申し訳ございませんが、今回も導入です。
頑張ったら9000字も書いてしまいました。
カツカツ、とヒールの音が廊下に響く。
今は香取教官の先導で、出嫁鎮守府に新設された『教室』へ向かっているところである。
しかし、しこたま"圧"をかけられたせいか……。
その後ろを追う自分の足取りは、まるで錆びたロボットのようにギクシャクとしていた。
そんなこちらの情けない姿を見かねた教官が、柔らかな声で話しかけてくる。
「アナタの方が上官なのですから、そんなに畏まらないでください……。
今の私は、"教官"でも何でもない、ただの『香取』ですので♪」
そう言っている教官は、見たこともないほどに上機嫌だった。
こちらが上官、か。
……そうは言ってもなぁ。
教官の後ろ姿を眺めながら、そんなことをうじうじと考えてしまう。
だが、確かに……。
教官一人だけを特別扱いというのも、おかしな話だ。
この鎮守府にいる艦娘は皆、平等。
それが自分の提督としてのポリシーだ。
教官だろうが誰だろうが、部下は部下。
ビシッと振る舞わねば。
───ふぅ、と一息つく。
意を決して、今度はこちらから口を開く。
教官──いえ、香取……さん。
何故、この鎮守府を選んだんです?
質問を受けた教官は足を止め、しばし悩むような仕草をした。
「そうね……。
アナタのことが好きだから、追いかけてきてしまいました♪
───なんて言ったら、どうします?」
───ガッ!! ドタドタ!! ゴンッ!!
っいたた……。
あまりの驚きに、何もない廊下で転んでしまった。
受け身も間に合わず、盛大に打ち付けた身体を擦りながら、「今、何と?」と聞き返せば───
「ふふ、冗談です♪」
───と返ってくる。
こちらの転ぶ様がそれほど面白かったのか、教官は口元に手を当て、優雅に笑っていた。
教官だった時は、こんな冗談を言う人ではなかったのだが……。
はあ、全く……、食えない人だ……。
そんなこちらの心情などお構いなしに、教官が続ける。
「───とはいえ……先程の言葉、完全な冗談というわけでもないんですよ?
アナタは私の厳しい"躾"を唯一耐え抜いた、『自慢の生徒』でしたから。
そんなアナタが、カリキュラム途中でありながら突如として提督となり、しっかりとやれているのか心配だったというのは本当のことです。」
なるほど……。
確かに、提督になったあの日は訳も分からず連行されたせいで、士官学校の誰にもまともに挨拶すらできなかった。
こうして教官と奇跡的に再会できたのなら、しっかりと言うべきことは言っておかねば。
香取教官。
突然の失踪、申し訳ありませんでした。
あなたの指導のおかげで、何とかではありますが提督としてやれています。
本当にありがとうございます。
───と、深く頭を下げる。
「……っ! も、もう……!
全く、アナタのそういうトコロが───
───い、いえ問題ありませんっ!
先を急ぎますよ!!」
教官は顔を真っ赤にしてプイッと背を向け、早足で歩き出した。
ただ謝罪と感謝を伝えただけなのだが……。
だが、こうして改めて香取教官と話してみて、気付かされたことがある。
今まで、自分は彼女のことを『厳格で冷酷な教官』としか見てこなかった。
でも、こんな風に冗談を言ったり、顔を赤らめたりするこの姿こそ、『香取』の本来の姿なのだろうな。
そう思うと、心の緊張が少し解けた気がした───
───解けたのだが……。
ここで新たな問題が発生する。
その、何というか……。
前を歩く教官が、非常に"エロい"。
教官として指導をしていた時はダボダボの訓練着を着ていたため、全く気付いていなかったが……。
その実、えげつないほどのドスケベボディを隠し持っていたのである。
まず目に入るのは、上半身だ。
白の儀礼用軍服は、豊満すぎる乳でパッツンパッツンに張りつめている。
背中越しであるにもかかわらず、横乳のラインがハッキリと見えてしまっていた。
だが真にヤバいのは、そのデカすぎる尻だろう。
張り裂けそうなほどの淫肉を詰め込み、ミッチミチのタイトスカートは、まるで極ミニスカートのように持ち上がってしまっている。
───というかよく見たら、尻たぶがハミ出てしまっているではないか!!
