【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
アメリカ留学初日はこうして終わり、緑谷はメリッサの退勤後に迎えに来てもらうと、そのまま帰る前に途中のレストランで夕食を取る事になった。
「どうだった、留学初日は?突っかかってくる人とか居なかった?」
「いや、充実した一日だったよメリッサ」
「それはよかった」
料理が運ばれる前に、メリッサからどうだったか尋ねられる。まるで母と息子が入学初日を尋ねられるようだが、実際は中々に複雑な状況かつ関係である。
「話し相手も出来たし、何より……アメリカの層の厚さにびっくりした」
「早速ライバル見つけたの?どんな子?名前は?」
緑谷の初日の様子は上々らしく、メリッサも聞いてて楽しいのか笑顔を浮かべ頬杖をつきながら聞き入った。
「レックス・G・ウィンドソーって名前のヤツ、金持ちらしいナルシストだったけど……オールマイト超えのタイムで救助実習をやってのけた」
緑谷がその名前と人物の在り方を話すと、メリッサは目を見開いた。
「ウィンドソーって、ゴルドリッチグループの御曹司じゃない、あの子ここに通ってたんだ」
「知ってるの、メリッサ?」
どうやらメリッサは知っていたらしい。緑谷は知る限りの事を、彼女から聞く事にした。
「ゴルドリッチグループって言う、世界中にセレブ御用達の高級スパリゾートホテルを経営してる会社、日本の東京にもあって私も何度か泊まった事があるわ、そこの跡取り息子がレックス・G・ウィンドソーよ」
レックスの家は、ホテルグループの主宰らしい。中流階級の緑谷には馴染みもないが、世界的科学者を父に持ち自らも発明家のメリッサは、何度かホテルを利用した事があるらしい。1泊数万どころか、十数万とか100万とか当たり前な世界だろうなと考えながら緑谷はつぶやいた。
「御曹司……あぁそれであんな派手な、しかしどんな個性なんだ……」
あの宝石を散りばめられたヒーロースーツ、派手なだけではないだろうがオールマイトを超える時間で救助活動を行なった、その秘密は個性にあるのだろう。
同じグループだったら見れたが惜しい事をしたなと緑谷は、テーブルに視線を落とす。
「イズクが留学に躓かなくて安心したわ、とりあえずは切り替えていきましょう、抱え込むと碌な事にならないから、初日はまだ心の準備は難しいもの、ご飯食べてシャワー浴びて寝てリフレッシュしましょう」
そんな緑谷に、メリッサから年上らしいアドバイスが飛んできた。まだ留学初日だ抱え込むなと、とりあえずリフレッシュして明日から、色々考えたら良いと言われた。
緑谷も、かつての日本で自分だけで色々抱えた事が幾度もあったので、それもそうかと納得するのだった。
「わかったよメリッサ、そうする」
「よろしい、というわけで来たわよイズク」
恰幅のいい店員がカゴを持って、テーブルにそれを置いた。視界にそれが入り絶句し、店員が紹介する。
「お待たせ、こちらスタープレートセットになります」
スタープレートセット!!
アメリカBBQにおける、セット内容の形式の名称である!スペアリブにブリスケット、ハウスサラダとフライドオクラに、オニオンブロッサムとロールパン!
かつての若き時代の『スター・アンド・ストライプ』がよく頼んでいたこの組み合わせは、アメリカ全土のBBQレストランで、セットメニューに掲載されて一つの形式となっていた!
「……結構量あるね、これをスターが若い頃1人で……」
「あははは……食べきれなかったらテイクアウトしましょ?」
メリッサもこの量には驚いたらしく、テイクアウト確実だと苦笑いした。食べれる事も、大きくなるのも才能だが、あの逞しい女傑の理由を緑谷は垣間見たのだった。
「そうしよう……ではいただきます」
そう言って緑谷は早速、巨大な骨付きスペアリブをカゴから取り出して齧った。
歯を伝う柔らかさ、複雑なスパイスが味蕾を叩き、肉汁が口いっぱいに広がり……ショートした。
「い、イズク!?大丈夫!?もしかして口に合わなかった!?」
噛み切り、心配するメリッサに咀嚼して飲み込む姿を見せて、口の油を拭き取ってから緑谷はメリッサに告げる。
「いやぁ……これは、美味しいけど危ないや、毎日食べたくなる」
お世辞では無い、それ程までにこのスペアリブは美味しかった。チェーン店ながら、まさかここまでとはと緑谷には衝撃だった。何百年肉の焼き方を研鑽して来たその歴史が、スペアリブに詰まっていたのだ。
「あははは!毎日食べたら太るわよ、ファットガムみたいに」
「あの人いいよなぁ、溜め込んだ分エネルギーにして解放したら痩せれるし……」
