【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
「舐めんな黄色猿がぁ!!そのまま日本までぶっ飛ばしてやるよぉ!!」
差別感情ダダ漏れの罵倒を込めて、再びエリックが突進してくる!芸がないともう一度構える緑谷だったが……。
「バカがかかりやがったな!」
「えっ!?」
エリックが視界から消えた!アメフト仕込みのステップワークで緑谷の視界から消え去り、横に回り込み胴に組みついてきたのだ!さっきの馬鹿力任せが嘘の様な、華麗なフェイントからのタックルには面を食らった緑谷だが!
「くぅうう!?」
それを人外の力で堪えて倒れないようにした瞬間、その抵抗を察したエリックが背後に即座に回り込み!
「脳みそぶちまけろ!バッキング・ブル・スープレックス!」
緑谷の足を一切の抵抗を許さないままに地面から引っこ抜いて、そのままブリッジと共にバックドロップでコンクリートの地面に叩きつけたのだった!
「かはっ……!」
景色の明滅を目の当たりにする緑谷、こればかりは油断であった!
かつての個性が無き時代において、そして今のこの超人社会においてもアメリカの『国技』として!今なお人気のアメリカンフットボールというのは世界最高峰のフィジカルエリートが集まるメジャースポーツ!
選ばれた人間のみが、その鎧とヘルメットを被りプレーを許されるスポーツにおいて、エリックは1校のキャプテンまで上り詰めたエリートでもある!
力だけではない!ましてや、ヒーローとしてその力を振るう彼はパワーだけでなく、相手を投げ倒し拘束する技術は一級品なのだ!
スープレックスで倒れた緑谷に、さらにブリッジから跳ね上がるや、緑谷を宙に投げ飛ばすエリック!そのまま落下してきた緑谷の腹部目掛け、アメフトのフィールドゴールを狙うかの様に右足を振り抜いた!
「120ヤードキック!!」
「がっはぁあ!?」
腹部に叩き込まれ振り抜かれた足と、さらに宙を舞う緑谷。錐揉み回転しながらそのまま地面に落下して叩きつけられた!さながらフィールドの端から端までボールを蹴りとどかせてやるという威力の蹴りに、緑谷は大の字に倒れ空を見上げた。
「あぁ……ちょっと油断した……っし!」
投げられ、蹴り飛ばされた、しかしまだダメージはさほどではないと、緑谷はハンドスプリングで身体を跳ね起こして立ち上がる!
「ちょっとエリック!?手を抜いてるの!さっさとその日本猿やっつけてよ!!」
「黙ってろお前は!全力で叩きつけて蹴り脱いだんだよこっちはぁ……!」
普通の相手なら今のでもうノックアウトが当たり前だったのだろう。しかし緑谷が立ち上がって、見ていたアイーシャがエリックに手を抜くなと声を荒げ、エリックも苛立ちをぶつけて緑谷を睨みつけた。
「仲悪いの?彼女でしょ、嫌なら別れたら?」
「テメェにどうこう言われる筋合いはねぇんだよ!」
そこまで言い争うなら別れたらと、見た目もう破局のカウントダウンしてそうなエリックに緑谷が言えば、エリックは再び突進してきた!
再び真っ向正面!掴みかかるエリックに対し、緑谷が放ったのは……右の回し蹴り!
「バカが!体格差考えろ黄色猿!!スクラップになりやがれぇええ!!」
先程吹き飛ばしてやったのを忘れたか、身長体重が全く違う!ダンプカーに蹴りを入れて止めれるものかと巨体が緑谷に迫る!
そして!緑谷の右脛がエリックの叩きつけられると……凄まじい音がL・H・Fに響き渡った!
「エリックが弾かれた!」
「なんつー音だ!」
榴弾でも弾けたかと言わんばかりの音と共に、レックスのタックルは弾かれた。しかし吹き飛ばず緑谷と手足が届く間合いで、互いに弾かれたかの様に体勢が崩れている!
「あ……あ……」
しかし……その1秒満たぬ時間の中で、異変は起こっていた!
衝突時に眼前へ交差させ、蹴りを防ぎながらも追突するためのエリックの両腕が……肘から先で両方とも折れて力無くぶらついていたのだ!
「ぁああぁあああーー!腕がぁ!!俺の腕がぁああああーーー!?」
エリックの両腕が前腕から骨折したのだった!たった一発の蹴りで!膝から崩れ落ち痛みと痺れに叫ぶエリック!まさかの決着に、野次馬達は歓声よりも動揺が広まった!