さらにその下には、日々の訓練はどうしたと言いたくなるほどに肉の付いた太い両脚が伸びており、それを黒のストッキングがピッチリと包み込む。
ただでさえエロの代名詞のような黒ストの光沢が、むっちり♡とした脚のラインを強調し、卑猥さを増幅させていた。
おまけに、先程のやり取りがあったからか、教官が速足で歩くせいで───
ハ゛ルンッ!!♡ フ゛ルンッ!!♡
───とデカケツが左右に揺れ、まるで催眠術をかけるかのようなリズムを刻む。
ム゛チンッ!!♡ ム゛ッチンッ!!♡
タ゛ユンッ!!♡ フ゛リンッ!!♡
…………。
……。
……うお、エッッッロ。
───いやいやいやいや!!
相手は香取教官だぞ!! 何やってるんだっ!!
頭をブンブンと振り、煩悩を振り払う。
───が、一度意識してしまうと、もうそこにしか目が行かない。
だあああああああ!!
自分の腕をキュッと抓り、痛みで正気を取り戻す。
仕方があるまい、こうなったら理性と本能の耐久戦だァ!!
───────────────────────
「こちらが───って大丈夫ですか?
執務室からここまで、少し歩いて来ただけなのですが……。
異常なまでに疲れているように見えます。」
ゼー、ハーと肩で息をしながら、大丈夫と一言返す。
全く、誰のせいでこうなったと思っているんだ……。
結局、脚に腕にと……服の下が全身真っ赤になるのではというほど抓ったぞ。
怪訝な顔をしながら、香取教官が続ける。
「それならばいいのですが……。
とにかく、こちらが駆逐艦訓練生四名が使用している『教室』です。
これからアナタには、提督として彼女たちに挨拶をして頂きたいと思っています。
ですが、少しだけ彼女たちに話さなくてはいけないことがありますので、こちらでしばしお待ちください。」
そう言い終わると香取教官は微笑み、扉の向こうへ消えて行った。
……自己紹介か。
どんなことを話そうか?
無難すぎても面白くないし、長すぎても良くないし……ブツブツ───
───数十分後
どうにか面白い自己紹介をしようと頭をひねっていると、ガラッという音と共に、教室の扉が少し開いた。
……かと思うと、その隙間から教官の手だけがぬっと出てきて、おいでおいでと、こちらを手招きしてくる。
これは入っても良いということだろうか?
香取教官の優しい手振りに誘われるまま、そっと扉を引き、教室へ足を踏み入れた───
───瞬間、四人分の期待に満ちた視線が、こちらへと突き刺さる。
先程まではあんなに憤っていたというのに、なんだかんだワクワクしてしまっている自分がいる。
気分はすっかり教育実習生だ。
そんなことを考えながら、教卓へと歩いていく。
その間、教室の中を見渡せば───
───左端の帽子を被った黒髪の女の子と、その二つ隣の癖っ毛の茶髪ボブの女の子が、席から身を乗り出しそうな勢いで瞳を輝かせていた。
───一方で、そんな二人に挟まれながらも、帽子を被った銀髪の女の子は涼しげな雰囲気を崩さず、一番右の茶髪をアップにした女の子はオドオドとしながらこちらを窺っている。
───教卓の横には香取教官が立っており、先程までと同じように笑顔でこちらを見据えていた。
ここだけを見ると、やはり出嫁鎮守府には似つかわしくないと思わざるを得ない。
「こちらがお世話になる出嫁鎮守府の提督さんです。
では提督、自己紹介をどうぞ。」
自分が教卓の前に立つと同時に、香取教官が丁度良くパスを出してくれたので、それに乗っかり自己紹介を始める。
あ、えー……ご、ご紹介に預かった。
自分がこの出嫁鎮守府の提督だ。
急な事で困惑している娘もいるだろう。
だが訓練生であっても、出嫁鎮守府の所属であることには変わりない。
何か困ったことがあれば、遠慮なく言って欲しい。
自分にできることなら、なんでもやるつもりだ。
よろしく頼む。
教官に促されるがまま、あらかじめ考えていた無難な自己紹介をつらつらと述べていく。
そんなたどたどしい挨拶が終わると、何を言われずとも四人分の拍手が教室中に響き渡った。
うーん、何というか……。
悪い気はしないな!!
