※この作品はR-18です。

僕の個性はデスアクメ!   作:ボブボブリー

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ヒーロー名考案 What's his name?

 目が覚めると、のそのそとベッドから這い出だした。5月だというのに妙に肌寒く感じ、カーテンを少し開け、外を見ると雨が降っていた。

 

「…そろそろ大丈夫かな」

 

 腕や足を軽く揉みほぐしてから体を伸ばし、柔軟体操を始める。

 雄英体育祭から数日経ち、安静にしていたお陰で眞司の足の痛みもだいぶ引いてきた。

 柔軟体操をしながら眞司は体育祭終了後を思い出していた。

 眞司は切島と鉄哲に無理を言って手伝ってもらい母を探しに会場中を回ったが何処にも見当たらず、最後にリカバリーガールに怒られて、虚しさだけが残った。

 

「ほんとうに母さんは居たのかな…」

 

 眞司の胸中に疑念が生じる。

 母はあの時あの場所に居たのか、都合の良い思い込みじゃ無かったのか。考えれば考える程にぐるぐると疑問が渦巻いていく。

 そんな疑念を止めるかのようににスマホのアラームが鳴った。

 

「朝ご飯の準備しないと」

 

 台所に向かい朝食の準備をする。

 メニューはトースト2枚、目玉焼きとベーコンに水だった。

 眞司は少し前から自炊を始めていた。その方が自分の栄養も管理できると思ったからと、最近学食の影響で舌が肥えてきた為に、今まで食べてきたパック飯に手が伸びなくなってきたからだ。

 皿の上に乗せられた料理はどう見ても失敗作で、火を通し過ぎたせいで焦げが目立っていた。

味もその見た目に違わず、決して美味とは言えなかった。それでも眞司は残す事はせずに無理矢理かき込み、水で流し込んだが口の中には焦げの苦みと匂いがいつまでも残っていた。

 食事を終えて食洗器に食器を入れて学校に行く準備を済ませて家を出た。

 

 教室に入るとクラスメイトは皆、一般人から声をかけられたという話題で盛り上がっていた。

 

「超声かけられたよ来る途中!!」

「私もジロジロ見られて何か恥ずかしかった!」

 

 眞司は見るも何も透明だから関係ないのでは?と思ったが口には出さなかった。

 

「あ!阿久津くん、今私の事、透明だから関係ないって思ったでしょ!」

「えっ!いや、それは…」

「まあまあ、それよりもさ阿久津は登校の時声かけられたか?」

 

 言葉に詰まる眞司に切島が助け船を出してくれた。

 

「かけられたけど上手に答えられなかったかな…」

「いいよな〜俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ」

「ドンマイ」

 

 クラス中の誰もが会話に夢中になっているうちに予鈴が鳴り響く中、会話が盛り上がっていたが、相澤が教室に入った途端、会話をやめて何事も無かったかの様に速やかに自分の席に着いた。

 

「おはよう」

「相澤先生包帯取れたのね良かったわ」

 

 蛙吹が思った事を声に出した。

 

「婆さんの処置が大ゲサなんだよ」

 

 相澤はそう言いつつも疼くのか傷跡を指で掻いていた。

 

「んなもんより今日の“ヒーロー情報学“ちょっと特別だぞ」

 

 ヒーロー関連の法律そして入学してから度重なる抜き打ちの小テスト等、普通科の生徒に比べて勉強する事も訓練する事も多いのだ。

 誰かが唾を飲む音が聞こえる。

 

「『コードネーム』…ヒーロー名の考案だ」

「胸膨らむやつきたああああ!!!」

 

 ほぼ全員が立ち上がり叫んだ。が、相澤の髪が逆立ち、目が赤く光るのを見て一瞬で教室は静まり返った。

 

「というのも先日話した『プロからのドラフト指名』に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み即戦力として判断される2、3年から……つまり今回来た”指名”は将来性に対する”興味”に近い。卒業までにその興味が削がれたら一方的にキャンセルなんてことはよくある」

 

 峰田は机を叩き一人呟いた。

 

「大人は勝手だ!」

「頂いた指名がそんまま自身へのハードルになるんですね!」 

「そ、でその指名の集中結果がこうだ」

 

 黒板にA組指名件数が映し出された。

 轟、3811票。爆轟、3751票。常闇、385票。飯田、299票。上鳴、262票。緑谷、123票。八百万、109票。切島、41票。麗日、20票。瀬呂、14票。阿久津、7票。

 

「例年はもっとバラけるんだがこの二人に注目が偏った。これらを踏まえ…指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう。おまえらは一足先に体験してしまったがプロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってこった」

「それでヒーロー名か!」

「俄然楽しみになってきたァ!」

「まァ仮ではあるが適当なもんは…」

「付けたら地獄を見ちゃうよ!!」

 

