、緑谷は少し怖くなった。
「足があった方がいいな、取っててよかったバイクの免許だ」
となれば、自分で探すしかない。そしてこの場合、公共交通機関だと移動時間と範囲が制限される。緑谷は改めて、バイクの免許を取得していて良かったと空港すぐ近くにある、レンタルバイク屋へ向かうのであった。
鹿児島空港より、南西へ50分の道のり……日置市。
かの『鬼島津』こと、島津義弘公の縁の地であり、各所に島津家に纏わる観光スポットが散在し、JR伊集院駅には騎馬に跨る勇ましき『島津義弘公騎馬像』が観光客を迎えてくれる。
その島津家の家紋を模った素朴な味わいの『伊集院饅頭』やラム酒を効かせたどら焼き『ラムどら』が銘菓、お土産として有名だ。
また、西に行けば”日本の渚百選”にも選ばれている全長47kmの砂丘海岸『吹上浜』にたどり着き、江口漁港よりあげられた海鮮もまた名産である。
レンタルバイクで市内に辿り着いた緑谷は、とりあえず誰かに聞けば『陽界町』の場所を知っているのか、市内の事は公的機関が一番だろうと、駐輪の関係から向かった先は……。
「陽界町?
「え?」
日置市役所だった、現地の役所なら町の名前や場所くらい知っている筈だと、とりあえず所内の職員に尋ねた結果、帰ってきたのは鹿児島弁と、怪訝な眼差しだった。
市役所の職員がそんな事を言い、表情を濁す……因習村ならぬ因習町なのかと、緑谷は深く尋ねてみる事にした。
「それは……何故ですか?」
「そや
「異形型の個性の……町?」
「昔から陽界町は、
鹿児島弁……難しい!!とりあえず何とか緑谷が理解したのは。
・陽界町は異形個性の町。
・普通の人間が行けば白い目で見られる。
・警察もヒーローも役所も、仕事だろうが、異形の人しか行かないようにしている。
と、言う事らしい。
「ありがとうございます……それで、どう行けば?」
緑谷が行き方を尋ねれば、職員は呆れながら教えてくれた。本気で行くのか、知らんぞとでも言いたげな表情だった。
「県道37号を道なりに
職員に道を教わった緑谷は、頭を下げて日置市役所から退出した。