「提督、ありがとうございました。」
教官のその一言と共に、拍手の音がピタリと止まった。
「それでは、皆さんも一人ずつ自己紹介をしましょうか……。
まずは、左端の『暁』さんからお願いします♡」
教官がそう言うと、帽子を被った黒髪の女の子が椅子から勢いよく立ち上がった。
「特Ⅲ型駆逐艦一番艦の『
い、一人前のレディーはおチンポの扱いも得意なのよ? 拾った本に書いてあったわ!!♥」
………。
次に、帽子を被った銀髪の女の子が立ち上がる。
「二番艦、『
その活躍ぶりから"不死鳥"の通り名もあるよ。
ここには"不死鳥"をも沈めるデカチンがあると聞いて来たんだ♡」
…………。
今度は、快活そうな茶髪ボブの女の子が立ち上がる。
「三番艦、『
そこのとこもよろしく頼むわねっ!
少しでもチンポがムラッ♥と来たら、私のことを頼っていいのよ?♥」
……………。
最後に、雷とよく似た茶髪だが気弱そうな女の子が立ち上がる。
「四番艦……『
駆逐艦だけど、おチンチンに興味あるって……おかしいですか?♡」
………………。
───は?
しばし、その場に呆然と立ち尽くす。
まるでセックスアピールのような自己紹介たちに、脳が完全に思考を停止する。
「提督、驚かれましたか?
ですが、呆けている暇はありませんよ♡
これが彼女たちの"事情"なんです♡」
"事情"? それは…どういう……。
「ふふ♪ 分かるでしょう?♡
彼女たちが、この
ちょ、ちょっと待った!!
ここで説明するんですか!?
彼女たちの前で?!
「あら、隠す必要なんてありますか?♡
彼女たち自身が当事者なんですから♡」
それは、そうだが…。
だが、こういうのは本人の同意が無いと……。
そう言いつつ、当人たちの方を見ると───
「も、も、も、問題ないわ!!
大人のレディは"せーへんれき"を語られたって平気なんだからっ!!」
「性遍歴と言っても、全員が処女だろうに……。」
「違うわよ、響!!
私と電は、我慢できなくてレズセッ───」
「───はわわわわ!! 雷ちゃん、止めてぇ~!!」
───ノリノリじゃないか、こいつら!!
教官が軽く手を叩き、落ち着いた口調で続ける。
「はい、お静かに。
当人たちが良いと言っている以上、問題はないように思われますが……。
いかがいたしますか、提督?」
うぐぐ……。
彼女たちが拒否をしない以上、断る口実が見当たらない……。
すっかり沈黙してしまったこちらの態度を肯定だと受け取ったのか、香取教官は静かに語り始めた。
「ではまず、そうですね……。
始まりは、全く異なる海域を漂流していた四人の駆逐艦娘でした。
しかし、どんな運命のイタズラか……。
一人、また一人と合流をしていったのです。」
その結果、はぐれの深海棲艦イ級やロ級程度ならば退けられるほどの戦力を、彼女たちは得ました。
ですが、彼女たち曰く───」
「暁たちが今ここにいるのは響のおかげなのよ!!」
───と、暁が無い胸を張りながら主張する。
「深海棲艦さんたちと出逢いそうになったときは、いつも響ちゃんが先導して、ぶつからない方向へ案内してくれたのです……!!」
───と、電が続く。
なるほど、『響』と言えば幸運艦としても有名だからな……。
それが皆のことを守ってくれたのかもしれん。
「皆さん、授業中は私語を慎みなさい?
