【原作完結】僕の脊髄ぶっこ抜きアカデミア【オリジナルストーリー開始】 作:ぶっこ抜きデク
一週間後……
「出久……その……大丈夫?」
「大丈夫だよ母さん……うん、僕は大丈夫」
緑谷家の夕食、焼き魚の骨を弄る息子に出久の母、緑谷引子は心配しながら尋ねた。いつもなら骨も丸ごと食べている焼き魚を、骨だけ綺麗にして遊んでいるのは何かあった時で、母である彼女は理由を知っている。
「就職先さ、探すよ母さん……魚の缶詰工場とか、解体系なら個性で取ってくれるかもだし」
「出久、ヒーローを諦める必要無いのよ、なんだったらお母さん編入とか、中途枠とか探したりするし……」
「うん、ありがとう……ご馳走様」
筆記はともかく、実技は散々だったと息子から聞いていた彼女は、もう諦めている息子を宥めた。諦めなくてもいい、ヒーローになる為なら協力を惜しまないと。
自分の個性を色濃く受け継いだせいで、息子は様々な衝突があった事を彼女は知っていた。喧嘩どころでは無い騒ぎになり、頭を下げに行った事もあったし、何なら呼び出しをくらったのは数知れない。それでも、彼女は息子の優しさを、夢を理解して支えて来たと自負している。
皿を自ら洗い、片付けて、部屋に戻ろうと階段に向かう背中を見つめる引子、その最中に家のチャイムが鳴った。
「あら、パパかしら……」
父親が帰って来たのかと、玄関に向かう母の姿を見送り、出久は部屋の階段を昇ろうとして……。
「出久!いずくいずくいずく!!来たわよ通知が!!」
死刑宣告を報せる封筒が、母の手に握られていた。
ーーー
『私が投影された‼︎』
「凄いな雄英の技術力……」
封を破った瞬間、宙に投影された映像を見てそう感想を漏らす出久、にんまりといつもの笑みを見せるオールマイトの映像に、少しだけ笑みが溢れた。
『さて、早速だが緑谷少年、巻きで報告させて貰うぞ?筆記試験見事だった、普通科ならこれだけでも合格だよ、勉強を普段から頑張ってるのが分かる……が、実技0点は流石にな……不合格だ』
そして告げられたのはあっさりだ、しかし分かってはいた。悔いは無い、悔いは無いと言い聞かせたが……。
「はは、やっぱり悔しいなぁ……」
パジャマのズボンに血が滲む、それくらい指に力が入っていた。
『筆記だけは良かった、実技だけはダメだった……それだけならね?という訳で、こちらのVTRを見てくれたまえ』
そうして映像の中のテレビが点けられた、そこには……。
「あーー」
最後の終了間際、自分が助けた女の子と心配してくれた眼鏡の男の子が『プレゼント・マイク』と話している映像が映った。
『なに、彼に敵ポイントを譲渡したい?』
『は、はい……あの、私を助けてくれたのもなんですけど、彼0ポイントで落ちたって、まだ時間があったのに私を助けてくれて……助けなかったらポイントが手に入ったかもしれないんです……だから……』
『彼は試験でありながら、皆が逃げるしか無い中で彼女を助けた……試験を投げ捨ててまで……その献身こそヒーローの姿だと思った!彼みたいな人がヒーローになるべきだ、だから僕も、彼にポイントの半分を渡したいんです!』
2人の言葉に、出久は顔を覆った。違うんだ、それしかできなかったんだ、無力で結局それくらいしかやれなかったんだと、出久は涙腺が熱を持ち始めたのに気付く。
『先の入試、見ていたのは敵Pのみにあらず!人救けした人間を排斥しちまうヒーロー科などあってたまるかって話だよ!!きれい事?上等さ!!命を賭して綺麗事するのがお仕事だ!!』
そして、画面の向こうの憧れは手を伸ばして言った。
『救助活動P!!我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力!!緑谷出久、60P!!合格だってさ、来いよ緑谷少年……ここが……キミのヒーローアカデミアだ!!』
「はい……はい……!!」
椅子から崩れ落ち、床で蹲り自らを抱きしめて、絞り出す声で憧れに応える出久……こうして、緑谷出久のヒーローへの道は開かれたのであった。