【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「失礼します」
校長室への入室は二回目だった。昨日のクラスに入る前の挨拶で、そして今。
レックスの後に続いて緑谷はそう言って入室し、執務机で書類を眺めていた若き校長は立ち上がった。
「やあレックス、そしてイズク、呼び出してすまないね」
「ロジャー校長、何用ですか?単位なら僕は一切取りこぼしはありませんよ?」
笑顔を崩さず校長にもこの軽口、余程好き勝手しているらしい。緑谷は何も言わずに、校長が用事を話すのを待った。
ロサンゼルス・ヒーローズ・ファクトリー校長"ジョン・ロジャー"!!
まだ40歳ながら、この名門ヒーロー校を統括する若き校長!かつては名ヒーローだったが、大怪我により引退を余儀なくされた"悲運の天才"とも呼ばれている。校長就任後に学校の全体の成績の向上を成し遂げた、名指導者でもある!個性は『ハイパワー』!
「キミも理解しているはずだ呼ばれている理由を、ここでイズク共々話すし、キミには必ず受けてもらう話だレックス」
ロジャー校長の厳しい眼差しにも、レックスはどこ吹く風とそっぽ向く。緑谷はさて何の話だと身構え、ロジャーは改めて緑谷に説明を始めた。
「イズク、この学園にはバディ制度というものがあってね……」
「バディ制度?」
「ああ、校外実習やヒーロー活動の際、生徒でタッグを組んで事にあたるというものだ、それによりチームワークと仲間意識を高めるという、L・H・F独自の取り組みだ」
そんな取り組みがあるのかと緑谷は唸る、雄英なら一二年の合同訓練にあたるものかと考えると……流石に緑谷は呼ばれた理由を理解した。
「……えっと、ロジャー校長先生?つまり……僕のバディって?」
「察しが良くて助かる、留学の間にレックスと組んで欲しい」
3人から同情と哀れみを向けられた理由はこれか!問題児とタッグを組まされるとは、もしかして体のいい押し付けか!?と、内心唖然としたが、断ることも出来ない状況であった。
「わかりました、レックスとバディを━━」
その宣告に頷こうとした緑谷に対して……。
「お断りしますよ、Mr.ロジャー」
「は!?」
Noと言えない日本人ならぬ、Noと言えるアメリカ人とばかりに、レックスは校長からの話を断るのだった。
「……イズク・ミドリヤは大戦の英雄とまで呼ばれた日本のエリート雄英の実力者、それでもバディに不釣り合いかね?レックス」
溜め息を吐くロジャー校長は、緑谷程の実力者であっても不服かと執務机に両肘ついてレックスに尋ねた。
「僕にバディなんて必要ありませんよ校長?それは中学時代の実習から証明しているじゃありませんか?むしろ、バディが足を引っ張り僕の成績を下げるのが心配でならない……」
足を引っ張る、成績が下がる?随分言ってくれるなと、普段自分の悪口に関してはスルーする緑谷も、目の前でここまで言われたので苛立ちを覚えた。
「まぁ、僕のサイドキックか小間使いとしてならキミと契約を交わしてあげてもいいよ、バディではなくね?」
サイドキックどころか"小間使い"とまで言われた緑谷は、流石に言い返した。
「調子に乗るなよメリケン野郎、お前なんて雄英だったら一日持たずに除籍だ、ぬるま湯のご当地で王様気取って気分いいか?」
その返答には、レックスも一瞬固まったが、緑谷を見下ろして言い返した。
「随分言うじゃないか、この僕を相手にそこまで啖呵を切る奴は久々だよ……余程身の程を知らないらしいな?」
互いの目線はぶつかり合いバチバチに火花を散らす、今ここでもうやり合う気満々な二人に、ロジャー校長は声を上げた。
「OKわかった、そこまでだ!ならこうしよう……時代遅れの原始的解決法で行こうじゃないか」
ロジャー校長のストップと提案に、緑谷とレックスが止まった。そしてロジャーはレックスに言う。
「レックス、イズクと模擬戦闘訓練で戦いたまえ、それでイズクに勝てば今後の単独の活動を認めよう、ただし負けたら……イズクとバディを組んでもらう、それでいいか?」
緑谷は驚いた。それ、していいのかと。日本ではあり得ない決着の付け方に、呆ける緑谷だったが、レックスはフンスと鼻息荒く吐いて答える。
「それでいいですよ校長、無論僕が負ける事など一切あり得ませんから、たとえ相手が大戦の英雄であろうとも……ね?」
この自信はどこから来るんだ、しかし不気味なほどに強気な彼に対して、此度は緑谷も普段らしからぬ喧嘩腰になって言い返した。
「病院、予約しときなよ?明日には一年間入院する羽目になるから」
本当に火花が現れそうな程に睨み合い、二人して舌打ちしながらそっぽを向いた。
「まぁあれだ、時には殴り合って理解する男の世界もあるな……本日午後、昼食の後に校内演習グラウンドにて、臨時戦闘演習を行う!ヒーロースーツで来ること、いいね!」
こうして、緑谷は留学2日目にして、学園1の実力者との模擬戦闘訓練という名を借りた、決闘が決まった。
……それはそうと、ロジャー校長の顔も笑顔だったのは、教職としてどうなんだと緑谷は若干引くのであった。
そして、会場となる校内演習グラウンドという名前の全天候型アリーナ『ロサンゼルス・ヒーローズ・ファクトリーフィールド』に、緑谷出久は入り口に立っていた。
「……なに、これ?」
その入り口に、高々と掲げられていたのは……自分と、レックスが睨み合う巨大広告だった!ご丁寧に『Rex vs Izuku〜USA VS JAPAN New Generation War』と、格闘技興行の広告であった!