……さて、続けますよ?
そのようにして徹底的に抗戦を避け、ただひたすらに漂流していました。
しかし、長い長い漂流の果てに、とうとう限界が訪れてしまいます。
燃料は底をつき、弾薬も残りわずか。
気力も、艦娘としての命も切れかけた頃───
───ついに、彼女たちはとある無人島へ辿り着きました。
彼女たちは、初めて『陸』に立ったのです。」
香取教官がゆっくりと続ける。
「そして、そこで本当のサバイバルが始まります。
─己の力だけを頼りに、魚を捕り、果実を集め、雨水を飲み……。
─そして互いの体温だけを頼りに、寄り添い、温め合い、何とか生き延びる。
彼女たちは、ただ"生存本能"の赴くが───」
「いやー、あの頃は大変だったわねー!!」
───と、雷が他人事のように囃し立てた。
「深海棲艦を食べようとしたこともあったね。
直ぐに溶けてしまったから無理だったけど…。」
───と、響がサラリと恐ろしいことを呟く。
それは…とてつもない苦労をしてきたのだな…。
この鎮守府では不自由ない生活を約束しよう。
「皆さん、授業中は……いえ、自分たちのことくらいは許しましょうか。」
───と、香取教官が頭を抱えた。
……教官も苦労しているのだな。
「はあ……どこまで話しましたか……。
とにかく、彼女たちは必死に日々を過ごしていました。
そんなある日、彼女たちは島の奥深くに木々に埋もれたコンクリートの残骸を発見します。
それは深海棲艦侵攻に伴い、廃棄された軍事施設でした。
そこで、彼女たちは"とあるもの"を見つけてしまったのです♡」
そう言い終わると、思わせぶりに話を区切る。
教官の瞳が、アヤしく輝いた気がした。
「そこには古い海図や予備の燃料───
───そして、兵士たちがひっそりと隠し持っていた、信じられないほど過激で♡ 下品な♡ エロ本が、山のように残されていたのです♡」
…………ん?
「ページを開いた瞬間、少女たちの目は釘付けになりました♡
『おチンポでおマンコ♡ ボコボコにしてくださぁ~い♡』
『デカチン様♡ かっこいい~♡』
『お゛ッホ♡ ヤッベ♡ どっぴゅんキッくゥ゛~ン゛♡』
強いオスに組み敷かれて、無様にマンイキする雑魚メスのお話がたぁ~っくさん♡
彼女たちは、初めて見る"
…………んん??
「それに加えて……♡
いつ終わるとも知れないサバイバル生活の中で、彼女たちの肉体は少しずつ、少しずつ、変わっていっていました♡
『孕みたい♡』
『種付けされたい♡』
『チンポでボコボコにされたい♡』
過酷すぎる環境の中で、"種の保存本能"が……"繁殖欲"がむくむく♡と芽生えてしまったのです♡」
………………んんん???
「その日から、彼女たちの生活は激変しました♡
昼間は真面目に食料を探し……♡
夜は各々、お気に入りのオカズでマンズリをブッこく……♡
思春期のオナ猿のように、快楽を貪り続ける日々が続きました♡」
………………んんんん????
「しかし、いくらド派手なアクメをキめようと、溢れ出る性欲が完全に満たされることはありません♡
そこで、彼女たちは考えます───
───『チンポが必要』なのだと♡」
……………………んんんんん?????