 相澤の言葉を遮るようにミッドナイトが入って来た。

 

「この時の名が!世に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!!」

「ミッドナイト!!」

 

「まァそういうことだ、その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。将来、自分がどうなるのか、名を付けることでイメージが固まりそこに近づいていく。」

 

 相澤はそう語りながら教壇の中から寝袋を取り出し寝る準備をし始める。

 

「それが『名は体を表す』ってことだ。”オールマイト”とかな」

 

 それからヒーロー名を決めている者は手元のボードにいそいそと書き、決まっていない者は頭を悩ませていた。

 眞司はヒーロー名を決めてはいなかったが、以前ネットで調べた際に自分の個性にマッチしていそうな単語があったことを思い出してそれを書き込んだ。

 15分が経過しミッドナイトが様子を見ながら声を出した。

 

「じゃ、そろそろ。出来た人から発表してね!」

 

 教室内が騒めく、今考えたヒーロー名をそのまま発表するとは思わなかったからだ。

 そんな中、青山と芦戸が真っ先に披露し、眞司もそれに続いて教壇に立ってヒーロー名を発表した。

 

「えーっと……『アヘガオダブルピース』です」

 

 眞司がこの名前を選んだのは、どこかで聞きかじった単語の響きが「明るくて、笑顔で、勝利のポーズを決める強いヒーローっぽい」と感じたからだった。

 意味までは深く知らず、検索した時も「なんか笑ってるし、平和そうだな」くらいの認識だった。

 けれど、その無邪気さは周囲にとっては衝撃的で──むしろ、彼がどれほど性に対して無知で純粋なのかを知らしめることになった。

 男子の8割が噴き出し、お茶子と梅雨、そして葉隠がどういう意味かわからないという表情を浮かべ、芦戸、耳郎、八百万はそれに赤面した。

 A組の大半が「マジか…こいつ!!」と思う中、唯一声を出した者が1人いた。

 

「やりやがった…!やりやがったよアイツ!!!」

 

 峰田である。

 それに引き続き八百万も副委員長としての意地を見せ、抗議の声を上げた。

 

「阿久津さん、その…いくら何でもそのようなヒーロー名はお辞めになった方がよろしいかと思いますの…!」

「え?どうして?」

 

 いくら八百万が博識で聡明と言っても中身はまだ思春期の高校生である。その言葉の意味をクラスメイトの前で説明しようとしても、この場では羞恥心が勝った。

 

「どうしてと申されましても……ミッドナイト先生!いくら何でもこのような単語をヒーロー名にするのはどうかと思いますの…それに、その…公序良俗に反すると思いますし…」

「っけ!」

 

 八百万の口からもっと卑猥な言葉が飛び出すのを期待していた峰田が唾を吐いた。

 

「私としては別に構わないのだけど……そうね、阿久津くん貴方の将来の事を考えて、この名前は一旦保留にして、別の名前を考えてもらえるかしら」

「わかりました…」

 

 その後、梅雨を始めとして続々と自分のヒーロー名を発表していく。

 そんな中、眞司は悩んでいた。今までヒーローになりたいと思っていたがヒーロー名まではあまり考えたことが無かった。正確には考えなくも無かったが憧れであるホークスの様にイーグルやレイブン、そしてホークスII—流石にこれは烏滸がまし過ぎるのでやめた―といった鳥系の名前を考えた事もあったが、自分の個性は鳥系では無い上に紛らわしい事も考えた上で『アヘガオダブルピース』という名前にしたのだった。

 眞司は改めてボードに書かれた『アヘガオダブルピース』を眺めた。彼としてもこの様な名前に

 ふと思い立ち、一部を消して文字を書き加えた。

 

「じゃあ残っているのは再考の阿久津くんと爆豪くんと…飯田くん、そして緑谷くんね」

「じゃあ次、おれが行きます」

 

 眞司が手を上げ、再び教壇に立った。

 教室の空気が張り詰め、誰もが眞司の言葉を待って息をのんだ。

 

「おれのヒーロー名は…『ガオウ』です」

 

 ホッと息を付く声が揃えた様に教室に響く中、峰田だけは違った。

 

「は〜つまんね!お前そこは男を見せろよ!男を…ッアナンデモアリマセンスミマセンスミマセン」

 

 峰田の視線の先には相澤が鬼の様な形相を浮かべていた。

 

「おい峰田、さっきから調子に乗り過ぎてねえか?」

「ハイスミマセン」

「ついでにこの授業が終わったら床掃除な」

「ハイワカリマシタ」

 

 後年、テレビコーナー“What's his name?“という番組で眞司のヒーロー名『ガオウ』の由来を聞かれたA組の者は、誰もが苦い顔をして口を濁したという。




また投稿が遅くなり申し訳ないです…
もう少し一定に更新を目指します。
感想や評価を頂けると嬉しいです。
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