というか、明らかに生徒達までアリーナ向けて歩いてるわ、出店は出てるわ、ポップコーンの入れ物にチュロスのパッケージが、レックスと自分のまで既に作られており、これは一体何事かと、緑谷は唖然とする他なかった。
「あ、イズク!居た居た!何してんのさ、早く関係者入り口に来なって!」
驚愕する緑谷に、ようやく見つけたとばかりにビルが、緑谷の手を引き早くこっちだと手を引く。
「ちょっ!待て、待ったビル!これは一体なに!?僕は確かレックスと模擬戦だと……」
「ああそうさ、模擬戦さ!既にキミが朝呼ばれてレックスとそうなった話が校内に告示されてね!そっからはもうビジネス志望が動いてここまでやった!」
「判断が早すぎる!?そして学校側もよく許したね!?」
「授業の一環だからね!商機は早い者勝ちがうちの経営学のモットーさ!」
私闘じみた模擬戦を商売というか、興行にしたのかここのビジネス志望は!?雄英の経営学科でもここまで……やっていいならやりそうではあるが、アメリカのこの突き抜けた勢いは国柄らしい。
『怒られそうだからやらない』ではなく『やって怒られたら反省する』という思考なのだろう、ビルに連れられ関係者入り口から入った緑谷は、そのまま控え室に通された。
「お、来たなイズク!レックスと戦うとは流石大戦の英雄!」
「マイケル!?もうちゃっかり楽しんでらっしゃる!?」
控え室ではマイケルが、許可すら出した覚えがない緑谷のポップコーンのケースやら印刷された入れ物のチュロスを携えていた。
それだけではなく、見知らぬ顔も居てアジア系の生徒は緑谷に話しかけた。
「イズク・ミドリヤ、入場曲はあるかしら?無いならこちらでイメージから選ぶわ」
「……入場曲とは?」
「入場の時の曲よ、当たり前じゃない」
入場までやるの!?もう本当に格闘技の興行じゃないかと緑谷は唖然としたが、もうこれは流れに身を任せるしかないと、スマホを取り出した。
「あーえっとえっと……じゃあこの曲いける?名前は……」
「アオイ、アオイ・フラワー、同じ学年でB組よ、よろしく」
……何処かで見た事あるような、社会崩壊時助けた人に居たかな……緑谷は恐らく会ったことない筈だが、何だかアオイに既視感を覚えたが、とりあえずスマホにダウンロードした音楽を見せれば、彼女は頷いた。
「OK、入場はレックスからよ、その後貴方の番になれば音楽鳴らすからゲートから入場して、大戦の英雄の力、見せてちょうだい」
そのまま既に裏方役をこなす、同校生徒達に連れられ、緑谷は入場ゲート前まで連れられた。
模擬戦がまさかイベントマッチにまでされるとは、雄英の先生方が聞いたら卒倒するだろう。だが、緑谷も負ける気は毛頭ありはしない。
ここで負けるなら、怨龍への再戦などまた遥か彼方……躓くわけにはいかないと、緑谷は息を整え、入場の合図を待った。
・アオイ・フラワー
緑谷と別クラス、Bクラスのアジア系アメリカ人。プロデュース関連の職につきたいらしい。
逢魔ヶ刻動物園の主人公『蒼井華』のオマージュキャラである。個性は不明。