「そこからの彼女たちの行動は素早かったわ♡
思い立ったが吉日と言わんばかりに、彼女たちは廃屋から海図と予備燃料をふんだくり、それを頼りに人類が制海権を得ている海域まで到達……♡
そうして警備任務中だった艦娘と遭遇し、無事『ドロップ艦娘』として保護されました……♡」
困惑極まるこちらをよそに、香取教官は話を続ける。
「なんとか保護された彼女たちではありますが、その後、事の顛末を素直に話してしまったようで……♡
大本営は彼女たちの言っていることを、"妄言"であると切り捨て、ちょうどアナタが居なくなってしまい一人寂しい私の元へ、『戦力になれば儲けもの』程度の考えで預けたのです♡」
なっ、それはっ……!!
体のいい"厄介払い"ではないか…!!
「これが彼女たちの"事情"なんです♡
提督……ご理解いただけましたか?♡
この出嫁鎮守府が、彼女たちを教える上で最も適した場所なのだということを……♡」
………………。
信じられないような話が、途中から続いていた気はするが……。
その話が本当ならば、確かにウチ以上に適任な鎮守府は存在しないだろう。
「聡いアナタならお判りでしょう……?♡
彼女たちのような艦娘の存在を……♡
そして、彼女たちのような艦娘が普通の鎮守府に居たらどうなってしまうのかを……♡」
香取教官の言葉が、胸に刺さる。
ふと、足柄の姿を思い浮かべた。
彼女も、その強い性欲に振り回されてきた艦娘の一人だったからだ。
「ですから、教えてあげて欲しいんです───
─『セックス』とは何かを……♡
─『愛』とは何かを……♡
───アナタから、何も知らぬ彼女たちへ♡」
そう言うと、香取教官がグイっと距離を詰める。
教官の瞳が、こちらをじっと見つめていた。
自分は、葛藤している……。
彼女たちの過去を聞き、可哀想だとは思う。
いや、でも……。
彼女たちは、"子供"すぎるんじゃないか?
必死に食い下がる。
どれほどの理由があろうと、"子供"とセックスをするなんてことはあってはならない。
提督としてのポリシー以前に、人間としての道徳がそれを許さない。
その言葉に、暁が「むーっ!」と頬を膨らませ、立ち上がる。
「ちょっと、司令官!! 子供扱いしないで!!
私たち、司令官なんかより、ずぅ~っと年上なのよ!!」
……は? 年上??
暁の言葉にポカンと口を開けていると、響が落ち着いた声で続いた。
「実際には、漂流とサバイバルをしていた期間が長いだけなのだけども……。
それでも、司令官よりは長く生きているだろうね。」
うっ……ぐっ……
頼みの綱であった反論も封殺され、完全に言葉に詰まってしまう。
「───だそうですが……♡
《教えてくださいますね?》♡」
十の瞳が、鋭くこちらを射抜く。
───万事休す。
まさに、その言葉通りの状況だった。
だが……それは…………。
いくら教官の命令とは言え───
───はい、教官。
いいえ、それには賛同しかねます。
教官の瞳を真っすぐに見据え、淀みなく答える。
いくら肉体的には"大人"であったとしても、彼女たちは訓練生である。
それは彼女たちが艦娘としては"子供"であるのと何が違うのか。
何も知らぬ少女たちを騙しているのと何が違うのか。
自分の考えを、勢いのままに吐き出していく。
自分にとって、出嫁鎮守府は"天国"だ。
だが同時に、非常に"危険"な場所でもある。
この場所を『鎮守府』として……。
彼女たちを『艦娘』として……。
そして自分が『提督』でいるために……。
『超えてはいけない一線』を理解していないと、すぐにこの鎮守府は腐り落ちてしまうだろう。
それが、"今"だと自分は思った。
これが断らせていただく理由です。
自分が胸を張ってそう言い終わると、香取教官の目がスゥと細められた。
「あら……ほほう……?
