【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
ザ・スカイクロウラー!
本名"灰廻航一"
ヒーロービルボードチャートUS8位のヒーローにして、日本人!数年前の日本に突如現れた『自警団(ヴィジランテ)』であり、様々な事件の裏で彼が現れ、密かに解決を手助けしていた非合法(イリーガル)ヒーロー!
その正体はアメリカのトップヒーローの1人キャプテン・セレブリティのサイドキックの1人であり、彼のスキャンダルでアメリカから日本へ出て行かざるを得なくなった際に同行した実力派ヒーローであるが、その真相は実は違うらしい……。
個性は『飛行』!!の筈だが……。
明らかに飛行の個性から逸脱した技を緑谷は目視したので『何かの力で空を飛んでいるだけで、本来の個性は隠している』と見抜いていた!
そんな彼と緑谷、そしてレックスにジョン巡査は、パトロールも終えて警察署に帰還。この日はその場で解散、帰宅となっていたため緑谷はザ・スカイクロウラー(以下クロウラー)と、話す機会ができた。
「えっ、キャプテン・セレブリティっていま訴訟起こされてるんですか?」
「スキャンダルでね、だから彼が動けない間に頼まれてた事を引き継いでロサンゼルスに来たんだ」
サンタモニカのチェーン店のカフェにて、緑谷とクロウラーは対面し、語り合った。彼が元々サイドキックとして雇われていた、アメリカトッププロヒーロー『キャプテン・セレブリティ』が、今現在訴訟を起こされて身動きが取れないらしく、その彼の仕事を引き継ぎ本拠地ニューヨークからロスまでやって来たらしい。
「緑谷くんは留学でアメリカに?」
「はい……強くなるためにアメリカへ」
「えっ、それ以上?死柄木とAFO倒したキミが?」
「いや、あれはそもそも日本のヒーロー全員総がかりで勝っただけで……僕はたまたまラストアタックに回っただけですから……」
「そっか……僕は終わった後の支援で日本へ帰って来てたけどそんな流れだったのか……」
「あの時居らしてたんですか?」
「そうそう、多分すれ違ったかもしれないね」
大戦の後の復興支援にも、彼は来ていたらしい。どこかですれ違っていたかもと、他愛もない話が続いた。
「で、そのクロウラーがロサンゼルスにまで来た理由というのが、あの麻薬売買なんですか?」
そしてやはり気になってしまう、ニューヨークのヒーローがロサンゼルスまで出向し、囮捜査をしているのだ、何を追っているのか緑谷が尋ねた。
「あーえっと……」
「あ、すいません、流石に仕事の守秘義務がありますよね」
まぁ言える話じゃないなと、緑谷は踏み込みすぎたと謝った。だがしかし、クロウラーは顔を左右に振って話し始めた。
「いや、キミたち学生ヒーローも知っておくべきだと思う、何しろ今……アメリカ全土の都市でパンクス絡みの麻薬事件が起きてる……ニューヨークではヒーロースクールで使用者が出てね……流れを辿ったらこのロサンゼルスからって話が出て来たんだ」
ジョン巡査も話をしていた"パンクス"なるギャング組織、それが麻薬をばら撒いている。しかもアメリカ全土、主要都市で同時多発的にとクロウラーから語られた。
さらに、ヒーロースクールからその麻薬を使用した者まで出て来たと聞いた緑谷は目を見開いた。
「学生が麻薬を……」
「珍しい話じゃあない、日本でも手を出してしまう子も居るが……アメリカではさらに顕著だ、今回の件も、ロサンゼルスに本拠地があると見て僕は来た」
アメリカンサイズなカップから、頼んだコーヒーをストローで飲みつつクロウラーは語る。
「厄介なのは……日本のヴィラン組織と違って繋がりが希薄なところだ、日本とかなら上下関係やら団体の繋がりがあるんだけど、アメリカは厄介な事に同じ名前、チームなのに互いに敵対していたり上下も繋がりも曖昧で、どこの誰が首謀者か分からないんだ」
