【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
今朝起こったことを振り返ろう。
その1……学園の王様を気取るジョックスのエリック・バイソンから喧嘩を売られ、これを制した。
その2……その彼女であり、学園のクイーンビーであるアイーシャの横を通り、口論となり、掴み掛かられたが避けて、彼女はゴミ箱に頭からつっこんだ。
そして今、学食……。
本日の緑谷出久がセレクトしたのは、オレンジチキンなるアメリカンチャイニーズといえばな、オレンジの風味が香る甘酸っぱい唐揚げ、そしてフライドライス、所謂チャーハンなのだが、普段食べ慣れている日本の中華で頼んだ結果、凄まじい薄味なためオレンジチキンを共にして誤魔化していた。
そのオレンジチキンとフライドライスのプレートを食べている時に、三つ目の事件は起こったのであった。
「で、真っ逆様に頭から突っ込んだからその場は立ち去った」
「えぇ、それマジぃ?うわぁ見たかった半分と後が怖い半分だ……」
「お前来てから退屈しないな、イズク」
緑谷はいつも通り、ビルとマイケルと共にカフェテリアで昼食を取っていた。もうこの3人で食べるのが当たり前になりつつある中、午前中にチアリーダーのアイーシャと揉めて、ゴミ箱に突っ込んだ話をすると、ビルは苦笑し、マイケルは笑った。
緑谷は頼んだフライドライスをスプーンですくって一口食べたが、いつもの日本で食べるチャーハンとかけ離れた薄味に真顔になり、飲み込んでため息を吐いた。
「……思いの他、味が薄い」
「あーここのチャイニーズメニューはねぇ、街のチェーンのがまだマシだよ?」
「オレンジチキンはまぁいけるんだけどなぁ……」
それハズレメニューだぜとビルに言われ、それでもしばらくぶりに米にありつけたから文句なしに、オレンジチキンと纏めてすくい食べれば、確かに美味しかった。
なる程そう食べるのかと、確かアメリカンチャイニーズの屋台でも、おかずと一緒に詰められ出ミチミチにされた入れ物を思いだし、おかずありきのフライドライスかと食べ進めていると……。
「あれ?エリックじゃねあれ?」
マイケルが、入り口からズンズン入ってきたエリックを見つけた。後ろから同じような、恰幅のいい仲間らしき者も連れて来ている。
「本当だ、いつも学内なフラタニティの食堂で食べてるのに」
「ふら……なに?」
ビルから聞き慣れない単語を聞いた。フラタニティ……確か『友愛』とか『兄弟愛』を示す単語だったかと思い出す。しかし今、ビルが言った"フラタニティ"は何かしらの固有名詞を指すように緑谷には聞こえた。
「学生社交界だよ、まぁ伝統的なサークル活動団体、飲み会したりボランティアしたりとか……うちにもあってな?女子はソロリティって言って、OB.OGと繋がりができて人脈つくったりとかするんだ、そいつらしか住めない寮が学園敷地にあって……まぁ優遇されてんだ、寄付金やらも卒業生から入ってるんだと」
『フラタニティ』及び『ソロリティ』とは、伝統的な社交クラブの名称である。アメリカの文化の一つであり、ギリシャ文字2〜3文字を使ったそれぞれの社交クラブ、及びクラブハウスにて寝食を共にするサークル活動である。
体育会系、芸術、美術と様々な系統で団体が分かれて活動し、さらには派閥争いまでしている、華やかな見た目の裏側に凄まじい人間模様が隠れていたりする、アメリカ独自の文化ともいえよう。
エリックはそのサークルの寮で食事をとるから、カフェに来ることは無いので、珍しい光景らしい。
その傍には、彼女であるチアリーダーのアイーシャまで居た。やがて……アイーシャが、緑谷とマイケルとビルが座る席を目にして、エリックの袖を引いて指をさすと、エリックは怒りの形相でこちらに向かって来た。