この時ばかりは、切島がインターンで頼っているファット・ガムを羨ましいと緑谷は呟いたのを、メリッサは笑いながら、オニオンブロッサムの一切れをちぎって口に入れる。
「これを開発した人って偉大よね、ただでさえ美味しいオニオンリングを花に見立てて揚げるんだもの」
「分かる、モスのオニオンリングだと美味しいけど食べ足りないんだけど、これはもう満足だよ見た目も味も」
結局、テイクアウトの器は必要無く、二人でしっかり平らげて帰宅するのであった。
留学2日目、緑谷は徒歩で早速L・H・Fに登校した。周りを見たら意外な事に、バイク通学や映画で見たスケボーで来る者も見た。確か……車でも出来るらしいなと、片隅の知識から引っ張り出しつつ、最初のHRの為にAクラスへ向かった。
「やぁイズク、聞いたよ?昨日の実習大活躍だったみたいだね?」
教室に入るやビルが手を上げ挨拶してきた、ハイタッチしながら緑谷は、活躍は確かにしたのかもしれないがと、昨日の話を彼にする事にした。
「そうらしいけど、実力差見せつけられてさ……大体80人助けたけど、レックスが110人助けたんだ」
「あ、レックスやっぱり実習だけ来たんだ?」
「ヘリから降りて来たよ、スーパーヒーローみたくね」
「あいつ自家用ヘリとかジェットあるからねー、金持ちだし……それよか80人も助けたら学校じゃトップクラスだ、Bクラスのエリックの50がやっとなんだ、誇りなよ」
レックスに負けた話をしたが、ビルは気にせず、君はすごい奴だとなけなしに褒めて来た。緑谷からすれば、褒められ慣れてないのでむず痒いし、何よりやはりレックスの数値に感嘆はしてしまったわけで、緑谷はビルに卑屈な話を吐きそうになった。
「その……嬉しいけど、やはりああも実力差を見せられたら……」
「貴方の80と、レックスの110じゃ質が違うわよ」
その話に、横から入って来たのは女子だった。気の強さが見えるか細くも、筋肉の線が見えるしなやかで力強さが伺える銀髪の、アルビノじみた白肌の少女は、緑谷に言い放つ。
「昨日の授業、私Aグループだったけど貴方を見たわ、貴方は他のチームに託すべきは託し、率先して動いて、ダミーをしっかり本物と想定して動いていた……そうでしょ?」
「あ、まぁ……実戦を想定しろって日本では……キミは?」
「アメリア・ホワイツ、よろしくMr.ミドリヤ……で、レックスは自分が自分がって自分が目立つ事しか考えてないの、まぁ流石に横取りまではしないけどさ、目の前で何度掻っ攫われたか……ヒーローとしては貴方の方が上よMr.ミドリヤ」
アメリアは言う、キミのスコアとレックスのスコアは質が違うと。
本番を意識し、ダミーを救助者として見立て、連携を意識した動きの緑谷の80点と、ただダミーでしかない、自分の活躍をよしとするポイント獲得ゲームとみたレックスの110点は質も違う、キミのがヒーローとしては上だと彼女は言い切った。
「そ、そこまで言い切るとは、ありがとう、素直に受け取るよ」
そこまでストレートに言い切るのはアメリカなのかなと、緑谷も流石に頭を掻いて照れたのだった。
「酷いじゃないかMs.ホワイツ、僕は自分が動けばあの場の誰よりも早く助けられるからこそそうしたまでなのにさ?」
が、ここに来てアメリアに声がかかった。入り口のドアに背中を預けるレックスに、マイケルもビルも、アメリアも驚いた。
「レックス!?あんたが朝から!?」
「どうしたおい、今日タイフーンでも来るのか!?」
「午前授業はサボるキミが何故……!」
緑谷は彼らが普段どんな生活を送っているか知らないが、少なくともレックスは午後実習しか来ない、午前の通常授業に顔を出さないのが当たり前な存在だと、この台詞で理解した。
「校長から直々に呼ばれてね、なんでもそこの留学生と私に話があるらしいんだ?喜びたまえ留学生、この僕がキミを校長室への案内をするんだからね?」
「イズクにだと……あ」
名前は呼ばず、留学生と緑谷を呼称したレックスに、マイケルは少しばかり眉間に皺を寄せたが、読んだ理由を理解すると、諦め顔で緑谷の肩を叩いた。
「その、なんだ……3ヶ月がんばれイズク」
「えっ、何、どう言う事?」
「運が悪いなキミは」
「何いきなり、ビルまで!?」
「Good luck Mr.ミドリヤ」
「僕何されるの!?誰か答えてよ!!」
3人して『やっちまったな』『貧乏籤引いたな』『貴方を助ける事はできないの』と表情を向けられた緑谷は、そのまま席を立たされてレックスの元に押し込まれた。
「さぁ留学生、最初で最後の僕のエスコート、味わってくれたまえ」
「いや本当、何するかされるのかせめて教えて欲しいんだけど!?」
レックスも台詞に似合わない笑顔でドアを開き、緑谷は共に校長室へ向かった。