【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
日本……雄英高校。
緑谷出久がアメリカ留学に行ってしばらく、2年A組は変わらず、授業に訓練、そしてインターンと忙しない日々を送っていた。
「まだ一ヵ月も経ってないけど、本当に緑谷が居ないんだよなぁ……空席がずっとあるのはなんだか落ちつかねぇよ」
「ああ、景色から色が抜け落ちたようだ」
緑谷の隣である瀬呂は、空席になった緑谷の席を眺めながら呟く。いつもそこに緑谷が居た、たまにくだらない話をしていたクラスメイトが居ない、整頓された机だけがあり落ち着かないと語る瀬呂に、常闇もセンチな台詞が出てきた。
「今思えば……余程負けたの悔しかったんだろうな、しかも相手が叔父だと知って……他人事と思えねぇよ」
近い席の轟焦凍も、緑谷が突如アメリカ留学に突貫した程には、先の敗北を思い詰めていたのだろうと同情した。
荼毘という、兄がヴィランとなった自分に対して、叔父がまさかヴィランだったという、親族、家族の問題は自らと似た事になっているともなれば、轟も心配になろう。
「俺らも頑張らねぇとなぁ……いよいよ三年進級、プロヒーロー試験もあっという間にくるだろうしよ」
砂藤も話を聞いて、先に進もうとする緑谷に発破をかけられたと、迫る雄英最後となる三年生とプロ試験と言う現実に向き合わねばと気合が入った。
「そう……プロヒーロー試験なんよなぁ……なんか信じられん、ここまで私来れたんだな」
そう、いよいよ『プロヒーロー試験』があるのだ。雄英高校三年生ともなれば……これに受からなければ、何故雄英高校ヒーロー科に通ってきたか、学んできたか分からなくなる。
全てがそこで、三年生三学期の一月、あと一年で決まるのだ。麗日はふんすと鼻息を立てて胸を張り、折れはしないと気を引き締めた。
と、ここである疑問を口にする者が居た。
「しっかりやってきてはいるけどよ……プロヒーロー試験の合格率ってそう言えばどれくらいなんだろうな?」
切島である、やはり気になるのは『合格率』だ。それを言ってしまったらと上鳴が青ざめた。
「仮免試験の時は1割だったから……またさらに狭き門とかじゃねぇよなぁ?あぁあ怖ぇよ!大丈夫か本当に!?」
仮免試験は1540人の中から100人まで篩にかけらた、これがプロならさらに狭くなるのか!?勘弁してほしいと身震いすら起こす上鳴。そう簡単になれるものではないと、皆理解はしているが、それでもここまで頑張って来たのだからと皆思いは持っているのだ。
「プロ試験の合格率は9割だ、雄英高校からの合格者は9割9分、よほどの非適性判定かやらかしがなければ落ちる事は無い」
だが、そんな空気を看破したのは、意外な人物であった。
「相澤先生!?」
「予鈴鳴るぞ、話を聞いたが……もう一年後になるから丁度いい、授業前にプロヒーロー試験の話をお前らにしておく事にする、全員席に着け」
担任の相澤消太が、らしからぬ楽観的な数値を口にしながら、A組に席へつくように言い放った。
「さて、プロヒーロー試験だが……これは仮免試験とはまた違う方向性で行われる、仮免試験が"プロヒーローたりえる実力者か?"と篩にかける試験ならば、プロヒーロー試験は"プロヒーロー資格を渡せるレベルか否か?"を測る試験だ」
授業前の時間を使い、今居る2年A組の生徒に、プロヒーロー試験について相澤は語り始めた。まず、仮免試験とプロヒーロー試験では目的や方向性が違うと語った。
「仮免試験がプロヒーローとしてやっていける実力があるか?を測り、プロヒーロー試験はここまで培った実力があるかを確かめる、三年間の学習、インターンの経験で培った実技、ヒーローとしての精神性は有しているかを総合的に見て合否を決める、つまりだ……結論から言えば"余程のやらかし"がなければ、仮免持ちの大半は合格できるようになっている」
「そ、そうなのか……」
「ちょっと安心できたかも……」
心配していた上鳴、そして学力が少し自信がない芦戸が胸を撫で下ろした……。
「しかし先生、雄英からの合格者が9割9分というのは流石に鵜呑みにできない数字だと思うのですが……」
と、ここで飯田が手を挙げて流石に信じられないと尋ねた。何しろ……もう2年近く、自分達の担任をして来た相澤という先生は、時に生徒を焚き付けるため『合理的嘘』を幾度と吐いて来たのだから。
実はこの数値にも絶対裏があるだろう、A組たちは皆相澤に疑惑の視線を向け……相澤は歯を見せ笑った!
「いいや事実だ、実際に調べたら出てくる、そして雄英高校からの合格率もだ、ここ数年一身上の都合や進路変更で断念した者を含まなければ……不合格者は0だ」
こればかりは嘘は言わないと、相澤は言い切った。雄英高校ヒーロー科は必ず、余程の理由や断念した生徒を含めなければ合格していると彼は言ってのけた。
よかった、大丈夫だ!安堵がA組生徒に広がりかけた瞬間━━。
「だがつまり言えば、ここで事情も無しに不合格なんてなれば……雄英で数少ない不合格者、つまりは一分の生徒となってしまうわけだな」
戦慄が、A組生徒を襲った。あの笑顔は決して、大丈夫だとか心配するなという安心を促す笑みではない!
お前たちは、ここまで来れた雄英高校ヒーロー科生徒だ。で、あるならばここでまさか不合格になるなんて事ないよな?期待しているぞという眼差しだった。
時として……真実は、嘘より残酷なのである。
「というわけで、9割9分に入るよう、1分とならぬように万全の準備でプロヒーロー試験に望んでくれ」
そう、合格率は決して100%ではない……1%は落ちるのだ。最後の最後まで気を抜くなという、相澤消太らしい激励を終えて予鈴が鳴った。