「あー……イズクすまん、おれドリンクのお代わり取ってくる」
「僕もチョコブラウニーお代わりしてくるから……」
マイケルとビルが、ああこれはと理解するや、席を立ち上がり退散した。緑谷は……逃げる事などせず、構わず味の薄いフライドライスのオレンジチキン混ぜ込み飯を食べながら、エリックとアイーシャが来るのを待った。
「やってくれたな、オタク野郎」
テーブルの縁に手を置いて見下ろしてくるエリック、さらにその後ろで私はいかにも不機嫌だ、どうしてくれるのかしら?と言わんばかりなアイーシャに、緑谷は何も言わずにただ混ぜ飯を咀嚼した。
「何か用?これ食べてからでいい?」
「人様の彼女ゴミ箱に叩き込んどいてのセリフがそれか?あ?」
ああこいつ……緑谷は後ろでほくそ笑むアイーシャを見てスプーンを止めた。雄英にも嫌な奴は若干2名(物間、斥野)が居たが、仮に女子でヒーロー校にこんな奴がアメリカには居るのかと、緑谷は留学して初めての失望を感じた。
こいつ本気でヒーローなる気あるのか?とすら思いながら、緑谷はエリックに言い返した。
「僕は避けただけ、彼女が自分で真っ逆様にゴミ箱に入って行っただけだよ?まぁ、彼氏だから彼女に味方するのは分かるけど、話はちゃんと聞いた?」
無駄だろうなと緑谷は一応の事実を話したが、エリックは一度アイーシャに顔を向けた。
「そいつが嘘ついてるのよ!やっちゃってよエリック!!」
まぁそうなるかと、緑谷は構わず混ぜ飯を食べるスプーンを改めて動かし始めた。エリックからすれば、今朝制された相手が自分の彼女を貶めたわけだ。嘘ではあるが、その彼女からやり返してと頼まれた。
背後にはアメフト部の取り巻きまで連れて来た以上、エリックはもう後戻りできないのだ。何かのリーダーというのは、部下や取り巻きを失望をさせてはならない、威光を誇示しなければならない。
「表に出ろ、黄色猿」
もう少し悪口のバリエーション増やしなよと、日本にいる幼馴染の罵詈雑言をこいつに聴かせてやりたいなと思いながら緑谷はエリックに言い返した。
「出させてみ━━」
全て言い切る前に、テーブルと緑谷が座っていた椅子諸共、緑谷は浮遊感を感じながら遠ざかるエリックを見て、背後に衝撃を感じてガラスの割れる音と共に視界が目まぐるしく変わり、やがてロサンゼルスの冬らしからぬ温かな外に放り出された。
腹部に鈍痛、殴られたらしい、大の字になって空を見上げて悲鳴が聞こえたが、緑谷はゆっくり立ち上がって、自分が吹き飛ばされ割ったのだろうひしゃげた窓枠やらを見て、破片やらを手で払う。
奥から飛び出して来た頭部や肉体を変異させ、二回りは肥大化した筋肉達磨となり、鼻の息を荒くしている牛の化け物……さながらミノタウロスにでもなったようなエリックと目を合わせた。
「GOAAAAAAAaaaaaaーーーー!!」
ブチギレていよいよもう手がつけられない事態になったらしい、エリックが咆哮をあげる!回りは突如始まった喧嘩にやれやれとばかりに煽る生徒と、先生を呼びに行った生徒とでしっかり別れた。
「喧嘩売って来たのはそっちだよ?」
一回やられた、ならもうやり返していいなと緑谷は息を整えて、エリックに対して構えを見せた!
エリック・バイソン!!
個性……『アメリカバイソン』!!
アメリカの動物の代表とも言える、アメリカバイソンのパワーを宿した異形型個性!その身に宿る猛る牛の力は凄まじい!怒りが彼を染めた時、その力は人智を超えた力を発揮する!
バッファローじゃないのか!?となるが、昔、アメリカに渡ったヨーロッパの開拓者たちが、知っていた水牛(バッファロー)に見た目が似ていることから、野牛であるバイソンを『バッファロー』と呼んで定着したが、実際に分類するとバイソン呼びが正しかったりする!
