【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「黄色猿って本当に言われるんだなぁ……」
「え!?誰がそんな酷い事言ったのさ、キミに!」
「エリックに、バイクで登校したんだけど駐輪所で絡まれた」
朝一の教室でぼやいた緑谷に、ビルが驚いた。誰がそんな酷い事をと慌てて尋ねたビルに、緑谷が口にした相手を聞いて、ビルはあー……と言葉を濁した。
「エリックなら言うなぁ……あいつ古い筋肉実力主義でこの学校で"L・H・Fの暫定トップ"なんて不名誉な肩書き持ってるし、レックスに勝ったから絡まれた?」
「引き分けだけどその通り、と言うか暫定トップとは?」
「名前通りさ、この学校"暫定"のトップ……まぁ組織力?と言うか様々な面でも確かにエリックは学園トップなんだけど……」
「エリックとレックスは一度、この前のレックスとイズクみたいに衝突して負けたんだよ』
ビルの言う『暫定トップ』なる言葉の意味を、緑谷は尋ねた。すると、遅れて登校したらしいマイケルが、話に入って説明してきた。
「成績も優秀、ヒーロー活動実習もレックスに引けを取らない、さらにはアメフト部のキャプテンなエリックだけど、レックスと戦った結果負けた……で、レックスは学外にしか目は向いてなくて、学園内のカーストも興味ないからさ、勝った後も振る舞いは変わらなかった……エリックからしたら、負けた事だけが残ったし、下の子達に示しもつかないままにされてんだ」
マイケルの語る2人の経緯に、緑谷は顔を顰めた。それは……レックスは酷い事をするなと。ヒエラルキーに興味が無いレックスは、勝ちの結果だけで十分だが、負けたエリックからすれば、とどめを刺されず汚辱に塗れ生きろと言われているものだった。
レックスが学園の王として、エリックやその傘下の仲間たちを率いていれば、まぁ拗れなかったが、あのレックスはあるがまま、自分は自分、学内のカーストに収まる気もない人間だから後処理もせず捨て置いているわけだ。
日本とアメリカのスクールカーストは凄まじい違いがあるし、人生すら左右するなんて聞く。L・H・Fにはそこまでな事は無いとマイケルも、ビルも言っていたがあるにはあるし、それを頼りに誇りを保つ輩も居るのだ。
「まぁ何より……エリックの彼女のチアリーダーのさ、B組のクイーンであるアイーシャがね……」
「え?まさか……レックスがやらかしたの?寝取りとか……最悪な事を?」
何よりその確執として根深いのは、B組のクイーン……姿だけは緑谷もカフェテリアで見た、一角を陣取るチアリーダー組の中の誰かは知らないが、アイーシャというチアリーダーだがとビルが語れば、まさかレックスがちょっかいをと怪訝な顔になった。
「いや、エリックが負けた後にさ、レックスに迫って振られたんだよアイーシャ、それでもう女子ヒエラルキーも男子もぐちゃぐちゃ、さながらマグニフィ◯王封印後のロサス王国かな?」
「おおうどろどろだ、なんだっけ?ビバリーヒ◯ズ高◯白書並に……」
「古いぞイズク、100年以上前のドラマだぞそれ?」
この学校のこの同学年はそんなどろどろの人間関係になっているのかと、超常前の更に前なアメリカン恋愛ドラマを例に出す緑谷にビルは笑ったところで、始業ベルが校内に鳴り響いた。
今日も授業を真面目に緑谷はこなしていく。移動授業ばかりな為、あちこち歩き回るのが緑谷にとっては気分転換にもなり楽しかった。違う環境は刺激になると言うが、まさしくその通りかもしれないと、鼻歌混じりに廊下を歩く。
だが教室を間違えそうにもなるのは、まだ日が浅い証拠だ。次の数学は確か右だったか左だったかと、確か左かと廊下を曲がると……。
「うん?なんだ……」
生徒達が壁際に寄っていた、見ると奥からチア衣装を着た集団が、さながら女王の行進とばかりに歩いている。直線上に立つ緑谷は……まぁ横を歩けばいいかと立ち止まらず、端に寄って歩く事にした。
別に邪魔してないからいいだろう、緑谷はそのまま横を通り抜けようとしたが……。
「あー……ちょっと貴方?」
「はい?」
最前列のチアガールが緑谷を見下ろしながら止まれとばかりに呼び止めた。
今更ながら緑谷は気付く、このチアガール……身長が高い!緑谷出久の現在の身長172cm、クラスメイトであり彼女の八百万百がA組女子最長173cmで……180cmはありかねない、威圧的な金髪の美女がキツイ眼差しで緑谷を見下ろしながら言い放つ。
「今私が廊下を歩いてるのだけど?」
「そうですが……何か?」
「何かですって?アイーシャが歩いてるのよ、端に寄って止まる決まりを知らないの?」
取り巻きの猫の異形が垣間見えるチアガールが、そんな事も知らないのかと凄んで来た。まさかビル達との話に出てきた、エリックの彼女のチアリーダーがこの子だったとはと。
緑谷は凄まれ見下ろされながらも、言いたい事はあるので、深々頭を下げつつも軽めに嫌味を込めて言い返した。
「それは申し訳ない、邪魔しないように端に寄って歩いていましたが立ち止まる校則は存じ上げませんでした。いつ頃作られましたかな?いつからこの学校のチアリーダーやってるか知りませんが、設立からずっと留年してチアリーダーやってらっしゃるお方でしたか、留学生の身だからどうも知らなかったもので……」
「はぁ!?」
この返しには、端により立ち止まっていた生徒達からもくすくすと笑いが込み上げ始めた。対して彼女の率いるチアガール達からは、マジかこいつ、正気かと互いが互いを見合って緑谷の所業を信じられないと態度を見せた。
そしてチアリーダーのアイーシャは……その白い肌がみるみる真っ赤になり始めていた。まさかこんな返しを受けるとは思わなかったらしい、わなわな震えて緑谷を見下ろし続けたが言葉が出ない。
「もういいですか?授業時間も迫ってますし、そちらも遅れたらまずいと思うので」
これ以上ないならと、緑谷は通り抜けようとした。
「ま、待ちなさい!」
しかし、言われたままでたまるかとなったのがアイーシャだ。緑谷に手を伸ばし遮ろうとしたが、視界の端でしっかり見ていた緑谷は、身体を捻りその手を回避した。
アイーシャの手は空を切る、その体は前のめりとなり……。
「きゃあああ!?」
「あ……」
近くのゴミ箱に頭から真っ逆様に突っ込んだのだった!なんと都合のいい場所にあるんだ!緑谷も今気付いたほどだった。
「アイーシャ!?」
「リーダー!ああそんな酷い!!」
自分たちのリーダーが、まさかゴミ箱に頭から突っ込んで足をジタバタさせると言うなんとも無様を晒し、端に寄っていた学生達から一気に笑い声があがった!
「おいおいマジかザマァねぇなクイーン!」
「真っ逆様だ、写真撮ってやろうぜ!」
この、いかにもなカーストトップが痛い目に遭う様を笑う姿、さながら昔の学園モノ映画じみた事がまさか起こるし現実でこうもやり返されるのかと、緑谷はドン引きした。
「あー……授業遅れるからごめんなさい!」
その垣間見えたモラルの低さというか、居た堪れなさに、緑谷は走ってその場を去ったのであった。