なるほど……これは少し、厳しい"躾"が必要みたいですね?」
教官の圧が一気に増す。
教室内の空気が一変し、押しつぶされそうなほどのプレッシャーを感じる。
マ、マズい……。
殺されるかもしれない……。
暁が、「ぴ、ぴゃあ……」と言いながら、ビビっているのが聞こえた。
大丈夫さ、暁。
自分も今、同じ気持ちだ。
だが、これは……"これだけ"は譲れない。
「はあ、全くアナタという人は……。
身だしなみはだらしがないのに、こういうところはしっかりとしているんですから……。」
う゛っ……。
それを言われると弱いのだが……。
「ですが、
アナタのその高潔さも美徳の一つですから……。」
そう言うと、教官が人差し指を立てる。
「では、"こう"しましょう……♡
セックスは、彼女たちが正式に訓練を修了し、出嫁鎮守府へ着任をするまでは『お預け』という形は如何でしょうか?♡」
ふむ、それならばいいだろう。
出嫁鎮守府の艦娘として正式に着任して、本人の意思でそれを求められるのであれば、自分はいつでも受け止めよう。
それを聞いた教官は、何かを思いついたかのように続ける。
「……それとアナタの我儘を通すのだから、私の"お願い"も一つ聞いて欲しいんです♡
ただ"授業"を、少しだけ手伝うだけなのですが……♡
提督、よろしいですか?♡」
なんだなんだ、教官らしくない……。
しかし自己紹介でも言ったが、自分に出来ることならなんでもやるつもりだ、是非とも任せて欲しい。
自信満々にそう返答すると、まるでこうなることを予想していたかのように教官が微笑んだ。
「そうですか♡ ではそのように……♡」
これにてこの話は終了、だろうか?
ふぅ、まったく……。
生きた心地がしなかったぞ……。
ホッと胸を撫でおろしている自分の横で、教官が生徒たちへと向き直る。
「さて、皆さん……残念ながら提督はこういうお方です。
事前にこうなるでしょうとは言っていましたが、改めて卒業まではセックスはお預けです。
それまではしっかりと私の下で訓練に励むこと。
よろしいですね? 」
そう教官が言い終わるや否や、教室はブーイングの嵐に包まれた。
こういうところが子供っぽいからダメだと言ったのだがな……。
「で・す・が♪
なんとお優しい提督は、『セックスはNGだけど、チンポを授業の為にお貸しする』とおっしゃっております♡」
その台詞に、教室中は打って変わって歓喜の渦に巻き込まれる。
え゛っ。
唐突に投げられた爆弾発言に耳を疑った。
ちょ、ちょっと?! 教官?!
そんなこと言った覚えはないんだが?!?!
「あら提督、私の"お願い"──"授業"をお手伝いすると言ってくださったじゃないですか♡
それに対して、なんておっしゃったか覚えていますか?♡
『自分に出来ることならなんでもやる』、と胸を張ってらしたと思うのですが……♡」
……くっ。
確かに言った。
言ってしまった。
だが、あれはそういう意味じゃ……!!
「あらあら……♡
提督ともあろうお方が、お言葉に責任を持てないなんて……♡
艦娘たちに失望されてしまいますよ?♡」
ぐぬぬ……。
そう言われてしまうと、ぐうの音も出ない。
なんでこうなったのかと自問自答していると、教官がこちらへスルリと近づき───
「……安心してください、提督♡
ただ、見て♡ ただ、触れるだけ♡
彼女たちの知識の源はエロ本ですから……♡
歪んだ性知識をアップデートしてあげたいだけなんです♡
あくまで性教育の観点から、男性の肉体を学ばせてあげたいんです♡
それくらいならば、いいでしょう?♡」
───と、彼女たちには聞こえない程の声で囁いた。
……分かった。
それくらいなら……。
それくらいなら、承諾しよう……。
絞り出すように苦渋の決断を伝える。
「ええ、ええ♪ ありがとうございます、提督♡
───それでは授業準備がございますので、しばし外でお待ちください♡」
すると、感謝の言葉もそこそこに、グイっと教室の外へと投げ出されてしまった。
………。
……何でこうなっちゃうんだろうなぁ。
廊下の冷たい空気に、身も心も突き刺されたような気がした。
次回からはしっかりとエロシーンです。
是非ともご期待ください。