アスファルトの地面を、さながら闘牛がターゲット目掛け加速する予兆の如く、二度、三度と靴を擦って、エリックは構える緑谷向けてその巨体を加速させ突進させた!
「肉片にしてやる!アンガーズトレイン!!」
巨体から繰り出される体当たり!単純明快でなんとも分かりやすい必殺!緑谷はそれを避ける事もできたが……。
「よいしょお!!」
肉同士がぶつかり合った、そんな低くも響き渡るような音!緑谷はエリックの角を両手で掴み、真っ向から力勝負を挑んだのである!
「馬鹿が!あんな細腕と身体で止めれるわけねぇ!!」
「身長体重差と力学考えろよ留学生!!」
誰もが見ても無謀な所業!!走るスピードも、パワーも載せてさながらダンプカーが追突するのを生身で止めるようなものだと、取り巻きのアメフト部たちが次の瞬間には緑谷が吹き飛ぶと、他の野次馬達もそう断じるしかない光景!
しかし━━。
「すっ……ごいパワー、けど死柄木程じゃないな」
「な、あ……!?」
止まった!身長180超え体重も筋力も凄まじい、現役アメフト部の高校生の!さらにバイソンの異形系個性を載せた突進が!止まったのである!!
『普通』の人間ならば、取り巻きアメフト部の言う通り、170cm代の緑谷はさらに吹き飛ばされていただろう……。
だが!この緑谷出久は『普通』ではない!
AFO因子を幼少時に打ち込まれ!死柄木との戦いの果て細胞が変化し!今の人間の枠から飛び出してしまったその肉体には……そこらの肉体強化型個性や異形系個性ですらも敵わない力を!その肉体に宿している!!
筋繊維の一本一本から!死柄木と同じ進化を遂げた『ワイルドピース』が!今の緑谷出久なのである!
「よいっしょおおおーー!」
「おぁあああ!?」
エリックの首に腕を回し、緑谷は呼吸を整え力を込めれば、レックスの足が地面から離れて持ち上がった!そのまま無造作に後ろに倒れ、エリックの背中を地面に叩きつけたのである!
「うぉおお!?ブレーンバスター!!」
「エリックが投げられたなんてアメフトの試合でもなかったぞ!」
叩きつけてから即座にバネのように跳ね上がって立ち上がった緑谷に、エリックも流石にヒーローを目指す1人!即座に身体を転がして立ち上がり、緑谷の方に向いたが……その顔は自慢の力を真っ向から返された事実に唖然としたのが見えた。
「お望み通り相手をしてやる、来いよバッフ◯ローマン」
朝お前が望んだ事、今ここで叶えてやるよと緑谷は、唖然とするエリックに対して人差し指を動かして挑発しながらそう言い放った。
エリック・バイソン
個性『アメリカバイソン』
L・H・Fのアメフト部キャプテンにして、最大派閥のトップ。所謂スクールカーストで言えば『ジョックス』無論、ヒーロー志望。
Bクラス所属、成績もヒーロー活動もトップクラス成績で、アメフト部のキャプテンと言うL・H・Fのヒエラルキーにおいてトップではあるのだが、かつてのレックスと闘い負けたことにより『暫定トップ』と言う不名誉な呼び名がつけられている。
所謂昔のハイスクールに居る典型的な『ジョックス』であり、選民的かつ差別的な感情が見受けられる。
個性は『アメリカバイソン』
変身型のアメリカバイソンの異形で、平常時は人間体かつツノが生えているだけだが、怒りが込み上げると姿が変わり、アメリカバイソンの半獣となる。そのパワーは単純明快ながら凄まじい。
ただ、レックスの『リッチ』の様に上昇に際限がないわけでは無く、ましてやこの世界の緑谷のような『遺伝子改造された化け物』でもない為、異形系個性の枠からは飛び出せない。
必殺技は全力でタックルを叩き込む『アンガーズトレイン』