【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
レックスと緑谷を乗せて、リムジンがロングビーチへ向かう。ギャング達ひしめくコンプトンから南東の方角に向かう……ロサンゼルス最大の港湾都市がロングビーチだ。
スキッドロウのように打ち捨てられた場所でもなければ、スラムの代名詞でありギャングの巣窟コンプトンとも違う。治安も良さそうな整った区域で、ここにギャングが?ともなる程には、平和な雰囲気を醸し出していた。
「雰囲気からして違うって感じがするけど……こんな場所にギャングが居るの?」
車窓から見回し、平和な景色に緑谷は、果たしてこんな場所に居るのかと首を傾げたが、レックスは指を立ててチッチッチと得意げに語る。
「自分の目の高さしか見てないからそんな言葉が出る、キミは個性で空を飛んで下を見下ろせるのに、上を見上げる事をしないようだな?」
「上……?」
含みのある言い方だが、レックスは緑谷にこういうことさ、と指を鳴らしモニターが動き出せば、上空写真のロングビーチと、矢印が様々な場所を指し示すやその矢印からさらに撮影された建物の写真が提示された。
高層ビル……いや、これはホテルか?小綺麗なビルの写真を見た緑谷に、レックスはこれが何かを答えた。
「この辺りは高級コンドニウムがいくつもあってね、その一つから写真や動画を載せたギャングが居るのさ、今向かうギャングは最近売れて金が入って思い切ったらしいね」
「なる程……"成功したギャングスタラッパー"という事か……」
やがて、一つのビルの前にリムジンが停まる、アンドリューがドアを開けようと動く前にレックスが指を立てて止め、自らドアを開いて外に出れば、緑谷もそれに続いた。
見上げたその建物は、歴史を感じさせる高級感を醸し出している。が……よく見れば、入り口のゲートから既に似つかわしくない、異様な、風景とはかけ離れたラッパーギャングらしき出立ちの者がこちらを既に見ていた。
「うーん、既にやる気みたいだね?フランソワ、ここのギャングのリーダーの名前をお願いしていいかい?」
『了解、イズクも聞こえる?今、そのシュラトン・コンドミニアムの最上階を借りている、疑惑を抱えたギャングの名前は"808 POUNDS(エイトオーエイトパウンズ)、本名はトレイヴォン・ショックリーというわ』
「808 POUNDS?聞いた事ないな」
そもそも、海外アーティストどころか、日本のアーティストですらニチアサ特撮や特撮ヒーローソングに関わったアーティストくらいしか知らないし興味が無い緑谷出久に、レックスは呆れて肩をすくめた。
「見聞を広めたまえよイズク、偏った知識が視野を狭めるのだからね?」
「じゃあレックスは知ってるの?」
「さっきの移動中に彼の曲を聴いていた、そこから分かった事は……彼は決して分かり合えぬ"ヴィラン"さ」
その言葉に緑谷は、目を見開き驚いた。敵を知り、己を知れば何とやらとも聞くが、彼はそこまでやっていたのかと。
エリートを自称するのも、エゴイズムを感じる自信も何気ない合間すら無駄にしない抜け目の無さに感嘆すら覚えた。
そんなバディが言うのだ……今から対するヴィランは"分かり合えぬ"と、話し合いの余地無しという事かと、気を引き締めた緑谷の顔に緊張が浮かぶ。
「というわけで油断はせず、肩の力を抜いて━━」
そうして2人、いよいよ行くぞとなろうとしたその時、インカムに通信が入り、2人は耳にはめたインカムのスイッチを押して通信を繋げた。
『こちら捜査本部、イズク及びビリオンキング、応答せよ』
「こちらイズク、捜査本部どうぞ」
「こちらビリオンキング、どうぞ」
『よろしい、ビリオンキングの情報提供により、プロヒーロー達がそれぞれ疑いのあるギャング達の下へ向かっている』
レックスが送った情報に、プロも動いたらしい。ならここからは、合流しての突入のため待機かと緑谷は傾聴した、しかし……。
『キミ達もその一つに辿り着いたようだが……キミ達学生はある程度距離を取り、安全を確保し待機していたまえ、ここからはプロが踏み込む』
「えっ」
通信からの命令に、緑谷の声が漏れた。ここまで来て、レックスが突き詰めたのにまるでこれでは手柄の横取りではないかと、緑谷の漏れた声を聞いたらしい本部から次いで通信が入る。
『キミ達は仮免許の学生だ、ここで万が一にも命を落とすなど決して許されない……後はプロに任せるんだ』
ぐうの音も出ないほどの、正論だった。緑谷も、レックスも仮免ヒーローの学生だ。この捜査も動員されたとはいえ、領分を超えた活動を行って学生を殉職させるなんて決してあってはならないのが前提として大人たちにはある。
もしこれがかっちゃんだったら、めちゃくちゃ苛立って吐き散らしてただろうなぁと、日本に居る幼馴染を考えながら緑谷は隣のレックスを見上げれば、彼も少し不満げな不機嫌面を浮かべていた。
「了解、安全確保して待機いたします」
が、レックスも正論を押し除けて活躍を得るなんて事は考えなかった。現行犯のヴィランならプロ相手でもと対抗心が生まれるが、アメリカ全土の合同捜査の一端であるならば、ここで変に動いてL・H・Fに責任を問われたら?とも考えれた。
「了解しました」
レックスに続いて緑谷も本部に通信を返せば、通信は終わった。そして、レックスが緑谷を見下ろし、緑谷もレックスを見上げて互いにしばらく見つめ合い、お互い同時に肩を竦めるジェスチャーをしたのだった。
「では、我々はプロの活躍を安全地帯から鑑賞する事にしよう、何か飲みながらね?」
「そうしよう……コーラある?」
「メキシコ産の世界一美味しいガラス瓶のコ◯・コーラがあるさ」
緑谷、レックスのバディはお利口に、プロの活躍をコーラ片手に警戒しながら鑑賞する事にしたのだった。