クロウラーの話に緑谷は興味が湧いた、日本の組織犯罪とはまた違うらしい、全く知らない緑谷はクロウラーのその話に深く切り込む。
「名前が同じで、チーム内で敵対?内紛まであって統率がないようにしか聞こえないですけど……」
「だよね、けどこれがアメリカギャングの在り方なんだ、せっかくだし教えてあげるよ、役に立つ知識だし……何よりやがて必要になるかもしれない」
そうして、ザ・スカイクロウラーによる、アメリカギャング『パンクス』の授業は始まった。
『パンクス』
アメリカ全土、それどころか世界中にもそのチームを名乗る者が居る、現在のアメリカ最大のギャングであり『ヴィラン組織』とも言えよう。
その始まりは古く、黎明期よりさらに前の1969年代のロサンゼルスから始まったギャング組織まで遡る。
『青』を基調としたヒップホップ系の衣装に身を包んだギャング組織が始まりで、その活動が激化して対抗するように『赤』を基調とした同じギャング組織の同盟が出来上がって、抗争を繰り広げていた……。
長らくの抗争は、旗揚げした両陣営の主要メンバー達の手から組織が離れてなお続いたが、超常が世界で現れ、プロヒーロー制度発足によるヒーローの活躍により、ギャング達も討伐、検挙により縮小化していった。
やがて、敵対していた両組織はヒーローたちに対抗するように同盟を結んだ。『赤』と『青』は混ざり合い『紫』の組織『パンクス』として再編され、今はヒーローたちに対抗し、麻薬密売や違法クラブ経営等を行なっている。
この時代においても『元パンクス』を公言したり、パンクスの構成員だった、パンクス主催のライブに出ていたラッパーやDJも存在している。
「さっきも言ったけど、パンクスは一貫した組織じゃなくてね、セットと呼ばれる集団が集まった組織なんだ」
「セット?」
「派閥って言えばいいかな、大小様々なセットが集まって、その全体がパンクスと呼ばれている……だから、統率する絶対的なリーダーが居ないんだ、このパンクスにはね?セットそれぞれにリーダーが居て、縄張りを持ち、その規模も大小様々だ」
緑谷からすれば、少々イメージし難い組織図だった。日本ヤクザの一次団体や二次団体の組織とも違う。ジョジョ五部のパッショーネとも違う、リーダーも幹部も居ない、しかし同じ旗印を掲げてチーム名を名乗るギャングは、初めて聞く形だった。
「だからこそ厄介なんだ、どのセットが首謀者か、さらにどこと繋がっているかも分からない……」
「全てのパンクスを潰してしまえばいいのでは?」
緑谷はそんなに厄介なら、ローラー作戦でもすれば良くないですかとクロウラーに言った。しかし、クロウラーは笑った。そう簡単にできるかという、浅はかな緑谷の言葉への苦笑も混ざっていた。
「それができたら苦労しないさ、アメリカは訴訟大国で人種差別も根深い、誤認逮捕をすれば一気にコミュニティが徒党を組みバッシングに湧き上がる……然るべき正しい捜査と証拠があって、やっとヒーローも警察も動けるんだ」
日本と違い、アメリカは司法において取り返しがつかないのだと語る。日本にはあまり見ない『人種問題』は『異形差別』より根深く、そのコミュニティの連携も強く、そう簡単に解決に踏み切れないのだと、アメリカの現状を語られた。
「さて、僕は引き続き捜査に戻るよ、話せてよかった……もしかしたら、また出会うかもしれないからその時にはよろしく」
互いにコーヒーも飲み終わり、頃合いだなとクロウラーは立ち上がる。貴重な、同じ日本人でアメリカで活躍するプロヒーローから色々聞けた緑谷は、感謝しながらその背中を一礼して見送った。
「出会うかもしれないって……どういうことだろう?」
この時"また出会うかも"と語ったクロウラーに、何故かと首を傾げた緑谷であったが……その話は本当に実現する事になるなど、思いもよらなかったのであった。