単純なパワーならば、エリックの方が強かっただろう。しかしそれは『個性』の話……。
緑谷出久の肉体は、AFO因子により作り替えられた『天然成長、進化した脳無』であり、この超人社会の、そこらの異形系や強化系個性ですら辿り着けない力を有している。
「勝負ありだエリック、それで手打ちにする」
酷いと見えるだろうか?そこまでするのか緑谷出久となるだろうか?しかし、緑谷にとっては"この程度で済ませた"扱いだった!
謂れもない罪で詰められ、暴力を振られたのだ、ここが日本の路上ならば……エリックは終生生命維持装置に繋げられるくらいに嬲られていた!留学生の立場と……雄英で過ごした2年弱は、緑谷の精神を少しは落ち着かせていたとも言える!
「単純骨折だからすぐ治るから保険医に診て貰って、じゃあこれで……」
粉砕や複雑ではない、単純骨折なら後遺症無しですぐ治ると膝をつくエリックに告げて、緑谷はその横を通り過ぎた。
「ふぅうう、ふぅうう!!ふざぁけんなぁああ!」
だがそれが!余計にエリックの神経を逆撫でにした!立ち去ろうとする緑谷へ、振り返って立ち上がり身体を叩きつける為に突進!!
無論、気付かぬ緑谷ではない!!
振り返った緑谷、その眼差しにエリックは怒りが一気に氷点下まで覚めて背筋を凍らせた!
その眼差しの、なんと冷たい事か……人はそこまで非情な顔を作れるのかと、止まらぬ足は緑谷の眼前まで近づき……。
ボゴォオオン!!
独特な音であった。さながら、長年放置されて草の根が張り、土が累積した排水管の草を引き抜いて空気が入り込んだ様な、そんな音。
「うわぁああこっち来たぁ!」
「避けろ避けろ!?ぎゃあああ!!」
エリックの身体は緑谷の横を通り過ぎ、操り主が亡くなった様に走り続けたが、やがて支えをなくして野次馬達が避けて出来た穴で躓いて倒れた。
その喪失した頭部から噴水の様に出血し、血溜まりを作り上げながら痙攣している。
そして……喪失した頭部はもちろん、緑谷の掲げた右手にあった。
驚愕と恐怖に染まるエリックの生首と、連なる様にぶらん、ぶらんと揺れる脊髄……!
「忠告はしたぞ、エリック……全くもう……」
緑谷はそのエリックの生首脊髄を持ちながら、彼女であり元凶のアイーシャを視界に収め、即座に早足で近づく!
「ひぃい!?」
彼氏の脊髄を持ちながら迫る男という、殺人鬼モノのホラーじみた目の前の現実にアイーシャは、逃げる事すら出来ずに尻餅をついた。
見下ろされて、まるで次はお前だと、ヒーローから程遠い緑谷のその眼差しにアイーシャは理解する。
喧嘩を売る相手を間違えた、人生の選択を間違えたと。
殺される!彼氏みたいに!!その恐怖から遂にアイーシャは、スカートと太ももの下を湿らせた。
見上げるアイーシャの眼差しは既に恐怖に染まり、抗う意思も無くただ屠殺を待つ家畜のように、息を浅く過呼吸気味になりながら断罪の時を待った。
しかし緑谷は……エリックの生首脊髄をアイーシャに放り投げ、そして言った。
「彼氏だろ、お前が刺し直してやれ、多分生き返るから……生き返らなかったら呼びに来い」
緑谷はそう言って、アイーシャの横を通り過ぎた。そして、近くに取り付けられた消火栓の横で止まると。
「らぁあ!!」
消火栓を思い切り蹴り飛ばした。
噴き上がり水柱を作り上げる消火栓に、野次馬達も何故!?と、緑谷が怒り冷めやらぬままに当たり散らしたかの様にしか見えなかった。
だが事実は違う、アイーシャだけは……身体に投げつけられた彼氏の脊髄を見ながらも、その消火栓から吹き出す水に頭を冷やされ理解した。
救われてしまったのだ、最後に!!
アイーシャが失禁したのを知られない為に、これ以上尊厳を壊さないようにと、最後の最後に慈悲をかけられたのだ!本来なら恨まれ、憎まれて……晒されても仕方ない事をした自分に!
アイーシャは、只々……壊れた消火栓が作り出す雨の中で、彼氏の生首脊髄を眺め続け……。
「お、おいアイーシャ?……俺どうなってる?」
「ひゅっ」
死んでければおかしいはずの、彼氏が普通に喋って意識を彼方に手放し、大の字で倒れるのであった。