※この作品はR-18です。

【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】   作:ぶっこ抜きデク

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509話 もう二度と迷わない

 十数年を経ての、初めての親戚との会合。その始まりが、これまた悪事を働く叔父に敗北したからというのがなんとも業な事だろうか。

 

 それでも、出久は祖母と語って一泊し、翌朝には鹿児島空港へ出発した。本当なら2、3泊していきたいがそうもいかない。

 

 ヒーローに休みは無い、相澤先生は言った。

 

 そして、緑谷出久もまた、新たな目的のために1日すら惜しかった。

 

 必ずや叔父を、ヴィラン『怨龍』を倒す。

 

 オールマイトがかつてAFOを倒したように、自分にとっての宿敵が怨龍なのだと、必ず次は勝つと、帰路をバイクで走らせながら誓った。

 

 鹿児島空港より飛行機で静岡へ、緑谷は地元に帰還した。

 

 帰れば、また雄英の日常へ戻った。

 

 ヒーローインターンと授業の日々……そして期末テストへ向けて机に向かう、静か過ぎる程に日々が過ぎていった。

 

 11月はあっという間に過ぎ去り、12月……。

 

 ついに、この時はやってきたのだ。

 

 

「期末テストご苦労様、ちゃんと勉学も身について嬉しいよ……なんと赤点無し、追試をしないで済む」

「うぉおやったああーー!」

「頑張った、うちらがんばったよぉ!」

 

 二年生二学期の期末テストを終え、相澤からのコメントに叫びが二つ上がった。筆記では下位常連、上鳴電気と芦戸三奈は両手を挙げて歓喜の叫びを上げた。死活問題の筆記を超えられたと涙すら二人は見せた。

 

「実技テストに関しても全員合格、個性伸ばしにヒーローインターンで培った実力は確かに出ている、もう三年生もプロ試験も目前……気を抜かないようにそのまま邁進して欲しい」

 

 さて……と相澤は片目で緑谷を見て、緑谷は頷いた。

 

「後は冬休みと三学期になるわけだが……お前達に報せがある、三学期の間……緑谷はアメリカへ留学する事が決まった」

 

 その報せを、相澤先生が皆に伝えた瞬間……静寂が数秒訪れた。

 

「「「「えぇえええええーーーーー!!?」」」」

 

 聞いてないぞと2年A組が揺れた。唯一図書室で話を聞いた障子は、緑谷お前言ってなかったのかと目を見開いてたし、爆豪に至っても今回は身体を向けて後ろの緑谷に目を向けた。

 

「緑谷は雄英で行なっている短期留学プログラムで、姉妹校のロサンゼルス・ヒーローズファクトリーで三学期の間学んでくる事になった、次にここへ戻ってくるのは三年生4月からだ、以上……次の授業の準備を忘れないように」

 

 伝える事は伝えたと、相澤先生はそう言って退室した。あくまで必要な事を、合理的には崩さない、何か一言よりも各々休憩時間内で個別に尋ねるなりするようにという意図だろう。

 

 相澤が退出した瞬間……A組クラスメイトは立ち上がって緑谷の席に突貫した。

 

「緑谷ぁどういう事だおいら聞いてねぇぞ!?」

「いつ決めた!?一年の時とは別件だよな!!なんで言わなかった!!」

「やはり何か思い詰めてないか……唐突過ぎるぞ同胞よ」

 

 唐突過ぎる留学の話に、やはり何があったとクラスメイト達は心配した。緑谷出久はこの二年、同じクラスメイト達に多大な心配をかけた事が幾度とある。精神的な不安定さももう理解の内だから、留学へ行く事への"凄さ"よりも留学に踏み切った"心配"が勝った。

 

「一気に来るんじゃねぇ暑苦しいわ!!」

 

 近い席ゆえにクラスメイトの波に暑苦しいから距離離せと爆豪の怒号が飛び、皆下がった。それはそれとしてと、緑谷に爆豪は顔を向け尋ねる。

 

「テメェが留学とはな……ヴィランの叔父の事だろ、どうせ?」

「容赦無いねかっちゃん、一番にそれ言う?」

 

 どうせお前がそんな事に踏み切るのは、この前の叔父さんに負けたからだろうなと、腐れ縁の幼馴染はよく緑谷を理解していた。

 

「強いだけがヒーローじゃない……僕も口ではそう言ってるんだけどね、だけど強さは僕の唯一の拠り所でもあったわけで、それを砕かれた……完膚なきまでの敗北だった」

 

 ヒーローにとって『強さ』は確かに大切だ。だけどそれよりも必要なのは『心』だと、緑谷は重々理解し承知もしている。

 

 けど、その『強さ』を打ち砕かれたのだ。今でこそ、緑谷自身『それ以外もある』と胸を張れるくらいには手に入れてきたつもりだが、一番の根底、根本を折られた事で再び欲してしまった。

 

『強くなりたい』と。

『もう、負けない』と。

 

 あの日、面会室のスピナーに、溶け合った死柄木弔に誓いを立てた。

 

『ヒーローである最後の時まで負けない』と。

 

 それをもう一度、破った誓いを立て直す為に、緑谷はヒーローの本場で強くなると決めたのだ。

 

 周囲に集まるクラスメイト達に、緑谷は立ち上がって言い放った。

 

「4月には、また強くなって帰ってくる……誰にも負けない力をつけて、それまでお別れになるけど……あー……今日まで言えなくてごめんなさい」

 

 障子からは前もって言っておけとは指摘されたがやはり言えなかったのだった、遅くなったが頭を下げて緑谷は皆に頼んだ。このまま、何も言わずに送り出して欲しいと。

 

「そっか……まぁ緑谷がそう決めたなら俺らは何も言えねぇわな!」

「まぁでも?前もっていって欲しかったっちゃああるよなぁ、マジで驚いたもん」

 

 切島が緑谷の選択に、何も口出しはできないと笑って言う。上鳴は前もっていって欲しかったと苦笑を浮かべた。

 

「そうと決まれば、壮行会開こうぜ!青山ん時みたいによ!アライアンス借りて盛大にやろう!」

「だな!緑谷、ケーキ焼いてやるから何がいい?」

 

 決まった以上しっかり送ってやろう、瀬呂が壮行会をやろうと提案し、気が早いながら砂藤は緑谷にケーキのリクエストを聞き始めた。

 

 もう段取りを始めるクラスメイト達に、緑谷は自然と笑みが浮かんだ。思えば本当に、この2年近くで自分は色々手に入れたのだなと。心配してくれる人なんて、祝ってくれる人間なんて親くらいだったものだ。

 

 だから緑谷は自分自身で理解していた。大丈夫だと、もう前の雄英を去った時のようになりはしないと。

 

「じゃあエンゼルシフォンケーキで」

「遠慮しねぇなぁ!?」

 

 中々の難易度のケーキを所望した緑谷に、砂藤は苦笑する。

 

 そうして、緑谷の壮行会はかつて皆が過ごした1-Aアライアンスを借りて、盛大に行われた。

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